孤児の俺と魔術学院生活~人生逆転計画~

神堂皐月

文字の大きさ
上 下
21 / 44
新人戦編 ―前編―

第20話 恥ずかしい勘違い

しおりを挟む
 アルヴィスの発言に、まだロビーから解散しきっていない数人の生徒が反応しひそひそと2人を見ながら話出した。



「えぇ!? ――……えっと……その、君のことは後輩として好きだし嬉しいけど……い、いきなりすぎじゃないかな!?」



 頬を朱色に染めもじもとしながら応えるエリザベスの反応は傍から見ると、まるで2人がイチャイチャと仲良くしているようにしか見えない。



 だが当の本人達はいたって真面目なのだ。



「そ、そうか? そういうものなのか? ――とりあえず俺はこれから食堂に行こうと思ってるんだが、エリザも一緒にどうだ? 詳しくはそこで話そうと思うんだが」



「え!? あ、あぁうん、いくよ! 行くいく! 食事ね食事! あーお腹空いたなー!」



 アルヴィスの提案にエリザベスはこの場の雰囲気をわざと払う様に元気よく食堂へと向かい出した。



 ぽつんと独り残されたアルヴィスは、先程からの彼女の反応に首をかしげつつも後を追うように付いていく。



 食堂へ入るとまだ大勢の生徒が卓を囲み団欒としている。そこには当然サーヴァントの姿も見えるが、アルヴィスはふとここであることを思った。



(そういえばロベルトもエリザもサーヴァントを連れているところを見たことないな?)



 そのことも聞いておこうと思いエリザベスの姿を探すと 、先に皿に盛り付け終えたらしく空いているテーブル席に座っていた。



 アルヴィスに気付いたエリザベスは手を大きく振り自身の存在をアピールしてくる。



 軽く手を上げて応えると、アルヴィスも適当に皿に盛り付けエリザベスの正面席に腰を下ろした。



「な、なぁエリザ。ロビーでも思ったんだけどエリザって凄い注目浴びてるよな?」



「んーそうかな? まぁ上位者の宿命的なやつだよ、うん」



「それもあるけど、それとは違うと思うんだが……」



 男女ともに注目しているが特に男子の割合が高い。アルヴィスは、エリザベスのことを1人の女性として狙っているのではないかという考えをあえて黙った。



 隣にいると痛いほど男子生徒からの視線を浴びるのでアルヴィスは確信しているが、それをこれだけ大勢の生徒の前でエリザベス本人に言っては誰が他に聞いているかわからない。変に逆恨みや目の敵にされても困るという判断だ。



 ここでアルヴィスはわざとらしく1つ咳をいれる。



「んでエリザ、さっきのお願いなんだけど――」



「い、いきなりだね!? ちょっとは私にも考える時間を頂戴よ……」



 後半になるにつれ口ごもり気味に声がどんどんと小さくなるエリザベス。そんな彼女を無視してアルヴィスは話を続けた。



「新人戦までの半月、俺の練習相手として付き合ってほしいんだ。頼む、この通りだ!」



 アルヴィスは両手を合わせ頭を下げる。



 そんな彼の姿を見たエリザベスはぽかんと呆けていた。



 数秒の静寂。



「え、え!? ちょっと待って、え? あれ?」



 先に沈黙を破ったのは意外にもエリザベスの方からだった。



「ん? どうかしたか?」



「練習相手!? えっと、あれがこうでこれがこうだから――」



 エリザベスは手をあたふたとさせながらこれまでのことを整理しだす。



 そして――――



「わぁァァぁっ!?」



 顔を真っ赤にしたエリザベスが奇声を上げる。



「ホントにどうした!? 大丈夫かエリザ!?」



「う、ううん、気にしないで! 大丈夫、大丈夫だから! 私の勘違いだから!」



 両手を顔の前でぶんぶんと振っている姿から察するに、どうやら今まで自分がアルヴィスに交際を申し込まれていたということが勘違いだったと気が付いたのであろう。



「そうか? なら話を続けるぞ?」



「うん、ホントに大丈夫だから、私の勘違いだから、ね。話を続けて?」



 エリザベスは朱色に染まったままの顔を隠すように手で覆い俯きがちに話を促した。



「俺は今回の新人戦で本気で優勝を狙いたい。だからエリザ、俺に魔法の指導をしてくれ!」



 アルヴィスの真剣な表情にエリザベスは俯いていた顔を上げ真っ直ぐに顔を向き合わせると、同じく真剣な表情へと変えた。



「……私の質問に2つ答えて」



「ああ」



 アルヴィスは頷き応える。



「君はどうしてそんなに勝ちたいの? こんなの、ただのお披露目会みたいなものなのに」



「そこだ」



「え?」



「当日は大勢の貴族や一般人が来る。絶好のアピールチャンスだろ?」



「たしかにそうかもしれないけど、アピールしてどうするの?」



「名前を広める! 俺はそれが目的でこの学院に入ったようなものだからな」



「ふーん、名前を、ねぇ……」



エリザベスはアルヴィスの解答に小さく呟いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

処理中です...