32 / 44
新人戦編 ―後編―
第31話 エリザベス、死す
しおりを挟む
「つァらぁッ!!」
身体強化と多重加速魔法をかけたアルヴィスは、文字通り弾丸の様な速度でマルコに殴りかかった。
だがマルコにかわされ、火球を放たれる。それに続くように部下たち5人も、それぞれ中距離魔法で攻撃をしかけてきた。
アルヴィスもこれらを避け、何度もマルコに殴り、蹴り、突き、手刀、足刀とくりだすが、ことごとくかわされ、いなされ、受け流されてしまう。
それを可能にしているのがマルコの纏う炎だ。
纏う炎がマルコのまわりにまるで陽炎のようなゆらめきを造りだし、マルコ本人の実体をぼかしている。
さらに炎を操るだけあってか、視覚以外にもアルヴィスの体熱から動きを読んでいるようだ。
なので、アルヴィスは先に部下たちを仕留めようと駆けるが、ことごとくフレデリックに邪魔をされる。
土の壁や針、地割れや砲撃で部下たちに接近することを許さない。
アルヴィスはマルコに任せ、フレデリック達他のメンバーはサポートに徹底している。
恐らく同じ様な戦術で、アレスティアの子爵邸を襲ったのだろう。そしてマルコが燃やし尽くしたのだ。
エリザベスの時も同様と予測する。
「やっぱ同時に相手すんのはなかなかこたえるぜ……」
アルヴィスは額の汗を拭いながらあの連携をどう崩そうかと考えるが、相手は休む時間を与えてくれない。
火球を放ちながらマルコが急接近し、フレデリックからは土の砲弾の乱れ撃ちが飛んでくる。
当然アルヴィスはどちらも避けるが、砲弾を避けた先には接近したマルコが待ち構えていた。
「――!? ぐわァっ!」
炎を纏った拳を腹部に喰らってしまう。
さらに吹き飛ぶアルヴィスにマルコが火球の追加攻撃を放ってくる。
それでも腹部をおさえゆっくりと立ち上がるアルヴィスの姿に、フレデリックはこめかみに浮き出た血管をひくつかせた。
「しぶといガキめ! ――ええいお前らッ、もっと攻撃せぬか! さっさと殺せいッ!」
指示を受けた部下たちは次々に魔法をくりだす。雨のように降りかかる魔法の数々をアルヴィスは咄嗟に魔法を発動し直し駆けるが、範囲外まで逃げることが間に合わず右脚に直撃してしまう。
「っっっ――!!」
声にならない叫びを上げ倒れ込むアルヴィス。彼の脚を見るとそこには、ふくらはぎに魔法が貫通した穴が空いていた。
大量の血が流れ、止まる気配はない。
すでに全身に火傷をおい、ジンジンと痛む身体に留めとばかりに貫通魔法の脚への重症。
これではとても地を駆けることは出来ない。
地面に倒れ込みながらも、右脚を引きずりながらほふく前進のように腕を使い、エリザベスのもとへ進む。
エリザベスは部下の男に口をふさがれ思うように喋ることができず、先ほどからずっとモゴモゴと何かを叫んでいる。
「ふむ、こうして勝利が確定してしまうと実につまらんな。何か面白くなるような……――」
フレデリックは自身の顎を撫でながら思案していると、何か思い付いたのかパッとエリザベスを見る。
「そうだ! その女を殺してしまおう! そのガキが苦しむ姿に叫ぶ女を見たかったが、弱っていて全然叫ばん。つまらん。それよりもそやつの方がさっきから騒いでいて面白そうだ。それになにより――」
フレデリックは今までのアルヴィスのことを思い出したのか、急にプルプルと顔を小刻みに震えだし真っ赤にする。
「今までの私への無礼は絶対に許さんぞ糞ガキがぁッ!!」
彼は叫ぶと一言「やれ」と顎で部下に合図した。
するとエリザベスを捕らえていた部下の男は、腰の辺りにゴソゴソと何か取り出すような手つきで突っ込みはじめる。
取り出す手に持っていたのは――短刀だ。
「なっ……!? ちょっと、待て……おいっ……嘘、だろ……?」
徐々にエリザベスの首もとに近付く男の短刀に、動けないアルヴィスは為す術もなく、ただ冗談だと声を上げるしか出来なかった。
そんなアルヴィスを見ながら1人楽しむフレデリック。その顔はとても愉快そうな笑顔でねじまがっていた。
そしてもう一度、フレデリックは刺せというように顎で指示する。
瞬間――
「ヤメロぉぉオオォォっっ――!!」
――ズプッ……!
という鈍い音をさせ、エリザベスの首に短刀が貫いていた。
身体強化と多重加速魔法をかけたアルヴィスは、文字通り弾丸の様な速度でマルコに殴りかかった。
だがマルコにかわされ、火球を放たれる。それに続くように部下たち5人も、それぞれ中距離魔法で攻撃をしかけてきた。
アルヴィスもこれらを避け、何度もマルコに殴り、蹴り、突き、手刀、足刀とくりだすが、ことごとくかわされ、いなされ、受け流されてしまう。
それを可能にしているのがマルコの纏う炎だ。
纏う炎がマルコのまわりにまるで陽炎のようなゆらめきを造りだし、マルコ本人の実体をぼかしている。
さらに炎を操るだけあってか、視覚以外にもアルヴィスの体熱から動きを読んでいるようだ。
なので、アルヴィスは先に部下たちを仕留めようと駆けるが、ことごとくフレデリックに邪魔をされる。
土の壁や針、地割れや砲撃で部下たちに接近することを許さない。
アルヴィスはマルコに任せ、フレデリック達他のメンバーはサポートに徹底している。
恐らく同じ様な戦術で、アレスティアの子爵邸を襲ったのだろう。そしてマルコが燃やし尽くしたのだ。
エリザベスの時も同様と予測する。
「やっぱ同時に相手すんのはなかなかこたえるぜ……」
アルヴィスは額の汗を拭いながらあの連携をどう崩そうかと考えるが、相手は休む時間を与えてくれない。
火球を放ちながらマルコが急接近し、フレデリックからは土の砲弾の乱れ撃ちが飛んでくる。
当然アルヴィスはどちらも避けるが、砲弾を避けた先には接近したマルコが待ち構えていた。
「――!? ぐわァっ!」
炎を纏った拳を腹部に喰らってしまう。
さらに吹き飛ぶアルヴィスにマルコが火球の追加攻撃を放ってくる。
それでも腹部をおさえゆっくりと立ち上がるアルヴィスの姿に、フレデリックはこめかみに浮き出た血管をひくつかせた。
「しぶといガキめ! ――ええいお前らッ、もっと攻撃せぬか! さっさと殺せいッ!」
指示を受けた部下たちは次々に魔法をくりだす。雨のように降りかかる魔法の数々をアルヴィスは咄嗟に魔法を発動し直し駆けるが、範囲外まで逃げることが間に合わず右脚に直撃してしまう。
「っっっ――!!」
声にならない叫びを上げ倒れ込むアルヴィス。彼の脚を見るとそこには、ふくらはぎに魔法が貫通した穴が空いていた。
大量の血が流れ、止まる気配はない。
すでに全身に火傷をおい、ジンジンと痛む身体に留めとばかりに貫通魔法の脚への重症。
これではとても地を駆けることは出来ない。
地面に倒れ込みながらも、右脚を引きずりながらほふく前進のように腕を使い、エリザベスのもとへ進む。
エリザベスは部下の男に口をふさがれ思うように喋ることができず、先ほどからずっとモゴモゴと何かを叫んでいる。
「ふむ、こうして勝利が確定してしまうと実につまらんな。何か面白くなるような……――」
フレデリックは自身の顎を撫でながら思案していると、何か思い付いたのかパッとエリザベスを見る。
「そうだ! その女を殺してしまおう! そのガキが苦しむ姿に叫ぶ女を見たかったが、弱っていて全然叫ばん。つまらん。それよりもそやつの方がさっきから騒いでいて面白そうだ。それになにより――」
フレデリックは今までのアルヴィスのことを思い出したのか、急にプルプルと顔を小刻みに震えだし真っ赤にする。
「今までの私への無礼は絶対に許さんぞ糞ガキがぁッ!!」
彼は叫ぶと一言「やれ」と顎で部下に合図した。
するとエリザベスを捕らえていた部下の男は、腰の辺りにゴソゴソと何か取り出すような手つきで突っ込みはじめる。
取り出す手に持っていたのは――短刀だ。
「なっ……!? ちょっと、待て……おいっ……嘘、だろ……?」
徐々にエリザベスの首もとに近付く男の短刀に、動けないアルヴィスは為す術もなく、ただ冗談だと声を上げるしか出来なかった。
そんなアルヴィスを見ながら1人楽しむフレデリック。その顔はとても愉快そうな笑顔でねじまがっていた。
そしてもう一度、フレデリックは刺せというように顎で指示する。
瞬間――
「ヤメロぉぉオオォォっっ――!!」
――ズプッ……!
という鈍い音をさせ、エリザベスの首に短刀が貫いていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】ある二人の皇女
つくも茄子
ファンタジー
美しき姉妹の皇女がいた。
姉は物静か淑やかな美女、妹は勝気で闊達な美女。
成長した二人は同じ夫・皇太子に嫁ぐ。
最初に嫁いだ姉であったが、皇后になったのは妹。
何故か?
それは夫が皇帝に即位する前に姉が亡くなったからである。
皇后には息子が一人いた。
ライバルは亡き姉の忘れ形見の皇子。
不穏な空気が漂う中で謀反が起こる。
我が子に隠された秘密を皇后が知るのは全てが終わった時であった。
他のサイトにも公開中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
元剣聖のスケルトンが追放された最弱美少女テイマーのテイムモンスターになって成り上がる
ゆる弥
ファンタジー
転生した体はなんと骨だった。
モンスターに転生してしまった俺は、たまたま助けたテイマーにテイムされる。
実は前世が剣聖の俺。
剣を持てば最強だ。
最弱テイマーにテイムされた最強のスケルトンとの成り上がり物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる