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幽霊と時計の秘密

バセッティ司祭

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翌日から、フィオラとリアムは早速作戦に取りかかることにしたが、それにはひとつ、リアムにとって大きな試練が待っていた。



その朝のことだ。
リアムが自室で朝の食事をすませ、着替えをしていると養父…バセッティ司祭が部屋に入ってきた。
「お早うリアム、この家にはもう慣れたかね?なにか不自由はしてないかな?」

眼鏡を拭きながら言われて、リアムは行儀よく、しかし四歳らしく
「ううん、だいじょうぶ、です」
とたどたどしく答えた。そんなリアムに、バセッティ司祭は気を良くしたのかそのまるい頭をなんどもなで回した。

「リアム、フィオラはおとなしくしているかい?あれは体は丈夫で勉学はできるが、性格がとても悪い。苛められたらすぐ言いなさい、まあ、君ほどかわいい子になにかできるともおもえないが」
リアムの肩を掴んで、やわやわと揉むその手に、リアムは全身が総毛立つような気がしていた。

「だい、じょうぶですおとうさま」
そういって、作り笑いをうかべた。それは単に笑えない状況で必死に繕ったものだったが、バセッティ司祭はそれをはにかんだ笑顔というふうにうけとめた。

「おとうさまと呼んでくれるのか!今日は素晴らしい日だな!是非ともなにか贈り物をさせてくれ!リアム、欲しいものはなんだ?」
かかった、とリアムは思ったけれど、少し首をかたむけてから、おともだち、と呟いた
「ここにはぼくとねえさまだけだから、さびしい。ぼく、おともだちが、ほしいです」

嘘もいいところだ、とリアムは拳をにぎった。すべてはフィオラの作戦のためだ。
「友達!そうだな、男の子には友達がいなくてはな!まかせておけ、今週末にはおまえと同年代の仲間を大勢あつめてやろうな!」
そう言われて、リアムは元気よく、はい、とうなづいた。



その二時間ほどあと、フィオラはその話をきいて全身の鳥肌をたてた。
「あのおと…お父様、あなたの部屋に来たの?着替えている途中で?」
実の娘であるフィオラでさえやはりこの反応である、リアムはげんなりした様子で、はい、とうなづいた。

うえ、とフィオラは舌をだし、リアムに行儀悪いと注意される。
「私も朝、ホールでお父様にご挨拶したけど、全く無視だったわよ」
無視も腹立つけど、着替えているとこに来て触られるのは最悪、と二人は震える。

「ねえ、今朝は庭で勉強しましょうよ、ハナミズキが沢山咲いたわ」
そう言って、リアムの手をひきフィオラは微笑む。
リアムもうなづいてそのフィオラに従った。




春の日差しのなか、揺れるハナミズキの陰にテーブルを出してもらい、幼い姉弟は楽しげに画用紙に鉛筆で何かかきつけている。蜜蜂が植え込みのローズマリーの青い花に群れとび、あまい香りが満ちていた。

「今日は歴史にしましょう、怨みを残して死んだ悪女や妖怪になった将軍について調べるのよ」
そう言って、侍従に持たせた本を指差した。
「…作戦にピッタリでしょ?」
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