地球は異世界に侵されました ~黄昏れた世界で見つけた大切な場所

七梨黒狐

文字の大きさ
上 下
37 / 45
第6幕 世界の優先順位

37 カケラの共鳴

しおりを挟む
 すかさずハンドガンを取り出して構えた。

 それよりも早くミハイルは手の平をこちらに向けてくる。
 俺のベアリングボールを受け止めたその掌から銃口らしき穴が開いた。

 ヤバい・・・・機械式の義手か!?

 装備のの悪さを察して、数発の牽制射撃を撃ったのみ、すぐに回避行動に移行する。
 予測通り、俺の発砲はミハイルの腕に当たっても大したダメージを与えれていないようだった。

 対して、ミハイルから返ってきたのは機銃の如き連射弾。

 咄嗟に加速意識を展開した俺は、数えきれない程の実弾を目にする。

 身体強化もブーストしてその銃弾の雨を交わした。

 まだ獲得していないリガントレスの【衝撃無効】は消耗が激しいため、身体強化と【ブーストトリガー】で避ける事に徹した。

 その場で避けきる事は難しいので後ろに下がりつつ、距離を取りながら避けきっていく。

「素晴らしい! この銃弾を避けられるとは、適合者というのは本当に優秀な兵士と成りうるのダナ」

 ミハイルは俺の動きを称賛するが、さらにその限界域を試そうと、周囲にいるギアーズ兵にまでライフル斉射を合図した。
 俺の周辺にはさらに数を増した銃弾が縦横無尽に飛び交い出す。

 こんなの避けきれるわけない、というくらいに密集した弾群。

『球形衝撃波』スフィリカルソニックウエィブ!!

 銃弾も兵士達も根こそぎ吹き飛ばすつもりで斥力異能を発動した。
 周囲の地面は俺を中心にしてひっくり返りながら異能の攻撃は全てを巻き込んでいった。

 全方位に及んだ力は配備されていた兵士へダメージを与える。
 だが博賀は異能によって朧化おぼろかし衝撃波を通り抜け、ミハイルに至っては正面から受けきったにも関わらず平然と立っていた。

「化け物かよ・・・・」
「S級適合者から化け物扱いとは光栄ダヨ」

 ミハイルの服は破れ、そこから見えるものは肌ではなく、機械質感ばかりが体の表面積を占めていた。
 まるで歩く重装車。

 博賀の異能も正体がわからないので厄介な存在であり、仕組みを探る手立てもない。
 斎藤達からの進軍が間に合えば包囲網が作れるが。

 それまで耐えるには、未来で得る未取得の異能をここで使うべきなのだろう。
 だが認識できていない異能は使えず、ここを打破できるようなものはまだ考えついていない。

 俺は握っていたエレメンタルアーツの欠片を覗く。

 この異粒子結晶を使った、極大衝撃波を放つのが最適解だろうか。
 果たしてこの二人に対しどこまで効果があるかはわからないが・・・・。

 すると状況は一変した。

「どうやら始まったようダナ」

 空気が震え出した。
 振り返ってみると虚層塔が光を放ち出している。

 数Km先にある巨大な黒い構造物。
 俺たちの予測したこの日、この瞬間、日本で二回目の終末大転移がついに始まった。

 発動時特有の物理現象の変異、それによってミハイル達の銃器は機能しなくなっており、火薬弾丸から特殊弾丸に装備を換装している。

 警視庁特殊部隊が装備していたものと同じ様な弾をギアーズ重工は当然開発していた。
 この隙をつくのは当然の戦略だった。

 だが俺はもうひとつ・・・・自分の手のひらに異変が起きている事に気付き、意識を向ける。

 持っていたエレメンタルアーツの破片が共鳴していた。

 さらに意識を破片に集中していくと、高濃度の異粒子が遠方に感じ取ることが出来た。

 (この高濃度は・・・・エレメンタルアーツだ!)

 俺は電子機械が使えなくなる最後のタイミングで、無線を接続し最後の通信を送った。

「古ヶ崎!虚層塔から北西・・・・10時方向2kmのポイントだ!」

「ガガ‥‥聞こえたわ‥‥すぐ‥‥‥ブツッ」

 ギリギリの所で座標を伝えられた。

「まだ援軍がいたか。だがそこに配備しているのはDIACではないぞ。だれが相手か知らんがギアーズの真の適合者達の力をそこで思い知るがいい!」

「雅はこちらの中でもとっておきのカードだ。対適合者戦で遅れを取ることはない。教主のいるその場所が勝負をつけるポイントだとして温存していたんだ」

 この発言に博賀が怒りの顔を向けきていた。
 アーツと教主を隠していた場所が判明してしまったことで冷静さを欠いている様子だ。

「貴様、なぜ場所が分かった?」

「エレメンタルアーツがあんな離れた場所にあって幹部共がここにいたってことは、お前達は陽動役だったんだろうな。
だがこの場でアーツの場所を認識出来た以上、この離れた布陣は俺にとって有利な状況となるワケだ」

「ここからお前を逃がしはしないぞ」

俺はアーツの欠片の力を引き出す共鳴を始めた。

「それは・・・・エレメンタルアーツの欠片か! まさかテレキネイサーの所有していたもの?」

 通常の適合者でのエレメンタルアーツアーツ共鳴では異粒子エネルギー暴走により臨界突破暴発を引き起こす。
 新宿虚層塔実験でギアーズが引き起こした事故がそれだ。

 キクチカズマは俺達との闘いで異粒子切れを起こし、その際の切り札として欠片の暴発を利用し、そして消滅させた。

 だが俺は異世界の適合因子を持っている事で、ホークスから渡されたこの欠片から力を引き出す事ができる。

 異粒子結晶解放『極大衝撃波』!!

 共鳴させたアーツの欠片から高濃度異粒子エネルギーが分泌され、体のマギオソーム細胞がこれを吸収し大量のエネルギー結合を始める。

「ぐごおおあおおああああ!」

 テレキネイサー最強の技だ。
 これにはミハイルも耐えきれず、ついにその体躯を吹き飛ばすまでに至れた。

 しかし博賀はまたしても朧化して衝撃波をかわす。
 そしてその実体の捉えきれない姿は俺を囲うように広がっていき、俺を異能で捕らえようとしてきた。

「貴様だけはここに縛り付ける。メシュアの元へは辿りつけさせん!」

 朧化おぼろかしていてその表情を捉える事は出来なかったが、かなり必死であることは察っする事が出来た。

「悪いが・・・・俺も必死なんだよ!」

『黒豹跳躍』

 博賀は俺の周囲を囲おうとしていたようだが、上空のケアはしていなかった。

 新宿大転移の時に討伐した二級異生物から取得した空中跳躍を持つ異生物の異能。

 空中を駆ける能力によって上部からこの捕縛を抜け出し、そして・・・・

 異粒子結晶解放『身体強化』!!

 再びアーツの力を利用し、異粒子エネルギーを補充。
 教主のいるポイントに向かって高速移動を行いこの場を切り抜けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...