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第7幕 悠久へと架ける希望
42 古の技は新たに紡がれる
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さっきの攻撃で放った俺の衝撃波は臣級に対して全く効果がなかった。
おそらく何かしらの異能が働いているのか、それともただ単に圧倒的な力の差が開いているだけなのか。
どちらだったとしても対処のしようがない相手だ。
未来視ではこの戦いの結末は分からない。
未来視は時代の流れを大局的に把握するものでしかなく、局所的なビジョンを具体的に観察する事は出来ないからだ。
世界が滅亡するシナリオなんかはとても見やすい。
俺たちの時代に起こりえた破滅は神級の転移だった。
だが花梨ちゃんの虚層塔エネルギーの放出によって支配層召喚を弱めた未来線が選べられた。
臣級を倒す事で俺の望む未来は実現される。
俺と並走している古雅崎は、先行する形で攻撃に転じた。
霊樹を地面に叩き込み、そのエネルギー衝撃でさらなる高速状態で臣級異性物へ迫る。
周囲にいる下級異生物を散らしながら。
異粒子結晶を備えた霊樹の力が放たれていく。
対して臣級側も迎撃に入る。
ヤツ周囲に蒼色のゆらぎが生まれ出す。
そのゆらめきは目の前で集約されていき、密度を高めたのちにこちらへ放たれた。
先ほどの光攻撃とは違う、今度は局所的な高熱攻撃。
この色、ホークスのビジョンで見た事がある・・・・
「古雅崎! これは異界の炎だ!」
直ぐ様古ヶ崎は対処へと転じた。
「雅流変性術 『朱紅霊葬炎・異粒子延焼』!」
!!??
目の前でとんでもない事が起きた。
なんだ?その技は。
臣級から放たれた炎は未来視でみたひとつの結末、世界の焼却ルートの要因となった異界の蒼炎だったのだ。
世界を焼き尽くす程に消える事のない絶望の炎・・・・。
だがその規格外な炎を、なんと雅ヶ崎が放つさらに見たことがない炎がそれを巻き取り、そしてそれを濁色に混合させて臣級に返したのだ。
「ゴ・・・・ゴオオォ・・・・オオオ!!」
腹の底にまで響いてくる重低音が臣級の声として響いてきた。
効いている・・・・!
俺どころかヤツにとっても全く未知の技だったのだろう。
いやいや、というか複合的にいろんな事が今の一瞬で起きていた気がするぞ。
「おい、お前いま何したんだ?」
「霊界の炎を起こした。霊樹の一部を媒体に燃焼させる事で朱の紅き炎を生む幽子燃焼を呼び起こす変性術よ」
「・・・・それだけじゃないだろ」
「結晶から出る異粒子エネルギーを霊炎の投下燃料にして延焼させてみたの」
コイツ、高質細胞持ちでもないのにさっそく結晶を使いこなしてやがるんだな。
エネルギーは常時出っ放しみたいだからおそらく花凜ちゃんの手によって自動放出させているのだろうが。
「・・・・それで?」
「ええ、朱色だった炎は形態を変えて紫炎になったわ。おそらく霊炎と異粒子エネルギーの化合反応ね。そして臣級の異界炎を巻き取ったみたい」
「異粒子燃焼した霊界の炎が、異界の炎と結合して濁色炎になったワケか?」
世界初どころか全次元において初な事象が2~3個ほど同時に目の前で起きていたようだ。
こんなの観測しようがない事なので混乱した頭を落ち着かせるために、複雑に思考しようとする頭をシンプルにさせた。
「古雅崎はよくわからない事をして臣級の技を跳ね返した」
「そうね、私も詳しい事に興味はないわ。ヤツを倒せる手段を探りましょう」
「手ごたえがなかったのか?」
「効いているとは思うのだけど・・・・まだ底が知れない」
臣級は未だに濁色の炎に包まれ苦しんでいる。
だがもがいている程ではなく、次の攻撃に移ろうとする位に耐えられている様子だった。
「雅流奥義 『幽子継滅』斥力放射」
またしても古雅崎はサラっととんでもない技を発動した。
臣級はついに初めて避ける行動を取った。
その巨体は大きいが動きが鈍い事はなく、古雅崎に二手目を大きくかわした。
ちなみに幽子継滅は、リガントレス戦で行われた、魂を輪廻ごと消し去る奥義の簡易版だ。
おそらくそれを異粒子結晶で増強したのは当然だが、指向性を持たない筈の幽子消滅分子を異能の斥力による位置エネルギーによって前に撃ち出していた。
A級の異能を再現したのだ。
俺の血の中にある異能細胞すらも手中にした芸当・・・・。
「奥義も異能も簡易的な使い方しか私には出来ないけど・・・・組み合わせる事で戦いようはあるわね」
「その組み合わせはすでに本家を凌駕する新奥義となっていないか・・・・?」
事実、古雅崎の天才的な技術によって臣級の討伐手段がいくつも発明されている。
だがそれにも限界があった。
手にした霊樹薙木刀を見つめているが、そこに刻まれていたヒビはさらに深さと広がりを持って、消耗の激しさを表している。
「あと二発・・・・いえ、もしかしたら次で最後かもしれないわ」
残念ながら万能そうに思えたこの力には手数が限られていた。
古雅崎も異粒子結晶の負担がこれほどまでとは思えなかったのだろう。
異粒子変性術がなければ攻撃どころか臣級の技の防御すら成立しない現状であったのだが。
次の一手で確実に決着をつけられる戦略を取るべきか。
俺は深呼吸をして、・・・・そして覚悟を決める。
もう後先を考えずに確実な攻撃だけに特化していくしかない。
「俺が技をしかける。お前の最後の手は・・・・その後のためにとっておいてくれ」
臣級が技を放とうとしてくる。
やばい!・・・・最初に撃ち出した、不可視光線だ。
おそらく紫外線のような波長を持つ化学線を扱った技だろう。
異界の光・・・・細胞の欠乏症や変異を引き起こすのだろうが、地球に存在する高濃度放射線のように防御のしようがない。
古雅崎がこちらを向いてニコリと笑う。
「私の顔が酷い事になっても・・・・私の事をこれからもちゃんと見てくれるかしら」
攻撃の一手のために古雅崎もこの技に対する防御を捨てようとしていた。
それは女の尊厳を捨てる事を意味する。
だがその顔に悲しみの表情などは一切感じられなかった。
女性にとってはとてつもない覚悟を持った決断であるなのに。
俺はそれに対して真っ当な返答が思いつかない。
こんな俺のために全てを捨ててくれる人を・・・・こんな俺に出来る事があるのならなんでもしてやりたい。
俺は古雅崎の前に立ち、せめて少しでも・・・・彼女に向かう化学線の影響を俺の体で受け止めようとした。
「古雅崎・・・・!」
もしかしたらガンマ線のように透過率の高いものかもしれない。
俺の体を通過してなお、古雅崎の体を被爆させるかもしれない。
けれど古雅崎の白く美しく、日の光を綺麗に反射させていた姿を思い出し、俺はたった少しだけでもそれを残してあげたいと願った。
「俺の後ろに・・・・!」
「あなたをずっと守るつもりだけど、今だけは・・・・あなたの気持ちがとても嬉しいわ」
取り返しのつかない大ダメージを覚悟した。
・・・・・・。
高熱が来る筈だったが、俺達のまわりを朧気にゆらぐ大気が包みこんだ。
空間にひずみが発生している。
届いてくる筈の不可視光線が俺達の周囲だけ衰えていた。
どこかからか声がする。
「私の異能は光を歪ませる能力だ。この技に対しては圧倒的に優位に立てるようだな」
白いスーツの男が横に立っていた。
博賀であった。
俺の前で姿を朧気にし、技をかわしたり姿を消し去ったりした異能だ。
「おまえ、助けてくれたのか?」
「私の目的は古から継がれた預言者の言葉を歴史の事実として刻み実証すること。メシュアは誕生し、それは今日真実となった。そしてその瞬間を・・・・私はそれを目にすることができた」
その声は震えながら、けれど満ち足りたような言葉であった。
香音ではなく花凛ちゃんがメシュアとして真に誕生したからだろう。
「貴様には感謝してるよ。予言を真実にした立役者だ]
「お前のためじゃないが、この防御は俺の大切なものを守ってくれた。礼を言うよ」
「ここから先の未来の予言もある。我々にとって正しき流れへと真実化する事を望むよ。悠希遥架・・・・これから私は朧気にお前を監視させてもらおう」
そう言って博賀は姿を消していった。
この場から去り気配は完全に消えている。
俺たちは無傷で臣級の特大攻撃をやり過ごす事ができた。
古雅崎も無事だ。
臣級は今の攻撃で異粒子エネルギーを消費し、循環の態勢に入っていた。
硬直状態。
俺は走り出し、距離を詰める。
臣級を葬る最後の異能の発動タイミングをここに決める。
「これで終わらせる!」
おそらく何かしらの異能が働いているのか、それともただ単に圧倒的な力の差が開いているだけなのか。
どちらだったとしても対処のしようがない相手だ。
未来視ではこの戦いの結末は分からない。
未来視は時代の流れを大局的に把握するものでしかなく、局所的なビジョンを具体的に観察する事は出来ないからだ。
世界が滅亡するシナリオなんかはとても見やすい。
俺たちの時代に起こりえた破滅は神級の転移だった。
だが花梨ちゃんの虚層塔エネルギーの放出によって支配層召喚を弱めた未来線が選べられた。
臣級を倒す事で俺の望む未来は実現される。
俺と並走している古雅崎は、先行する形で攻撃に転じた。
霊樹を地面に叩き込み、そのエネルギー衝撃でさらなる高速状態で臣級異性物へ迫る。
周囲にいる下級異生物を散らしながら。
異粒子結晶を備えた霊樹の力が放たれていく。
対して臣級側も迎撃に入る。
ヤツ周囲に蒼色のゆらぎが生まれ出す。
そのゆらめきは目の前で集約されていき、密度を高めたのちにこちらへ放たれた。
先ほどの光攻撃とは違う、今度は局所的な高熱攻撃。
この色、ホークスのビジョンで見た事がある・・・・
「古雅崎! これは異界の炎だ!」
直ぐ様古ヶ崎は対処へと転じた。
「雅流変性術 『朱紅霊葬炎・異粒子延焼』!」
!!??
目の前でとんでもない事が起きた。
なんだ?その技は。
臣級から放たれた炎は未来視でみたひとつの結末、世界の焼却ルートの要因となった異界の蒼炎だったのだ。
世界を焼き尽くす程に消える事のない絶望の炎・・・・。
だがその規格外な炎を、なんと雅ヶ崎が放つさらに見たことがない炎がそれを巻き取り、そしてそれを濁色に混合させて臣級に返したのだ。
「ゴ・・・・ゴオオォ・・・・オオオ!!」
腹の底にまで響いてくる重低音が臣級の声として響いてきた。
効いている・・・・!
俺どころかヤツにとっても全く未知の技だったのだろう。
いやいや、というか複合的にいろんな事が今の一瞬で起きていた気がするぞ。
「おい、お前いま何したんだ?」
「霊界の炎を起こした。霊樹の一部を媒体に燃焼させる事で朱の紅き炎を生む幽子燃焼を呼び起こす変性術よ」
「・・・・それだけじゃないだろ」
「結晶から出る異粒子エネルギーを霊炎の投下燃料にして延焼させてみたの」
コイツ、高質細胞持ちでもないのにさっそく結晶を使いこなしてやがるんだな。
エネルギーは常時出っ放しみたいだからおそらく花凜ちゃんの手によって自動放出させているのだろうが。
「・・・・それで?」
「ええ、朱色だった炎は形態を変えて紫炎になったわ。おそらく霊炎と異粒子エネルギーの化合反応ね。そして臣級の異界炎を巻き取ったみたい」
「異粒子燃焼した霊界の炎が、異界の炎と結合して濁色炎になったワケか?」
世界初どころか全次元において初な事象が2~3個ほど同時に目の前で起きていたようだ。
こんなの観測しようがない事なので混乱した頭を落ち着かせるために、複雑に思考しようとする頭をシンプルにさせた。
「古雅崎はよくわからない事をして臣級の技を跳ね返した」
「そうね、私も詳しい事に興味はないわ。ヤツを倒せる手段を探りましょう」
「手ごたえがなかったのか?」
「効いているとは思うのだけど・・・・まだ底が知れない」
臣級は未だに濁色の炎に包まれ苦しんでいる。
だがもがいている程ではなく、次の攻撃に移ろうとする位に耐えられている様子だった。
「雅流奥義 『幽子継滅』斥力放射」
またしても古雅崎はサラっととんでもない技を発動した。
臣級はついに初めて避ける行動を取った。
その巨体は大きいが動きが鈍い事はなく、古雅崎に二手目を大きくかわした。
ちなみに幽子継滅は、リガントレス戦で行われた、魂を輪廻ごと消し去る奥義の簡易版だ。
おそらくそれを異粒子結晶で増強したのは当然だが、指向性を持たない筈の幽子消滅分子を異能の斥力による位置エネルギーによって前に撃ち出していた。
A級の異能を再現したのだ。
俺の血の中にある異能細胞すらも手中にした芸当・・・・。
「奥義も異能も簡易的な使い方しか私には出来ないけど・・・・組み合わせる事で戦いようはあるわね」
「その組み合わせはすでに本家を凌駕する新奥義となっていないか・・・・?」
事実、古雅崎の天才的な技術によって臣級の討伐手段がいくつも発明されている。
だがそれにも限界があった。
手にした霊樹薙木刀を見つめているが、そこに刻まれていたヒビはさらに深さと広がりを持って、消耗の激しさを表している。
「あと二発・・・・いえ、もしかしたら次で最後かもしれないわ」
残念ながら万能そうに思えたこの力には手数が限られていた。
古雅崎も異粒子結晶の負担がこれほどまでとは思えなかったのだろう。
異粒子変性術がなければ攻撃どころか臣級の技の防御すら成立しない現状であったのだが。
次の一手で確実に決着をつけられる戦略を取るべきか。
俺は深呼吸をして、・・・・そして覚悟を決める。
もう後先を考えずに確実な攻撃だけに特化していくしかない。
「俺が技をしかける。お前の最後の手は・・・・その後のためにとっておいてくれ」
臣級が技を放とうとしてくる。
やばい!・・・・最初に撃ち出した、不可視光線だ。
おそらく紫外線のような波長を持つ化学線を扱った技だろう。
異界の光・・・・細胞の欠乏症や変異を引き起こすのだろうが、地球に存在する高濃度放射線のように防御のしようがない。
古雅崎がこちらを向いてニコリと笑う。
「私の顔が酷い事になっても・・・・私の事をこれからもちゃんと見てくれるかしら」
攻撃の一手のために古雅崎もこの技に対する防御を捨てようとしていた。
それは女の尊厳を捨てる事を意味する。
だがその顔に悲しみの表情などは一切感じられなかった。
女性にとってはとてつもない覚悟を持った決断であるなのに。
俺はそれに対して真っ当な返答が思いつかない。
こんな俺のために全てを捨ててくれる人を・・・・こんな俺に出来る事があるのならなんでもしてやりたい。
俺は古雅崎の前に立ち、せめて少しでも・・・・彼女に向かう化学線の影響を俺の体で受け止めようとした。
「古雅崎・・・・!」
もしかしたらガンマ線のように透過率の高いものかもしれない。
俺の体を通過してなお、古雅崎の体を被爆させるかもしれない。
けれど古雅崎の白く美しく、日の光を綺麗に反射させていた姿を思い出し、俺はたった少しだけでもそれを残してあげたいと願った。
「俺の後ろに・・・・!」
「あなたをずっと守るつもりだけど、今だけは・・・・あなたの気持ちがとても嬉しいわ」
取り返しのつかない大ダメージを覚悟した。
・・・・・・。
高熱が来る筈だったが、俺達のまわりを朧気にゆらぐ大気が包みこんだ。
空間にひずみが発生している。
届いてくる筈の不可視光線が俺達の周囲だけ衰えていた。
どこかからか声がする。
「私の異能は光を歪ませる能力だ。この技に対しては圧倒的に優位に立てるようだな」
白いスーツの男が横に立っていた。
博賀であった。
俺の前で姿を朧気にし、技をかわしたり姿を消し去ったりした異能だ。
「おまえ、助けてくれたのか?」
「私の目的は古から継がれた預言者の言葉を歴史の事実として刻み実証すること。メシュアは誕生し、それは今日真実となった。そしてその瞬間を・・・・私はそれを目にすることができた」
その声は震えながら、けれど満ち足りたような言葉であった。
香音ではなく花凛ちゃんがメシュアとして真に誕生したからだろう。
「貴様には感謝してるよ。予言を真実にした立役者だ]
「お前のためじゃないが、この防御は俺の大切なものを守ってくれた。礼を言うよ」
「ここから先の未来の予言もある。我々にとって正しき流れへと真実化する事を望むよ。悠希遥架・・・・これから私は朧気にお前を監視させてもらおう」
そう言って博賀は姿を消していった。
この場から去り気配は完全に消えている。
俺たちは無傷で臣級の特大攻撃をやり過ごす事ができた。
古雅崎も無事だ。
臣級は今の攻撃で異粒子エネルギーを消費し、循環の態勢に入っていた。
硬直状態。
俺は走り出し、距離を詰める。
臣級を葬る最後の異能の発動タイミングをここに決める。
「これで終わらせる!」
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