公爵家令嬢と婚約者の憂鬱なる往復書簡

そして、ふたたび春

１６通目 グリード第二皇子より

愛しいパルマローザへ


    
   この間は泣いたりして、情けないところばかり見せてすまなかった。とはいえ、あの提案には驚いたよ。国王陛下にも確認したけれど、特に問題はないそうだから、来月早々にも準備ができそうだ。

   薔薇の咲く庭園で盛大な茶会をひらき、そこで正式に君に結婚を申し込むよ。万事君のいうとおり、完璧にやってみせるつもりだ。どうかどうか、君が気に入ってくれますように。


しかし、ロマンチックといえばロマンチックだが、なにか底知れぬ計算がみえて仕方がない。

きみには一体どんな思惑があるんだ？なぜ、エリアス公爵とは派閥のちがう貴族たちを大勢よぶ？なぜ、令嬢は14歳より下の社交界に出ていない子供たちまで呼ばれているんだ？


……まあ、それはそれとして式の準備が整ってきたね。仮縫いのドレスを見たが、本当に素晴らしいものだったよ。式が楽しみだ。

君のいうとおり、大胆なデザインのものも君には似合う気がしてきた。たしかにきみの顔はすこしオリエンタルな雰囲気だから、こういったものもいいかもしれない。夜会で着たら話題になるだろう。

ところで、仕立て屋が言ってたロットっていうのは何だい？とにかく、
「いまのところ18なら６月に納入できる、全部納入ならば９月だ」
と伝えて欲しいと言われたので伝えておく。

君があの素晴らしいハクモクレンの刺繍が入った、純白の衣装を着るところを、いまからとても、楽しみにしているよ。

                                        グリード