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新人戦編 ―後編―
第31話 エリザベス、死す
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「つァらぁッ!!」
身体強化と多重加速魔法をかけたアルヴィスは、文字通り弾丸の様な速度でマルコに殴りかかった。
だがマルコにかわされ、火球を放たれる。それに続くように部下たち5人も、それぞれ中距離魔法で攻撃をしかけてきた。
アルヴィスもこれらを避け、何度もマルコに殴り、蹴り、突き、手刀、足刀とくりだすが、ことごとくかわされ、いなされ、受け流されてしまう。
それを可能にしているのがマルコの纏う炎だ。
纏う炎がマルコのまわりにまるで陽炎のようなゆらめきを造りだし、マルコ本人の実体をぼかしている。
さらに炎を操るだけあってか、視覚以外にもアルヴィスの体熱から動きを読んでいるようだ。
なので、アルヴィスは先に部下たちを仕留めようと駆けるが、ことごとくフレデリックに邪魔をされる。
土の壁や針、地割れや砲撃で部下たちに接近することを許さない。
アルヴィスはマルコに任せ、フレデリック達他のメンバーはサポートに徹底している。
恐らく同じ様な戦術で、アレスティアの子爵邸を襲ったのだろう。そしてマルコが燃やし尽くしたのだ。
エリザベスの時も同様と予測する。
「やっぱ同時に相手すんのはなかなかこたえるぜ……」
アルヴィスは額の汗を拭いながらあの連携をどう崩そうかと考えるが、相手は休む時間を与えてくれない。
火球を放ちながらマルコが急接近し、フレデリックからは土の砲弾の乱れ撃ちが飛んでくる。
当然アルヴィスはどちらも避けるが、砲弾を避けた先には接近したマルコが待ち構えていた。
「――!? ぐわァっ!」
炎を纏った拳を腹部に喰らってしまう。
さらに吹き飛ぶアルヴィスにマルコが火球の追加攻撃を放ってくる。
それでも腹部をおさえゆっくりと立ち上がるアルヴィスの姿に、フレデリックはこめかみに浮き出た血管をひくつかせた。
「しぶといガキめ! ――ええいお前らッ、もっと攻撃せぬか! さっさと殺せいッ!」
指示を受けた部下たちは次々に魔法をくりだす。雨のように降りかかる魔法の数々をアルヴィスは咄嗟に魔法を発動し直し駆けるが、範囲外まで逃げることが間に合わず右脚に直撃してしまう。
「っっっ――!!」
声にならない叫びを上げ倒れ込むアルヴィス。彼の脚を見るとそこには、ふくらはぎに魔法が貫通した穴が空いていた。
大量の血が流れ、止まる気配はない。
すでに全身に火傷をおい、ジンジンと痛む身体に留めとばかりに貫通魔法の脚への重症。
これではとても地を駆けることは出来ない。
地面に倒れ込みながらも、右脚を引きずりながらほふく前進のように腕を使い、エリザベスのもとへ進む。
エリザベスは部下の男に口をふさがれ思うように喋ることができず、先ほどからずっとモゴモゴと何かを叫んでいる。
「ふむ、こうして勝利が確定してしまうと実につまらんな。何か面白くなるような……――」
フレデリックは自身の顎を撫でながら思案していると、何か思い付いたのかパッとエリザベスを見る。
「そうだ! その女を殺してしまおう! そのガキが苦しむ姿に叫ぶ女を見たかったが、弱っていて全然叫ばん。つまらん。それよりもそやつの方がさっきから騒いでいて面白そうだ。それになにより――」
フレデリックは今までのアルヴィスのことを思い出したのか、急にプルプルと顔を小刻みに震えだし真っ赤にする。
「今までの私への無礼は絶対に許さんぞ糞ガキがぁッ!!」
彼は叫ぶと一言「やれ」と顎で部下に合図した。
するとエリザベスを捕らえていた部下の男は、腰の辺りにゴソゴソと何か取り出すような手つきで突っ込みはじめる。
取り出す手に持っていたのは――短刀だ。
「なっ……!? ちょっと、待て……おいっ……嘘、だろ……?」
徐々にエリザベスの首もとに近付く男の短刀に、動けないアルヴィスは為す術もなく、ただ冗談だと声を上げるしか出来なかった。
そんなアルヴィスを見ながら1人楽しむフレデリック。その顔はとても愉快そうな笑顔でねじまがっていた。
そしてもう一度、フレデリックは刺せというように顎で指示する。
瞬間――
「ヤメロぉぉオオォォっっ――!!」
――ズプッ……!
という鈍い音をさせ、エリザベスの首に短刀が貫いていた。
身体強化と多重加速魔法をかけたアルヴィスは、文字通り弾丸の様な速度でマルコに殴りかかった。
だがマルコにかわされ、火球を放たれる。それに続くように部下たち5人も、それぞれ中距離魔法で攻撃をしかけてきた。
アルヴィスもこれらを避け、何度もマルコに殴り、蹴り、突き、手刀、足刀とくりだすが、ことごとくかわされ、いなされ、受け流されてしまう。
それを可能にしているのがマルコの纏う炎だ。
纏う炎がマルコのまわりにまるで陽炎のようなゆらめきを造りだし、マルコ本人の実体をぼかしている。
さらに炎を操るだけあってか、視覚以外にもアルヴィスの体熱から動きを読んでいるようだ。
なので、アルヴィスは先に部下たちを仕留めようと駆けるが、ことごとくフレデリックに邪魔をされる。
土の壁や針、地割れや砲撃で部下たちに接近することを許さない。
アルヴィスはマルコに任せ、フレデリック達他のメンバーはサポートに徹底している。
恐らく同じ様な戦術で、アレスティアの子爵邸を襲ったのだろう。そしてマルコが燃やし尽くしたのだ。
エリザベスの時も同様と予測する。
「やっぱ同時に相手すんのはなかなかこたえるぜ……」
アルヴィスは額の汗を拭いながらあの連携をどう崩そうかと考えるが、相手は休む時間を与えてくれない。
火球を放ちながらマルコが急接近し、フレデリックからは土の砲弾の乱れ撃ちが飛んでくる。
当然アルヴィスはどちらも避けるが、砲弾を避けた先には接近したマルコが待ち構えていた。
「――!? ぐわァっ!」
炎を纏った拳を腹部に喰らってしまう。
さらに吹き飛ぶアルヴィスにマルコが火球の追加攻撃を放ってくる。
それでも腹部をおさえゆっくりと立ち上がるアルヴィスの姿に、フレデリックはこめかみに浮き出た血管をひくつかせた。
「しぶといガキめ! ――ええいお前らッ、もっと攻撃せぬか! さっさと殺せいッ!」
指示を受けた部下たちは次々に魔法をくりだす。雨のように降りかかる魔法の数々をアルヴィスは咄嗟に魔法を発動し直し駆けるが、範囲外まで逃げることが間に合わず右脚に直撃してしまう。
「っっっ――!!」
声にならない叫びを上げ倒れ込むアルヴィス。彼の脚を見るとそこには、ふくらはぎに魔法が貫通した穴が空いていた。
大量の血が流れ、止まる気配はない。
すでに全身に火傷をおい、ジンジンと痛む身体に留めとばかりに貫通魔法の脚への重症。
これではとても地を駆けることは出来ない。
地面に倒れ込みながらも、右脚を引きずりながらほふく前進のように腕を使い、エリザベスのもとへ進む。
エリザベスは部下の男に口をふさがれ思うように喋ることができず、先ほどからずっとモゴモゴと何かを叫んでいる。
「ふむ、こうして勝利が確定してしまうと実につまらんな。何か面白くなるような……――」
フレデリックは自身の顎を撫でながら思案していると、何か思い付いたのかパッとエリザベスを見る。
「そうだ! その女を殺してしまおう! そのガキが苦しむ姿に叫ぶ女を見たかったが、弱っていて全然叫ばん。つまらん。それよりもそやつの方がさっきから騒いでいて面白そうだ。それになにより――」
フレデリックは今までのアルヴィスのことを思い出したのか、急にプルプルと顔を小刻みに震えだし真っ赤にする。
「今までの私への無礼は絶対に許さんぞ糞ガキがぁッ!!」
彼は叫ぶと一言「やれ」と顎で部下に合図した。
するとエリザベスを捕らえていた部下の男は、腰の辺りにゴソゴソと何か取り出すような手つきで突っ込みはじめる。
取り出す手に持っていたのは――短刀だ。
「なっ……!? ちょっと、待て……おいっ……嘘、だろ……?」
徐々にエリザベスの首もとに近付く男の短刀に、動けないアルヴィスは為す術もなく、ただ冗談だと声を上げるしか出来なかった。
そんなアルヴィスを見ながら1人楽しむフレデリック。その顔はとても愉快そうな笑顔でねじまがっていた。
そしてもう一度、フレデリックは刺せというように顎で指示する。
瞬間――
「ヤメロぉぉオオォォっっ――!!」
――ズプッ……!
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