5 / 33
幽霊と時計の秘密
バセッティ司祭
しおりを挟む
翌日から、フィオラとリアムは早速作戦に取りかかることにしたが、それにはひとつ、リアムにとって大きな試練が待っていた。
その朝のことだ。
リアムが自室で朝の食事をすませ、着替えをしていると養父…バセッティ司祭が部屋に入ってきた。
「お早うリアム、この家にはもう慣れたかね?なにか不自由はしてないかな?」
眼鏡を拭きながら言われて、リアムは行儀よく、しかし四歳らしく
「ううん、だいじょうぶ、です」
とたどたどしく答えた。そんなリアムに、バセッティ司祭は気を良くしたのかそのまるい頭をなんどもなで回した。
「リアム、フィオラはおとなしくしているかい?あれは体は丈夫で勉学はできるが、性格がとても悪い。苛められたらすぐ言いなさい、まあ、君ほどかわいい子になにかできるともおもえないが」
リアムの肩を掴んで、やわやわと揉むその手に、リアムは全身が総毛立つような気がしていた。
「だい、じょうぶですおとうさま」
そういって、作り笑いをうかべた。それは単に笑えない状況で必死に繕ったものだったが、バセッティ司祭はそれをはにかんだ笑顔というふうにうけとめた。
「おとうさまと呼んでくれるのか!今日は素晴らしい日だな!是非ともなにか贈り物をさせてくれ!リアム、欲しいものはなんだ?」
かかった、とリアムは思ったけれど、少し首をかたむけてから、おともだち、と呟いた
「ここにはぼくとねえさまだけだから、さびしい。ぼく、おともだちが、ほしいです」
嘘もいいところだ、とリアムは拳をにぎった。すべてはフィオラの作戦のためだ。
「友達!そうだな、男の子には友達がいなくてはな!まかせておけ、今週末にはおまえと同年代の仲間を大勢あつめてやろうな!」
そう言われて、リアムは元気よく、はい、とうなづいた。
その二時間ほどあと、フィオラはその話をきいて全身の鳥肌をたてた。
「あのおと…お父様、あなたの部屋に来たの?着替えている途中で?」
実の娘であるフィオラでさえやはりこの反応である、リアムはげんなりした様子で、はい、とうなづいた。
うえ、とフィオラは舌をだし、リアムに行儀悪いと注意される。
「私も朝、ホールでお父様にご挨拶したけど、全く無視だったわよ」
無視も腹立つけど、着替えているとこに来て触られるのは最悪、と二人は震える。
「ねえ、今朝は庭で勉強しましょうよ、ハナミズキが沢山咲いたわ」
そう言って、リアムの手をひきフィオラは微笑む。
リアムもうなづいてそのフィオラに従った。
春の日差しのなか、揺れるハナミズキの陰にテーブルを出してもらい、幼い姉弟は楽しげに画用紙に鉛筆で何かかきつけている。蜜蜂が植え込みのローズマリーの青い花に群れとび、あまい香りが満ちていた。
「今日は歴史にしましょう、怨みを残して死んだ悪女や妖怪になった将軍について調べるのよ」
そう言って、侍従に持たせた本を指差した。
「…作戦にピッタリでしょ?」
その朝のことだ。
リアムが自室で朝の食事をすませ、着替えをしていると養父…バセッティ司祭が部屋に入ってきた。
「お早うリアム、この家にはもう慣れたかね?なにか不自由はしてないかな?」
眼鏡を拭きながら言われて、リアムは行儀よく、しかし四歳らしく
「ううん、だいじょうぶ、です」
とたどたどしく答えた。そんなリアムに、バセッティ司祭は気を良くしたのかそのまるい頭をなんどもなで回した。
「リアム、フィオラはおとなしくしているかい?あれは体は丈夫で勉学はできるが、性格がとても悪い。苛められたらすぐ言いなさい、まあ、君ほどかわいい子になにかできるともおもえないが」
リアムの肩を掴んで、やわやわと揉むその手に、リアムは全身が総毛立つような気がしていた。
「だい、じょうぶですおとうさま」
そういって、作り笑いをうかべた。それは単に笑えない状況で必死に繕ったものだったが、バセッティ司祭はそれをはにかんだ笑顔というふうにうけとめた。
「おとうさまと呼んでくれるのか!今日は素晴らしい日だな!是非ともなにか贈り物をさせてくれ!リアム、欲しいものはなんだ?」
かかった、とリアムは思ったけれど、少し首をかたむけてから、おともだち、と呟いた
「ここにはぼくとねえさまだけだから、さびしい。ぼく、おともだちが、ほしいです」
嘘もいいところだ、とリアムは拳をにぎった。すべてはフィオラの作戦のためだ。
「友達!そうだな、男の子には友達がいなくてはな!まかせておけ、今週末にはおまえと同年代の仲間を大勢あつめてやろうな!」
そう言われて、リアムは元気よく、はい、とうなづいた。
その二時間ほどあと、フィオラはその話をきいて全身の鳥肌をたてた。
「あのおと…お父様、あなたの部屋に来たの?着替えている途中で?」
実の娘であるフィオラでさえやはりこの反応である、リアムはげんなりした様子で、はい、とうなづいた。
うえ、とフィオラは舌をだし、リアムに行儀悪いと注意される。
「私も朝、ホールでお父様にご挨拶したけど、全く無視だったわよ」
無視も腹立つけど、着替えているとこに来て触られるのは最悪、と二人は震える。
「ねえ、今朝は庭で勉強しましょうよ、ハナミズキが沢山咲いたわ」
そう言って、リアムの手をひきフィオラは微笑む。
リアムもうなづいてそのフィオラに従った。
春の日差しのなか、揺れるハナミズキの陰にテーブルを出してもらい、幼い姉弟は楽しげに画用紙に鉛筆で何かかきつけている。蜜蜂が植え込みのローズマリーの青い花に群れとび、あまい香りが満ちていた。
「今日は歴史にしましょう、怨みを残して死んだ悪女や妖怪になった将軍について調べるのよ」
そう言って、侍従に持たせた本を指差した。
「…作戦にピッタリでしょ?」
0
お気に入りに追加
219
あなたにおすすめの小説
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる