魔力ゼロと判明した途端、婚約破棄されて両親から勘当を言い渡されました。でも実は世界最高レベルの魔力総量だったみたいです

ひじり

文字の大きさ
上 下
2 / 42

【2話】右も左も分からないうちにパーティーメンバーに加えられてしまいました

しおりを挟む
 ――冒険者ギルド。
 そこは、一獲千金を夢見る者達が集う場所だ。

 老若男女問わずパーティーを組み、クエストを引き受け、魔物討伐に精を出す。
 どんなスキルを持っているのか、今までに何体の魔物を倒してきたのか、魔力の値が如何程か、そんなことは関係ない。やる気さえあれば誰でも歓迎する。
 たとえ、身の丈に合ったクエストを受けずに命を落とすことになろうとも……。

 そして今日もまた、ギルドの門が叩かれる。

「ここが冒険者ギルド……」

 アルゴール家を追放されてから半月、ノアは無事王都へと着くことが出来た。
 ギルドに入ると、真っ直ぐに受付へと歩を進める。

「あの、冒険者になりたいんですけど……」
「ようこそいらっしゃいました。当ギルドにお越しいただくのは初めてですね? ではまず、こちらの用紙にご記入ください。それと、左手の小指のサイズを確認させていただきます」

 挨拶を交わし、受付嬢が出したもの。それは冒険者登録用紙だ。
 ここにノアの名前と出自、有れば戦闘経験の有無などを記入することで、登録完了となる。

「……これで大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。ええっと……お名前はノア様ですね? 戦闘経験の有無は……無しでお間違いございませんか?」
「はい、間違いありません」

 冒険者登録をする者、つまりは冒険者に成り立ての新人である。
 ギルドを通してクエストを受注したことのない者がほとんどだろう。
 故に、戦闘経験を持たない者ばかりとなる。

 ノア自身、私設兵と共に魔物狩りをしたことはあった。
 実戦での経験を積む為、そして魔力の値を増やす為だったが、実際にはその大半がノアの手を使わずに討伐されている。
 冒険者になることが分かっていれば、もっと率先して戦うべきだった、と今更ながらに思ってしまう。

「では、こちらが冒険者証になります。ご自身の身分の証明にもなりますので、失くさずにお持ちください」

 銅で出来た指輪を受け取り、それを左手の小指に嵌める。
 あっさりと済んだが、これでノアも冒険者の仲間入りだ。

「え、えっと……登録した後は、何をすればいいんでしょうか?」
「あちらにクエスト掲示板がございますので、受けたいクエスト用紙をこちらまでお持ちください」
「あ、ありがとうございますっ」

 お辞儀をし、ノアは受付を後にする。
 受付嬢に言われたクエスト掲示板なるものへと目を通す。そこには数多くの依頼用紙が貼られていた。
 ここから自分の実力に見合ったものを選択し、受注することになる。

「わたしにも出来そうなクエストは……」

 冒険者には等級制度がある。
 生り立ての冒険者は銅等級で、経験を積み、ギルドへと貢献し続けることで、大銅等級、銀等級、大銀等級と上がっていく。

 先ほど冒険者登録を終えたばかりのノアの等級は銅だ。
 その等級に見合ったクエストを探してみる。

「薬草採取に、ギルド内の掃除……王都のドブ攫い……」

 パッと見た感じでは、魔物を討伐する類のクエストは一つもない。
 王都のギルド故に、冒険者は数えきれないほど存在する。
 だからだろうか、下の等級の依頼は取り合いになってしまう。

「最初だから、確実に依頼達成出来そうな薬草採取にしようかな……」
「――おい、そこの女」

 薬草採取のクエスト用紙を手に取ろうとするノアに、声を掛ける者が一人。
 振り向くとそこには大柄な男と細身の女の姿があった。

「もしかして成り立てか?」
「え? ……あ、はい! そうです!」
「じゃあちょうどいいぜ。どうせ仲間もいねえんだろ? 俺様のパーティーに加えてやるよ」

 有無を言わさぬ口調で言い放つ。
 それが、ノアとボドとの出会いであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

王太子に婚約破棄言い渡された公爵令嬢は、その場で処刑されそうです。

克全
恋愛
8話1万0357文字で完結済みです。 「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に投稿しています。 コーンウォリス公爵家に令嬢ルイ―ザは、王国の実権を握ろうとするロビンソン辺境伯家当主フランシスに操られる、王太子ルークのよって絶体絶命の危機に陥っていました。宰相を務める父上はもちろん、有能で忠誠心の豊かな有力貴族達が全員紛争国との調停に送られていました。万座の席で露骨な言い掛かりで付けられ、婚約を破棄されたばかりか人質にまでされそうになったルイ―ザ嬢は、命懸けで名誉を守る決意をしたのです。

婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの
恋愛
 婚約者の第五王子フランツ殿下には好きな令嬢が出来たみたい。その令嬢とは男爵家の養女で親戚筋にあたり現在私のうちに住んでいる。  婚約者の私が邪魔になり、身分剥奪そして追放される事になる。陛下や両親が留守の間に王都から追放され、辺境の町へと行く事になった。  100キロ以内近寄るな。100キロといえばクレマン? そこに第三王子フェリクス殿下が来て“グレマン”へ行くようにと言う。クレマンと“グレマン”だと方向は真逆です。  追放と言われましたので、屋敷に帰り準備をします。フランツ殿下が王族として下した命令は自分勝手なものですから、陛下達が帰って来たらどうなるでしょう?

精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。 聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。 暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!? 一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

無実の罪で聖女を追放した、王太子と国民のその後

柚木ゆず
恋愛
 ※6月30日本編完結いたしました。7月1日より番外編を投稿させていただきます。  聖女の祈りによって1000年以上豊作が続き、豊穣の国と呼ばれているザネラスエアル。そんなザネラスエアルは突如不作に襲われ、王太子グスターヴや国民たちは現聖女ビアンカが祈りを怠けたせいだと憤慨します。  ビアンカは否定したものの訴えが聞き入れられることはなく、聖女の資格剥奪と国外への追放が決定。彼女はまるで見世物のように大勢の前で連行され、国民から沢山の暴言と石をぶつけられながら、隣国に追放されてしまいました。  そうしてその後ザネラスエアルでは新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民たちは『これで豊作が戻ってくる!』と喜んでいました。  ですが、これからやって来るのはそういったものではなく――

処理中です...