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フェロモンの力に戸惑う日常
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みつきは、青年に助けられてその場を離れ、近くの町へと案内されることになった。歩きながら彼と話してみると、どうやら彼の名前はカイルといい、この町の警備隊の一員であるらしい。彼の優しさと頼りがいのある雰囲気に、みつきは少しずつ心を開き始めていた。
「ありがとう、カイルさん。私、どうやら道に迷っちゃったみたいで……この辺のこと、よくわからないんです」
「そうか、君、どこから来たんだい? 服装も見慣れないし、珍しい感じがするけど」
カイルの問いかけに、みつきは答えに詰まった。彼女自身、どこから来たのか正確には説明できない。だが、なんとなく「日本」という名前を出してもこの世界の人には通じなさそうな気がした。
「えっと、遠くの方から来たんです。それ以上はちょっと……」
「ああ、無理に聞いて悪かったね。ここはとりあえず安全だから、しばらく滞在して様子を見てくれればいいさ」
カイルは穏やかに微笑んでそう言うと、先に立って歩き始めた。みつきは彼の背中を追いながら、心の中でふと思う。
(……何か、変だな)
カイルと初めて会ったときから、彼の様子がどこかおかしい。まるで自分に強く惹かれているような、そしてそれが自然なことだと感じているような……そんな不思議な空気感を感じるのだ。
「もしかして……これがスキルの力?」
町に着いたみつきは、案内された宿屋に荷物を置き、一息ついた。異世界に来てからまだわずかしか経っていないが、疲労感はひどい。しかし、どうしても気になるのは自分の「フェロモン」というスキルについてだ。あれは一体どういう力なのか、そしてどうやって使いこなすべきなのか。
「試してみるしかない、よね」
みつきは宿屋の部屋の片隅で座り込み、じっと集中してみた。フェロモンのスキルを意識的に使おうとすると、微妙な感覚が身体を包み込む。どうやら、自分の意識でその力をコントロールできるようだ。
その翌日、みつきは町の市場を歩いてみることにした。カイルの助言で町の地理を把握しておこうと思ったのだが、問題はその途中で起きた。
「お嬢さん、こっちで何か探してるのかい?」
「その花は素敵だよ! 一つどうだい?」
通りすがりの商人や町人たちが、次々とみつきに話しかけてくる。しかも、彼らの目はどこかぼんやりとしていて、まるで彼女に魅了されているかのようだった。
「え、ちょっと待って、これ……」
どうやら彼らは、みつきが無意識のうちに発しているフェロモンの影響を受けているようだ。みつきはあわててスキルを抑え込もうとするが、うまくコントロールできない。次々と男性が近づいてくる光景に、彼女は思わず身を引きながら呟いた。
「これ、扱いが難しい……!」
その瞬間、ドン! と何かがぶつかる音が聞こえ、みつきは振り返った。そこには、一人の女性が腕を組んで立っていた。彼女は鋭い目つきでみつきを睨みつけ、その口元に冷笑を浮かべている。
「……あなた、何者?」
その声には明らかな敵意がこもっていた。みつきは戸惑いながらも、その女性の迫力に気圧される。だが、女性は一歩も引かず、厳しい口調で続けた。
「男を惑わすような真似をして……何か目的があるんじゃないでしょうね?」
みつきは慌てて頭を振り、否定する。
「ち、違うの! そんなつもりじゃなくて、これには事情が……」
しかし、その女性は全く耳を貸さず、むしろ更に険しい表情を浮かべた。
「話にならないわ。自分の力をちゃんと理解できていないなら、この町に混乱を招くだけよ。あなたみたいな人が、余計なトラブルを引き起こすのよ」
その言葉に、みつきはぐっと唇を噛んだ。確かに自分のスキルはまだコントロールできていないが、それが原因で問題を引き起こすなどとは考えてもみなかった。
「……どうすればいいの?」
彼女は自問しながら、その場に立ち尽くした。
――その女性が、後にみつきのライバルとなる冒険者であり、彼女のスキルの使い方を試す相手となることは、まだこの時のみつきは知らなかった。
「ありがとう、カイルさん。私、どうやら道に迷っちゃったみたいで……この辺のこと、よくわからないんです」
「そうか、君、どこから来たんだい? 服装も見慣れないし、珍しい感じがするけど」
カイルの問いかけに、みつきは答えに詰まった。彼女自身、どこから来たのか正確には説明できない。だが、なんとなく「日本」という名前を出してもこの世界の人には通じなさそうな気がした。
「えっと、遠くの方から来たんです。それ以上はちょっと……」
「ああ、無理に聞いて悪かったね。ここはとりあえず安全だから、しばらく滞在して様子を見てくれればいいさ」
カイルは穏やかに微笑んでそう言うと、先に立って歩き始めた。みつきは彼の背中を追いながら、心の中でふと思う。
(……何か、変だな)
カイルと初めて会ったときから、彼の様子がどこかおかしい。まるで自分に強く惹かれているような、そしてそれが自然なことだと感じているような……そんな不思議な空気感を感じるのだ。
「もしかして……これがスキルの力?」
町に着いたみつきは、案内された宿屋に荷物を置き、一息ついた。異世界に来てからまだわずかしか経っていないが、疲労感はひどい。しかし、どうしても気になるのは自分の「フェロモン」というスキルについてだ。あれは一体どういう力なのか、そしてどうやって使いこなすべきなのか。
「試してみるしかない、よね」
みつきは宿屋の部屋の片隅で座り込み、じっと集中してみた。フェロモンのスキルを意識的に使おうとすると、微妙な感覚が身体を包み込む。どうやら、自分の意識でその力をコントロールできるようだ。
その翌日、みつきは町の市場を歩いてみることにした。カイルの助言で町の地理を把握しておこうと思ったのだが、問題はその途中で起きた。
「お嬢さん、こっちで何か探してるのかい?」
「その花は素敵だよ! 一つどうだい?」
通りすがりの商人や町人たちが、次々とみつきに話しかけてくる。しかも、彼らの目はどこかぼんやりとしていて、まるで彼女に魅了されているかのようだった。
「え、ちょっと待って、これ……」
どうやら彼らは、みつきが無意識のうちに発しているフェロモンの影響を受けているようだ。みつきはあわててスキルを抑え込もうとするが、うまくコントロールできない。次々と男性が近づいてくる光景に、彼女は思わず身を引きながら呟いた。
「これ、扱いが難しい……!」
その瞬間、ドン! と何かがぶつかる音が聞こえ、みつきは振り返った。そこには、一人の女性が腕を組んで立っていた。彼女は鋭い目つきでみつきを睨みつけ、その口元に冷笑を浮かべている。
「……あなた、何者?」
その声には明らかな敵意がこもっていた。みつきは戸惑いながらも、その女性の迫力に気圧される。だが、女性は一歩も引かず、厳しい口調で続けた。
「男を惑わすような真似をして……何か目的があるんじゃないでしょうね?」
みつきは慌てて頭を振り、否定する。
「ち、違うの! そんなつもりじゃなくて、これには事情が……」
しかし、その女性は全く耳を貸さず、むしろ更に険しい表情を浮かべた。
「話にならないわ。自分の力をちゃんと理解できていないなら、この町に混乱を招くだけよ。あなたみたいな人が、余計なトラブルを引き起こすのよ」
その言葉に、みつきはぐっと唇を噛んだ。確かに自分のスキルはまだコントロールできていないが、それが原因で問題を引き起こすなどとは考えてもみなかった。
「……どうすればいいの?」
彼女は自問しながら、その場に立ち尽くした。
――その女性が、後にみつきのライバルとなる冒険者であり、彼女のスキルの使い方を試す相手となることは、まだこの時のみつきは知らなかった。
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