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選択肢
しおりを挟む少し辺りが薄暗くなって来た頃、
「えへへ、えへ、えへぇ……。」
私は1人、不気味な笑い声を上げながら、スマホを片手に道端を歩いていた。
あ~っ!今日もシスト様最高っ!何という顔面偏差値っ!
私は推しのシスト様の顔面を見て和んでいた。
これは最近流行りの乙女ゲーム、"world for you"。
よくあるタイプの乙女ゲーで、内容はかなりハードモード。とにかく選択肢が厳しくって、中には1つでも間違えると即死亡というものもある。
私はシスト様以外のキャラは全員クリアして、シスト様攻略に励んでいる。
「あー、会ってみたいなぁ、シスト様……。あぁぁぁぁぁぁぁっ!」
"GAME OVER"
よそ見をしている間に間違えて画面を押したらしい。ゲームの画面に、薄笑いをする性格悪そうな美人が写っていた。
ダメだ…。またこいつに殺された……。
「もーっ!何回目だしっ!」
……私が殺されたのは悪役令嬢、シスト様の婚約者で何かと主人公の邪魔をしてくる。
でも大体のルートでは悪事がバレて死んじゃうんだけどねー、まぁ、不憫なキャラだし、私よりこいつの方が沢山殺されてるから、ちょっと可哀想かな……。
「はぁ……、また最初からか……。」
よしっ!私は頑張りますよっ!シスト様!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
家に着いて、しばらくたち、ようやく悪役令嬢の処刑シーンをクリアした。
「やった!最後は婚約シーン!選択肢を間違えなければ完全攻略だっ!やったぁぁぁぁぁぁ!お母さん!」
ーシーン……
そうだった、もう居ないんだ。
こんなに騒いでも、相変わらず家は静まり帰っている。
「はぁ……。」
……いつまで、私は1人なんだろう。
母と父は私が15になるまでに他界した。頼れる親族もいないし、とても仲のいい友達もいなかった。それから4年間、私は1人で暮らしてきた。
寂しさを紛らわすためのゲームも、1人で食べるご飯も、もううんざりだ。
シスト様も顔面がいいだけで、所詮はゲーム、心の穴埋めに過ぎない。
「……、ダメダメっ、私がしっかりしないと……。」
……しないと…?
誰が困るの、?
私はふとシストとの婚約シーンに進んだスマホの画面を見た。
「……?なにこれ。」
私はそこで飛び込んできた文面に目を疑った。
スマホ画面に映し出されている文面は、明らかに攻略サイトに載っていたセリフとは違う。
ー幸せになりたいですか?
はい/いいえ
……?結婚するかってこと?
……まぁ、ほんとに幸せになれたらいいな…。
▹▸『はい』
ー後悔しませんか?
はい/いいえ
幸せになるのに後悔って…笑える。
▹▸『はい』
ー最後の質問です、
……何、?
ー貴方の願い事はなんですか?
…何この質問、おっかしーっ!入力なんて初めてだなぁ。願い事か……。まあ、ゲームだし。
▹▸『幸せになりたい』
よしっ終わりだっ!シスト様とハッピーエンド!
《ゲームロード中です……。》
エンディングが見られるのかな?
《完了致しました》
やったぁ!!
ようやくエンディッ…………………………プツッ…。
私の記憶はそこまでだった。
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