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【幕間】夢の中
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夢の中で、エナはあの日にいた。
それは王国に異世界転生者が現れた日のことだ。
「凄い、本当に成功したぞ……!」
「あれが異世界から転生してきた人間か? まだ幼い……それも女の子じゃないか」
「あの子が王国を救ってくれるというのか? 本当に大丈夫なんだろうな?」
「間抜けが、惑わされるんじゃない。帝国の異世界転生者も見た目は華奢らしいが、中身が怪物だという噂だぞ」
「ああ、少しでも機嫌を損ねたら、俺たちなど一瞬で消し屑になるはずだ」
「お、恐ろしい……」
「とにかく、我々は帝国に対する術を手に入れたわけだ。これで戦いに備えることができるだろう」
「うむ、王国貴族総出で魔力を注いだ甲斐があったというものだ」
「王国は更なる繁栄を約束されたようなものだな。異世界転生者様様だ」
あの日……。
王国の貴族たちが協力して唱えた異世界転生魔法は成功し、カルデが姿を現した。
カルデはすぐに自分の置かれた状況を把握する。
すると、驚いたり泣いたりすることはなく、嬉しそうに笑ってみせた。
みんなが祝福した。
カルデを持て成し、王国の救世主として祀り上げた。
そしてエナも同じく。
だが実際のところ、内心ざわついてもいた。
目が笑っていない。カルデの笑った顔が、作り物のように見える。
異世界から転生したばかりだというのに、あの表情……何を考えているのか分からない。形容しがたい何かがあった。
しかしそれを口にすることはない。異世界転生者は、王族と同等かそれ以上の存在であり、王国の宝そのものなのだ。
故に、決して口答えしてはならない。
それから数年後。
エナの予感は、現実のものとなる。
国外追放編、完。
それは王国に異世界転生者が現れた日のことだ。
「凄い、本当に成功したぞ……!」
「あれが異世界から転生してきた人間か? まだ幼い……それも女の子じゃないか」
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「間抜けが、惑わされるんじゃない。帝国の異世界転生者も見た目は華奢らしいが、中身が怪物だという噂だぞ」
「ああ、少しでも機嫌を損ねたら、俺たちなど一瞬で消し屑になるはずだ」
「お、恐ろしい……」
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あの日……。
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すると、驚いたり泣いたりすることはなく、嬉しそうに笑ってみせた。
みんなが祝福した。
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そしてエナも同じく。
だが実際のところ、内心ざわついてもいた。
目が笑っていない。カルデの笑った顔が、作り物のように見える。
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しかしそれを口にすることはない。異世界転生者は、王族と同等かそれ以上の存在であり、王国の宝そのものなのだ。
故に、決して口答えしてはならない。
それから数年後。
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