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【8】理不尽な存在

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 国外追放処分。それが、エナに対して新たに科せられたものだった。
 ロドの訴えが認められたことで、エナは投獄を免れる形となったのだ。

 これにより、エナは王国大陸に居ることができなくなったわけだが、牢の中で一生を過ごすことに比べたら雲泥の差と言えるだろう。

「ふーん、国外追放処分ね……」

 そして、この処分に対して不満な様子のカルデが口を開く。

「随分と優しい処分になっちゃってるけど、ほんと~にそれでいいわけ? あたしが決めたものに横から口を挟んで勝手に変更したわけだから、それ相応の態度で示してくれないと不味いんだけど? ねえ? あんたさ、そこんとこ分かってる?」

 国王を“あんた”と呼び捨て、カルデが眉を潜める。圧をかけているのは誰の目にも明らかだ。すると、

「国王は全てを承知の上です」

 カルデの問い詰めに、宰相が国王に代わって言葉を返す。それが国王の、ひいては王国大陸の出した答えということだ。

「へえ~、……あっそ。じゃあこれは貸しってことにしとくし、それならまあ悪くないかも? ってか、あたしが一番嫌いなやつの顔を見なくて済むことに変わりないし?」

 元々の思惑通りにはならないかもしれないが、これなら案外悪くない。そう思ったのだろう。

 牢の中で苦しむ姿を見ることができないのは些か残念だが、王国大陸から追放されたとなれば、今後一生エナの顔を見ずに済む。

 それに加えて、ここで一度自分の主張を引っ込めて、国王に判断を任せることで、貸しを作ることができるのではないかと考えた。

「双方、異論は無いな」
「寛大な処分、感謝いたします!」
「御座いません……」

 宰相が問いかけ、ロドとエナが首を垂れる。
 エナは納得していないが、これがロドの最後の願いだと言うのならば、ここで反論するのは間違いだ。

 結果的に、下された処遇は以下の通りとなる。

 一つ。ロド・ローリアを投獄すること。
 一つ。ローリア家の爵位を剥奪すること。
 一つ。それに伴いローリア家を取り潰しとすること。
 一つ。ローリア家の財産を没収すること。
 一つ。エナ・ローリアを王国大陸から追放すること。

 以上が、王の御前で決まった。

 異世界転生者に目をつけられる。ただそれだけのことで、国王をも巻き込み、処分を下されることとなった。

 理不尽極まりないことだが、これが現実だ。
 この世界において、異世界転生者は絶対的な存在なのだ。

 未だ首を垂れるエナを見下ろしながら、カルデは意地悪く口の端を上げて嗤っていた。
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