孤児の俺と魔術学院生活~人生逆転計画~

神堂皐月

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新人戦編 ―前編―

第20話 恥ずかしい勘違い

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 アルヴィスの発言に、まだロビーから解散しきっていない数人の生徒が反応しひそひそと2人を見ながら話出した。



「えぇ!? ――……えっと……その、君のことは後輩として好きだし嬉しいけど……い、いきなりすぎじゃないかな!?」



 頬を朱色に染めもじもとしながら応えるエリザベスの反応は傍から見ると、まるで2人がイチャイチャと仲良くしているようにしか見えない。



 だが当の本人達はいたって真面目なのだ。



「そ、そうか? そういうものなのか? ――とりあえず俺はこれから食堂に行こうと思ってるんだが、エリザも一緒にどうだ? 詳しくはそこで話そうと思うんだが」



「え!? あ、あぁうん、いくよ! 行くいく! 食事ね食事! あーお腹空いたなー!」



 アルヴィスの提案にエリザベスはこの場の雰囲気をわざと払う様に元気よく食堂へと向かい出した。



 ぽつんと独り残されたアルヴィスは、先程からの彼女の反応に首をかしげつつも後を追うように付いていく。



 食堂へ入るとまだ大勢の生徒が卓を囲み団欒としている。そこには当然サーヴァントの姿も見えるが、アルヴィスはふとここであることを思った。



(そういえばロベルトもエリザもサーヴァントを連れているところを見たことないな?)



 そのことも聞いておこうと思いエリザベスの姿を探すと 、先に皿に盛り付け終えたらしく空いているテーブル席に座っていた。



 アルヴィスに気付いたエリザベスは手を大きく振り自身の存在をアピールしてくる。



 軽く手を上げて応えると、アルヴィスも適当に皿に盛り付けエリザベスの正面席に腰を下ろした。



「な、なぁエリザ。ロビーでも思ったんだけどエリザって凄い注目浴びてるよな?」



「んーそうかな? まぁ上位者の宿命的なやつだよ、うん」



「それもあるけど、それとは違うと思うんだが……」



 男女ともに注目しているが特に男子の割合が高い。アルヴィスは、エリザベスのことを1人の女性として狙っているのではないかという考えをあえて黙った。



 隣にいると痛いほど男子生徒からの視線を浴びるのでアルヴィスは確信しているが、それをこれだけ大勢の生徒の前でエリザベス本人に言っては誰が他に聞いているかわからない。変に逆恨みや目の敵にされても困るという判断だ。



 ここでアルヴィスはわざとらしく1つ咳をいれる。



「んでエリザ、さっきのお願いなんだけど――」



「い、いきなりだね!? ちょっとは私にも考える時間を頂戴よ……」



 後半になるにつれ口ごもり気味に声がどんどんと小さくなるエリザベス。そんな彼女を無視してアルヴィスは話を続けた。



「新人戦までの半月、俺の練習相手として付き合ってほしいんだ。頼む、この通りだ!」



 アルヴィスは両手を合わせ頭を下げる。



 そんな彼の姿を見たエリザベスはぽかんと呆けていた。



 数秒の静寂。



「え、え!? ちょっと待って、え? あれ?」



 先に沈黙を破ったのは意外にもエリザベスの方からだった。



「ん? どうかしたか?」



「練習相手!? えっと、あれがこうでこれがこうだから――」



 エリザベスは手をあたふたとさせながらこれまでのことを整理しだす。



 そして――――



「わぁァァぁっ!?」



 顔を真っ赤にしたエリザベスが奇声を上げる。



「ホントにどうした!? 大丈夫かエリザ!?」



「う、ううん、気にしないで! 大丈夫、大丈夫だから! 私の勘違いだから!」



 両手を顔の前でぶんぶんと振っている姿から察するに、どうやら今まで自分がアルヴィスに交際を申し込まれていたということが勘違いだったと気が付いたのであろう。



「そうか? なら話を続けるぞ?」



「うん、ホントに大丈夫だから、私の勘違いだから、ね。話を続けて?」



 エリザベスは朱色に染まったままの顔を隠すように手で覆い俯きがちに話を促した。



「俺は今回の新人戦で本気で優勝を狙いたい。だからエリザ、俺に魔法の指導をしてくれ!」



 アルヴィスの真剣な表情にエリザベスは俯いていた顔を上げ真っ直ぐに顔を向き合わせると、同じく真剣な表情へと変えた。



「……私の質問に2つ答えて」



「ああ」



 アルヴィスは頷き応える。



「君はどうしてそんなに勝ちたいの? こんなの、ただのお披露目会みたいなものなのに」



「そこだ」



「え?」



「当日は大勢の貴族や一般人が来る。絶好のアピールチャンスだろ?」



「たしかにそうかもしれないけど、アピールしてどうするの?」



「名前を広める! 俺はそれが目的でこの学院に入ったようなものだからな」



「ふーん、名前を、ねぇ……」



エリザベスはアルヴィスの解答に小さく呟いた。
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