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【14】貴族とは?
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王国大陸には、大まかに別けて三つの階級が存在する。
一つ。王族とは、この国を作り大陸を治める一族のこと。
一つ。平民とは、爵位を持たない普通の王国民のこと。
では、残る一つ、貴族とは?
その名の通り、王国大陸で爵位を持つ者のことだ。
但し、貴族に関してはそのほかにも、もう一つだけ選定基準が存在する。
それが“魔力”の有無だ。
王国大陸で爵位を持つということはつまり、魔力を持つ者のことを指している。
魔力の有無は遺伝によるところが大きい。
故に、魔力を持つ者とその血筋は、国王から直々に爵命し、貴族として生きることを許される。
エナの場合、ローリア家が魔力を持つ血筋であり、現当主ロドの血を引いている。そのため、生まれながらに魔力を持ち、貴族としての地位を得ていた。
仮に魔力量が少なくとも、更には魔法の扱いが下手くそだったとしても、王国大陸では貴族の地位を脅かされることはない。
ほんの僅かでも魔力を持っているならば、貴族としての暮らしを王族から約束されるのだ。
一方で、歪さも残る。
それは、外部の血に関するものだ。
亡くなった母は元平民だが、ロドと結婚してローリア家の一員となった。
しかしながら、ローリア家の血筋ではないので、貴族たる選定基準をクリアすることができない。
その結果、魔力無しの貴族が存在することになる。
王国大陸では、魔力を持たざる者を貴族として認めることはない。
たとえ結ばれて夫婦となったとしても、差別や区別の対象となることは避けられなかった。
だからか、外部の血を受け入れることがなくなり、途絶える血筋が増えていった。
このままでは不味いと危機感を持った貴族たちは、国王に訴え、例外を作ってもらうことにした。
それは、一代限りの爵命だ。
魔力を持たざる者はあくまで平民であり、それ以上でもそれ以下の存在でもない。
但し、王国に対する貢献度や、目も眩むような大金を捧げることで、一代限りの爵位を賜ることも不可能ではなかった。
そのシステムの一つとして、貴族の家系に入る者を加えることにした。
これにより、魔力を持たないエナの母は、一代限りの爵位を持つことを許可された。それもこれも結局は、体面を気にする王族と貴族の傲慢さによるものと言えるだろう。
そして今現在、
「も、元貴族だと……? ってことは、魔力を持たないのか?」
「バカ! さっきの見ただろ! 貴族の地位を失ったとしても、自前の魔力は健在だ!」
エナを襲う男共が慌てふためく。
魔法の扱いが下手ならば、まだ数的有利で何とかなるかもしれないが、エナの力量は先ほどの一発で思い知っている。
「わたしね、今ものすごく機嫌が悪いの……どうしてだか分かる?」
「っ! ……お、俺たちが、身の程も知らずに……貴族様に無礼を働いたから……ですか?」
ビクついた素振りを見せながら答える男の言葉に、エナは首を横に振る。
「理由はいろいろあるわ。でも、一番は……手持ちがないからね」
「て、……手持ち?」
「ほら、さっき言ったじゃない? 一文無しだって」
だからほら、とエナは笑う。
「可哀そうなわたしに、施しを与えてくれないかしら?」
「……あ、はい」
有無を言わさぬ口調と表情に、男共はただただ頷き、金目の物と食料を置いて森の中に逃げていくのだった。
一つ。王族とは、この国を作り大陸を治める一族のこと。
一つ。平民とは、爵位を持たない普通の王国民のこと。
では、残る一つ、貴族とは?
その名の通り、王国大陸で爵位を持つ者のことだ。
但し、貴族に関してはそのほかにも、もう一つだけ選定基準が存在する。
それが“魔力”の有無だ。
王国大陸で爵位を持つということはつまり、魔力を持つ者のことを指している。
魔力の有無は遺伝によるところが大きい。
故に、魔力を持つ者とその血筋は、国王から直々に爵命し、貴族として生きることを許される。
エナの場合、ローリア家が魔力を持つ血筋であり、現当主ロドの血を引いている。そのため、生まれながらに魔力を持ち、貴族としての地位を得ていた。
仮に魔力量が少なくとも、更には魔法の扱いが下手くそだったとしても、王国大陸では貴族の地位を脅かされることはない。
ほんの僅かでも魔力を持っているならば、貴族としての暮らしを王族から約束されるのだ。
一方で、歪さも残る。
それは、外部の血に関するものだ。
亡くなった母は元平民だが、ロドと結婚してローリア家の一員となった。
しかしながら、ローリア家の血筋ではないので、貴族たる選定基準をクリアすることができない。
その結果、魔力無しの貴族が存在することになる。
王国大陸では、魔力を持たざる者を貴族として認めることはない。
たとえ結ばれて夫婦となったとしても、差別や区別の対象となることは避けられなかった。
だからか、外部の血を受け入れることがなくなり、途絶える血筋が増えていった。
このままでは不味いと危機感を持った貴族たちは、国王に訴え、例外を作ってもらうことにした。
それは、一代限りの爵命だ。
魔力を持たざる者はあくまで平民であり、それ以上でもそれ以下の存在でもない。
但し、王国に対する貢献度や、目も眩むような大金を捧げることで、一代限りの爵位を賜ることも不可能ではなかった。
そのシステムの一つとして、貴族の家系に入る者を加えることにした。
これにより、魔力を持たないエナの母は、一代限りの爵位を持つことを許可された。それもこれも結局は、体面を気にする王族と貴族の傲慢さによるものと言えるだろう。
そして今現在、
「も、元貴族だと……? ってことは、魔力を持たないのか?」
「バカ! さっきの見ただろ! 貴族の地位を失ったとしても、自前の魔力は健在だ!」
エナを襲う男共が慌てふためく。
魔法の扱いが下手ならば、まだ数的有利で何とかなるかもしれないが、エナの力量は先ほどの一発で思い知っている。
「わたしね、今ものすごく機嫌が悪いの……どうしてだか分かる?」
「っ! ……お、俺たちが、身の程も知らずに……貴族様に無礼を働いたから……ですか?」
ビクついた素振りを見せながら答える男の言葉に、エナは首を横に振る。
「理由はいろいろあるわ。でも、一番は……手持ちがないからね」
「て、……手持ち?」
「ほら、さっき言ったじゃない? 一文無しだって」
だからほら、とエナは笑う。
「可哀そうなわたしに、施しを与えてくれないかしら?」
「……あ、はい」
有無を言わさぬ口調と表情に、男共はただただ頷き、金目の物と食料を置いて森の中に逃げていくのだった。
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