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第5幕 命を賭して
29 テレキネイサーとの交戦
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DIACの二人の異能持ち適合者に向かって走り詰めた。
斉藤の掌底から回復したテレキネイサーの男は立ち上がり、隣の女適合者に目配せをした。
女は男の前に立ち、両手を広げる動作をする。
俺は軽く体が引き寄せられていく感覚を覚えた。
そして明らかに空気の質が変わっている事が分かった。
間違いない、女が引力側の念動力の異能で異粒子を呼び寄せている。
男の異粒子エネルギーが急速に補充され、許容量最大の状態で繰り返し衝撃波を放てる仕掛けだ。
密度が高まる事で光の粒として目視出来る異粒子は、渦を巻きながら二人のテレキネイサーのもとへと引き寄せられていく。
男が右手をこちらに向けて衝撃波を放つ直前、
俺は守りの一切を捨てた身体強化を展開した。
「身体強化・ザブースト!!」
マギオソーム細胞適合者の身体強化よりもさらに速い動きを生み出し俺はテレキネイサー二人の反対方向まで一瞬でまわり込む。
だがテレキネイサーの男は右手だけではなく左手までも挙げた。
その左掌をこちらに向けてくる・・・。
両手を使った全方位型の、衝撃波だ!
加速された視界の中で、俺は衝撃波の様子をハッキリと視認した。
異能である斥力により空気分子が外側へ圧縮され、空気は高密度となって高温をまとう。
さらに範囲は広がり加速されていくと、そのスピードはついに音速の壁を超え轟音を生み出す。
大気自体が造波抵抗を作り、立ち塞がるあらゆる物体は形を留められない程の熱量と力が作用されていく。
数ある異能の中でも恐らく最も強度の高い能力のひとつだろう。
だが技の発生地点は腕から先。
仲間の女を自分の懐に潜り込ませて対象から外し、
衝撃波の放射範囲を全方位へ向けられる球体状にして放つ。
斉藤譲治の予測通りである。
近接の間合いにおいて攻撃が弾かれる事はない。
勝機はそこにある、だがそこに俺は辿りつけられなかった。
すぐさまにリガントレスアーマーに異粒子エネルギーを流し込み、頭部を腕で覆う構えで衝撃に耐えた。
白かったジャケットは、まだらに黒味を広げる。
そして・・・・正面から突進しようとしていた斎藤は耐える術もなく、 体中から血を噴き出して走りの勢いを止めてしまっていた。
ダメだ。二人になろうが関係なかった。
全方位衝撃波の前では包囲戦は意味をなさない。
そしてテレキネイサーの女は再び両手を広げる。
男へ次弾を装填するための異粒子を集め始めた。
まるで無尽蔵な永久機関だ。
充填までのインターバルに必要な時間はわからないが、これまでの連射に長い時間は要していなかった。
これほどまでの異粒子量をそんな短時間で吸収できるものではない。
テレキネイサーの男は異能そのものよりも、異粒子の吸収スピードこそが脅威だ。
手の打ちようがない、異粒子濃度の高い虚層塔近域においては崩しようがない完璧なフォーメーションだ。
俺のリガントレススーツはすでに真っ黒に染まり切っていてもおかしくない状態にまで来ている。
だが今俺に出来る事は、このインターバルの間に距離を詰めて次弾が放たれる前に打ち倒すことだ。
足場のコンクリートごとひっくり返されていた俺はすぐさま態勢を前へ戻し、自己の持つ最速の手段で飛び込む。
だがテレキネイサーの女は、斎藤から奪い取ったハンドガンを俺に向けて連射した。
直線に進もうとしていた俺は横移動を余儀なくさせられる。
インターバルが削られた・・・・。
血だらけの斎藤はそれでもその足を前に踏み出して進みを止めずにいた。
だが・・・・あの様子ではもう攻撃に転じられない・・・・。
スポット型よりも全球型の方が威力が弱い事に気付いたのだろう。
二手からの進撃を成立させ続けて、意識と威力を分散させるつもりだ。
テレキネイサーの充填の完了が徐々に近づいていく。
「オマエ達はこれで終わりだ!!!」
最大許容量の衝撃波が来てしまう。
その瞬間、テレキネイサーに集まっていた筈の異粒子の様子が変わった。
集まっていた大量の光子がその姿を消す。
事態の変異にテレキネイサーは驚きを見せた。
二人の周りを囲むように突如風が巻き上がり、異粒子が人為的に霧散されていく現象が起きたのだ。
『雅流変性 迷虚風帰衝』
「誰だ!」
テレキネイサーは天敵を見つめるような目でその人間を睨んだ。
「キサマ・・・気術師か・・・!」
遠方から歩いてきたのは白い装束に黒い薙刀を構えた女性・・・
「古雅崎!!」
「遅れてごめんなさい。あなたを守るという使命、これより執行するわ」
雅家は大気そのものを変性させる術を持っている。
粒子を特殊引力でコントロールしようとする念動力者に対して効率の差がそこにはあった。
世界が異界化するよりもずっと昔から超常現象の中に身をおいていた一族の末裔だ。
俺たち異粒子適合者と対をなす存在としてテレキネイサーへと迫った。
『異粒子《マギア》結合霊樹変性』
禍々しい黒血色に染まったマギオソーム細胞適合霊樹刀を振りあげ、エネルギーの増大した変性術を繰り出した。
今の彼女は古来の伝統術に加え、異世界のエネルギーすらも自らの力として取り込むに至った。
その威力は豪風のレベルにまで達し、人体を浮かせる程に強まる。
「濃度がとても濃いから目でよく見えるわ。異粒子は大気よりも質量が軽く地面へと貯まる事が少ない。上昇気流で一度散らしてしまえばあなたに異粒子の急速な補填はない。もう撃てる数は限られるわね」
引力で異粒子を集めていた女テレキネイサーはそれでも引き寄せようとしている。
しかし、適合血液によって異粒子結合した霊樹武器による大気変性術は、サポートに特化する異能すらも凌駕するまでに至っていた。
これは古雅崎 名鶴が適合者に対する、決定的な攻略手段に辿り着いた事を意味していた。
斉藤の掌底から回復したテレキネイサーの男は立ち上がり、隣の女適合者に目配せをした。
女は男の前に立ち、両手を広げる動作をする。
俺は軽く体が引き寄せられていく感覚を覚えた。
そして明らかに空気の質が変わっている事が分かった。
間違いない、女が引力側の念動力の異能で異粒子を呼び寄せている。
男の異粒子エネルギーが急速に補充され、許容量最大の状態で繰り返し衝撃波を放てる仕掛けだ。
密度が高まる事で光の粒として目視出来る異粒子は、渦を巻きながら二人のテレキネイサーのもとへと引き寄せられていく。
男が右手をこちらに向けて衝撃波を放つ直前、
俺は守りの一切を捨てた身体強化を展開した。
「身体強化・ザブースト!!」
マギオソーム細胞適合者の身体強化よりもさらに速い動きを生み出し俺はテレキネイサー二人の反対方向まで一瞬でまわり込む。
だがテレキネイサーの男は右手だけではなく左手までも挙げた。
その左掌をこちらに向けてくる・・・。
両手を使った全方位型の、衝撃波だ!
加速された視界の中で、俺は衝撃波の様子をハッキリと視認した。
異能である斥力により空気分子が外側へ圧縮され、空気は高密度となって高温をまとう。
さらに範囲は広がり加速されていくと、そのスピードはついに音速の壁を超え轟音を生み出す。
大気自体が造波抵抗を作り、立ち塞がるあらゆる物体は形を留められない程の熱量と力が作用されていく。
数ある異能の中でも恐らく最も強度の高い能力のひとつだろう。
だが技の発生地点は腕から先。
仲間の女を自分の懐に潜り込ませて対象から外し、
衝撃波の放射範囲を全方位へ向けられる球体状にして放つ。
斉藤譲治の予測通りである。
近接の間合いにおいて攻撃が弾かれる事はない。
勝機はそこにある、だがそこに俺は辿りつけられなかった。
すぐさまにリガントレスアーマーに異粒子エネルギーを流し込み、頭部を腕で覆う構えで衝撃に耐えた。
白かったジャケットは、まだらに黒味を広げる。
そして・・・・正面から突進しようとしていた斎藤は耐える術もなく、 体中から血を噴き出して走りの勢いを止めてしまっていた。
ダメだ。二人になろうが関係なかった。
全方位衝撃波の前では包囲戦は意味をなさない。
そしてテレキネイサーの女は再び両手を広げる。
男へ次弾を装填するための異粒子を集め始めた。
まるで無尽蔵な永久機関だ。
充填までのインターバルに必要な時間はわからないが、これまでの連射に長い時間は要していなかった。
これほどまでの異粒子量をそんな短時間で吸収できるものではない。
テレキネイサーの男は異能そのものよりも、異粒子の吸収スピードこそが脅威だ。
手の打ちようがない、異粒子濃度の高い虚層塔近域においては崩しようがない完璧なフォーメーションだ。
俺のリガントレススーツはすでに真っ黒に染まり切っていてもおかしくない状態にまで来ている。
だが今俺に出来る事は、このインターバルの間に距離を詰めて次弾が放たれる前に打ち倒すことだ。
足場のコンクリートごとひっくり返されていた俺はすぐさま態勢を前へ戻し、自己の持つ最速の手段で飛び込む。
だがテレキネイサーの女は、斎藤から奪い取ったハンドガンを俺に向けて連射した。
直線に進もうとしていた俺は横移動を余儀なくさせられる。
インターバルが削られた・・・・。
血だらけの斎藤はそれでもその足を前に踏み出して進みを止めずにいた。
だが・・・・あの様子ではもう攻撃に転じられない・・・・。
スポット型よりも全球型の方が威力が弱い事に気付いたのだろう。
二手からの進撃を成立させ続けて、意識と威力を分散させるつもりだ。
テレキネイサーの充填の完了が徐々に近づいていく。
「オマエ達はこれで終わりだ!!!」
最大許容量の衝撃波が来てしまう。
その瞬間、テレキネイサーに集まっていた筈の異粒子の様子が変わった。
集まっていた大量の光子がその姿を消す。
事態の変異にテレキネイサーは驚きを見せた。
二人の周りを囲むように突如風が巻き上がり、異粒子が人為的に霧散されていく現象が起きたのだ。
『雅流変性 迷虚風帰衝』
「誰だ!」
テレキネイサーは天敵を見つめるような目でその人間を睨んだ。
「キサマ・・・気術師か・・・!」
遠方から歩いてきたのは白い装束に黒い薙刀を構えた女性・・・
「古雅崎!!」
「遅れてごめんなさい。あなたを守るという使命、これより執行するわ」
雅家は大気そのものを変性させる術を持っている。
粒子を特殊引力でコントロールしようとする念動力者に対して効率の差がそこにはあった。
世界が異界化するよりもずっと昔から超常現象の中に身をおいていた一族の末裔だ。
俺たち異粒子適合者と対をなす存在としてテレキネイサーへと迫った。
『異粒子《マギア》結合霊樹変性』
禍々しい黒血色に染まったマギオソーム細胞適合霊樹刀を振りあげ、エネルギーの増大した変性術を繰り出した。
今の彼女は古来の伝統術に加え、異世界のエネルギーすらも自らの力として取り込むに至った。
その威力は豪風のレベルにまで達し、人体を浮かせる程に強まる。
「濃度がとても濃いから目でよく見えるわ。異粒子は大気よりも質量が軽く地面へと貯まる事が少ない。上昇気流で一度散らしてしまえばあなたに異粒子の急速な補填はない。もう撃てる数は限られるわね」
引力で異粒子を集めていた女テレキネイサーはそれでも引き寄せようとしている。
しかし、適合血液によって異粒子結合した霊樹武器による大気変性術は、サポートに特化する異能すらも凌駕するまでに至っていた。
これは古雅崎 名鶴が適合者に対する、決定的な攻略手段に辿り着いた事を意味していた。
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