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第4幕 都心戦線
20 警視庁来訪
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お茶の間の壁際にはズラっと20人ほどスーツ姿の刑事が並んでいた。
ちゃぶ台には俺と重役二名の三人だけが対面して座り、あとは全員立っていた。
松本警視監と染井警視。
見るからに高級なスーツである。
踊る刑事ドラマなんかで、しかめっ面していたあの人が確かこの役職だったな。
一般人の俺からしたらどちらもとんでもない立場の人間だ。
周りの立っている人は部下なのだろう。
地球が異界化してもこういうのは変わらないんだな。
とりあえずこの緊張感に俺の手元にあるお茶は既に底が見えていた。
「あの・・・・周りの刑事の皆さんは出払ってもらっていいですか?
ここ彼女達の家なので怖がらせたくないんです。
っていうか俺も落ち着けませんのでお願いします」
すると松本警視監(偉い方) が不思議がった顔をした。
「ここは君の家ではないのか?」
年は50代の初老だろうが体格がガッシリしているので威圧感がある。
そして一歩後ろに座っている染井警視に問いかけた。
「おい、なぜこの場所にしたのだ?」
「彼が日中に居る場所は理工学研究所の機密部であるため接点が持てません。
ここは毎日立ち寄っている家でしたので我々の勤務時間の中ではここが確実なポイントでした」
染井警視の方は30代の細身で眼鏡をかけている。
秀才タイプに見えるが、こんな待ち伏せなんかせず俺に直接電話ひとつすりゃいいだろうに。
まあ約束破って逃げるのを見越したんだろうな。
策士タイプか?
ため息をひとつつき、俺は話を始める前の事前確認をした。
「もしこれからの会話が機密事項に関わる事なら場所を変えさせてもらいます。
彼女達の事を巻き込みたくないので」
すると松本警視監があごを触りながら台所にいる結奈さんと花凛ちゃんを横目で見た。
「ふむ、まあこんな所ならばトーラスのやつらが嗅ぎつけても揉み消せれるだろうな」
そして部屋を一周見渡したあとは俺に視線を戻した。
見下してくるような目を細めた眼差し。
なんだ、何を考えている?
「もし、この人たちに危険が及ぶことになるならば・・・・
タダじゃ済まさないぞ!」
俺の体は強張り、異粒子エネルギーが部屋全体を威圧した。
バッと刑事たちが身構える。
俺を取り押さえる事がお前達にできるか試すか?
脅しが必要というなら身を持って教えてやるよ。
「安心しろ。これから話す事は近く公開する情報ばかりだ。
少し早く耳に届くくらいは私の権限で問題にすらならん、お前たちも落ち着け」
俺の圧になんら怯む事なく松本警視監はまわりにいる刑事達に向かって目配せする。
それを見た刑事達は力を抜き、ゾロゾロと外へ去っていった。
部屋がスッキリとした。
花凛ちゃんもホっとしたようだ。
冷蔵庫に手を伸ばしはじめてる。
染井警視がちゃぶ台へ近づき俺に向かって話しを始めた。
「そういえば異生物の発現分布率についてだけど、キミの解析表を見せてもらったよ。
とても良く分析できてるね。
異生物の発生時期と場所をかなり詳細に予見できていたから驚いたよ」
俺はエヴァの所属するトーラス理工研で日本と世界の被害情報を集めていた。
その場所と日付の詳細を統計していくと異生物の発現にひとつの法則性を見出したからだ。
「これまでの情報をもとにした只の統計学ですよ。
こういった解析はむしろ警察の方が専門ですよね」
「もちろんだよ。それでも君はいくつも的中させていたようだね。
トーラス理研から警視庁の専門部に解析結果を情報提供してもらった物を見て君と話をしようと思ったワケだよ」
提供?
研究室の人たちは強奪されたって嘆いてたぞ?
こちらのしかめっ面を気にせず染井警視は続けた。
「うちの情報部が各大学の教授と共同分析した結果と誤差はあるものの、君たちは我々と同じ結論に至っていたようだったのでね。
【虚層黒積直方体】、これが異性物転移の発生システムだという結果だね。我々と共通の結論だ」
異世界からの巨大構造物、『虚層黒積直方体』、
通称虚層塔。
高層ビルに相当した大きさを持つ巨大な黒い物体は、あのブラッドマンデーの日に世界の主要都市に出現した。
そこに佇むだけでなんの被害も起こさない建造物に思われていた。
しかし都市部に異生物被害が集中している原因が虚層塔が異生物の転移装置として半径50kmに転送しているのではないか、
という仮説なのである。
「各国の政府でもそれが認められはじめている。
けれどね、どうも君の解析だけ計算が合わないんだよ」
思い当たるフシはある。
それは出現頻度と分布率の統計学に俺の勘を係数に入れているからだろうな。
もともとこちらは各国政府と繋がってないので警察とはその情報量に差がある。
だから俺がこの数週間で直接見てきた異生物の傾向を入れ込んでいた。
不一致になってしまうのは当然だ。
それに俺の目的はこの八幡宮町に出現する確率に特化したものであってグローバルのことは二の次・・・・
局所的な精度に限ってはこちらの方が上まるのだろう。
ただそれでも各地の傾向で無視できないことがある。
「俺が調べたかったのは八幡宮に一体でもたどり着いてしまう可能性のある【小転移】の発現分布情報でした。
ですが各国で大きな被害を出している、【大転移】の周期についても・・・・
東京到達日に絞って調べてはいました」
虚層塔は通常数週間に5~10体を日本の各箇所に分散して転移させている。
だが【大転移】というものは数十~数百体に及ぶ異生物が一ヶ所で大量発現するのだ。
幸いにも日本ではまだ起きていない。
金土日曜のどれかに必ず世界のどこかで起きている事からブラックウィークエンドと呼称されている。
その中でも俺の研究対象はやはり近場のポイント、新宿虚層塔だ。
染井警視が続ける。
「我々もそれを最優先事項として情報収集している。
各国で起きた終末大転移の分布傾向をAIの深層学習でも解析した」
「それで急遽観咲家に来たという事はやはり新宿虚層塔での発現日が近いんですね?」
「AIによるパターン解析の結果はここにある。
四週間後の三日間の間に60%台。
次に高いのは五週間後の金土に70%台で大転移が起きる試算だ」
一ヶ月も先だと?
いやまて・・・・
「それ以外の可能性は?特にここ一週間以内の」
「ここしばらくは18%前後が続くよ」
「では警察でその間の対策はどうするんですか?」
「我々の対策はあくまで住民の避難整備だ。
その事態に備えて移動先やルートの整理を進めている」
「出来るだけ急いでください。・・・・なるべく早く!」
「焦るな。こういう事には周到な準備が必要だ。まだ猶予はある」
「その猶予って予測ですよね。
しかも天気予報よりも精度が低いものですよ」
「どうした、やけに急ぐのは理由があるのか?」
俺の推測とあんたらとでズレがあるからだよ。
と素直には言えないな。
「・・・・今日、俺はピンポイントで転移先を的中してきました。この家の人を守るために。
精度が高いのはこの街を起点にして、日本近辺のアジア国に絞ったサンプルで解析をしていたからです」
「我々とは真逆の局所アプローチか」
「はい、グローバル視点では、政府レベルでも情報が届いて来ない中東やアフリカ地域からのサンプル数が足りず誤差が広がると考えています。
そして今日の俺の予測がもし当たった場合に、俺の計算式で辿り着く結論がひとつありました」
俺は観咲姉妹を見つめた。
花凜ちゃんの方は少しボーっとしてる。中学生には難しい話だったかもしれない。
ユナさんは妹がつい先程異生物に襲われていた事実に驚いていた。
けどこれは今日ふたりに伝えるつもりの言葉でもあった。
「警察の解析結果は違います。
ブラックウィークエンドは今週に起こります」
「くだらん!高校生の計算を有識者の集まりが出した結論と比較するまでもないだろう」
松本警視監は耳を傾けてくれないようだ、説得はムリか?
彼女達を郊外へ逃がすだけなら別に気にしないが、
いやこの家や街を守るには・・・・。
俺は小声で呟いた。
(エヴァ出て来い!)
・・・・。
来ない。
いないのか?
自分でなんとかしろってことか?
松本警視監が続けた。
「私は君と討論をしにここに来たワケではない。
君には守るべきものがあるのだろう?
我々は民間の協力を受け入れる態勢がある」
ここで本題か・・・・俺を抱え込もうという勧誘か?
「私達の話したい事を君はすでに察しているようだけど。
今日ここに来たのは他でもない、異粒子適合者である君の協力を得たいんだ」
「俺個人で出来る事は異生物1匹を相手に出来る位です。
組織に属するにはむしろ異端にしかならない筈なのに、なぜですか?」
染井警視は懐から数枚の写真をちゃぶ台の上に広げた。
「これは30日前のロシア・・・・モスクワの写真だ」
おそらく大転移が起きたあとの記録写真・・・・。
そこには無残に散った人間の遺体、蹂躙された街の様子が写し出されていた。
彼女らには見せられないな。
ネットにも出回っていないものだ。
悲惨という言葉しか浮かばない。
「大災害に向けての対策は進める。
不測の事態に向けて異性物の専門家を増やしたいんだ。
特に君にはパイプ役も担ってもらいたくてね」
「虚層塔の破壊計画は実現しないのですか?」
「他国の結果を待っていた。
ちょうど1週間前、米国軍がワシンドンにある虚層塔に実験を行った。
弾道ミサイルでも傷ひとつ付かなかったという報告だ」
は?傷ひとつも?
「現在は米国最強の破壊兵器が準備されている」
まさか・・・・ワシントンで・・・・水爆を?
染井警視が口をはさんだ。
「警視監、それ以上は・・・・」
米国の事だ・・・・実験爆撃をたぶん他国で行うのだろう。
世界情勢が相当おかしくなっていることが予想できる展開だ。
「現状、破壊不能だというのはわかりました。
では東京終末転移の国の具体的対策は?」
「軍が周囲の各ビル群に狙撃隊を配備、各道路に戦車、東京湾には母艦を入れて戦闘機から弾道ミサイル準備も整える。
我々警察は都民への避難誘導を行う」
「警察は戦わないんですね」
「直接の交戦はない。
野生のヒグマであっても我々には発砲に際して手順、規定が必要だ。
その生物が希少種と認定されればワシントン条約により保護する立場にもなる」
「意味がわかりません。異生物ですよ?」
「それが服務規程なんだよ」
「警察は犯罪を犯した者を逮捕して司法に委ねる組織だ。
害獣駆除は管轄ではないというだけだ」
だから民間人でも俺のようなヤツが必要だということか。
「人の命がかかってるんですよね」
「あくまで災害対策だ。
それこそ実際に危機的状況になるまで私たちは人命救助のための交戦準備に動く事はない」
女性のストーカー対策ですら被害を立証しないと巡回くらいしかしてくれないらしいからな。
だんだんムカついてきた。
「なぜ規定を見直さない?あんたらなんのために偉くなったんだよ!」
声を張ってしまい台所にいた花凛ちゃんが驚いていた。
「遥架くん?」
これが日本の旧態依然とした体制か。
これじゃあ誰も守れない。
「雅が討伐した生きたギガントレス・・・・
あれを権力かざして奪おうとしてたんですよね?
研究するつもりはなかったんですか?」
「営利目的の研究所と一緒にするな。
あれは警察が異生物対策に本格的に乗り出すためではない。
害獣を国が管理するのは当然だ。他国からの略奪も可能性があった」
「結果的に引き渡した筈だよ。最機密物として扱ってもらう条件でね」
その実態は国が現代科学から外れた存在を不明生物と定義づけるだけの結果に終わっており、それを見かねた上での強行交渉だったのだ。
「世界が変わったのに、警察は変わらないんですね」
「変われないのではない。
国の行政組織が気安く変わるわけにはいかないのだ。
警察はお前に想像のつかない規模の責任を担っている」
「だからこそ君のように自由に動ける人間が我々には必要なんだよ。
協力を受け入れてくれるならば隊員への周知と、災害発生時における無線情報網を君に明け渡す」
・・・・。
------------------------------------------------
玄関前で警察ご一行様を送り出す。
「君と話をが出来てよかったよ。
追って使いの者を連絡に寄越す。
詳細についてはそこで」
「区民のための協力に感謝するよ」
俺は半ば諦めながら了承した。
こちらに損がないように見える協力だが、ズブズブと抱え込まれるパターンだろうな。
けど直近の大転移に向けては選り好みする余裕はない。
染井警視が小声で話しかけてくる。
「最後にひとつだけ。
我々も日本の司法の腰の重さには困っているのが正直な所なんだよ」
「松本警視監はそうは見えませんけどね」
「特別異世界災害対策部隊・・・・あれを異例のスピードで編成させたのは松本さんなんだよ」
そう言って彼らは車に乗り込み、観咲家を去っていった。
対策部隊か・・・・あの特殊工作員の如月婦警には助けられたっけな・・・・。
------------------------------------------------
車内
「あれでいいのですか?」
「トーラス連中や君がやけに勧めるから来たまでだ」
「如月隊員の報告を見ればわかります。
適合者は手駒に持つべきです」
「まあ四週間後の結果を見て結論は出す」
--------------------------------------------------------
この二日後の夜、警察庁の予想に反し
終末大転移は突如始まってしまった。
ちゃぶ台には俺と重役二名の三人だけが対面して座り、あとは全員立っていた。
松本警視監と染井警視。
見るからに高級なスーツである。
踊る刑事ドラマなんかで、しかめっ面していたあの人が確かこの役職だったな。
一般人の俺からしたらどちらもとんでもない立場の人間だ。
周りの立っている人は部下なのだろう。
地球が異界化してもこういうのは変わらないんだな。
とりあえずこの緊張感に俺の手元にあるお茶は既に底が見えていた。
「あの・・・・周りの刑事の皆さんは出払ってもらっていいですか?
ここ彼女達の家なので怖がらせたくないんです。
っていうか俺も落ち着けませんのでお願いします」
すると松本警視監(偉い方) が不思議がった顔をした。
「ここは君の家ではないのか?」
年は50代の初老だろうが体格がガッシリしているので威圧感がある。
そして一歩後ろに座っている染井警視に問いかけた。
「おい、なぜこの場所にしたのだ?」
「彼が日中に居る場所は理工学研究所の機密部であるため接点が持てません。
ここは毎日立ち寄っている家でしたので我々の勤務時間の中ではここが確実なポイントでした」
染井警視の方は30代の細身で眼鏡をかけている。
秀才タイプに見えるが、こんな待ち伏せなんかせず俺に直接電話ひとつすりゃいいだろうに。
まあ約束破って逃げるのを見越したんだろうな。
策士タイプか?
ため息をひとつつき、俺は話を始める前の事前確認をした。
「もしこれからの会話が機密事項に関わる事なら場所を変えさせてもらいます。
彼女達の事を巻き込みたくないので」
すると松本警視監があごを触りながら台所にいる結奈さんと花凛ちゃんを横目で見た。
「ふむ、まあこんな所ならばトーラスのやつらが嗅ぎつけても揉み消せれるだろうな」
そして部屋を一周見渡したあとは俺に視線を戻した。
見下してくるような目を細めた眼差し。
なんだ、何を考えている?
「もし、この人たちに危険が及ぶことになるならば・・・・
タダじゃ済まさないぞ!」
俺の体は強張り、異粒子エネルギーが部屋全体を威圧した。
バッと刑事たちが身構える。
俺を取り押さえる事がお前達にできるか試すか?
脅しが必要というなら身を持って教えてやるよ。
「安心しろ。これから話す事は近く公開する情報ばかりだ。
少し早く耳に届くくらいは私の権限で問題にすらならん、お前たちも落ち着け」
俺の圧になんら怯む事なく松本警視監はまわりにいる刑事達に向かって目配せする。
それを見た刑事達は力を抜き、ゾロゾロと外へ去っていった。
部屋がスッキリとした。
花凛ちゃんもホっとしたようだ。
冷蔵庫に手を伸ばしはじめてる。
染井警視がちゃぶ台へ近づき俺に向かって話しを始めた。
「そういえば異生物の発現分布率についてだけど、キミの解析表を見せてもらったよ。
とても良く分析できてるね。
異生物の発生時期と場所をかなり詳細に予見できていたから驚いたよ」
俺はエヴァの所属するトーラス理工研で日本と世界の被害情報を集めていた。
その場所と日付の詳細を統計していくと異生物の発現にひとつの法則性を見出したからだ。
「これまでの情報をもとにした只の統計学ですよ。
こういった解析はむしろ警察の方が専門ですよね」
「もちろんだよ。それでも君はいくつも的中させていたようだね。
トーラス理研から警視庁の専門部に解析結果を情報提供してもらった物を見て君と話をしようと思ったワケだよ」
提供?
研究室の人たちは強奪されたって嘆いてたぞ?
こちらのしかめっ面を気にせず染井警視は続けた。
「うちの情報部が各大学の教授と共同分析した結果と誤差はあるものの、君たちは我々と同じ結論に至っていたようだったのでね。
【虚層黒積直方体】、これが異性物転移の発生システムだという結果だね。我々と共通の結論だ」
異世界からの巨大構造物、『虚層黒積直方体』、
通称虚層塔。
高層ビルに相当した大きさを持つ巨大な黒い物体は、あのブラッドマンデーの日に世界の主要都市に出現した。
そこに佇むだけでなんの被害も起こさない建造物に思われていた。
しかし都市部に異生物被害が集中している原因が虚層塔が異生物の転移装置として半径50kmに転送しているのではないか、
という仮説なのである。
「各国の政府でもそれが認められはじめている。
けれどね、どうも君の解析だけ計算が合わないんだよ」
思い当たるフシはある。
それは出現頻度と分布率の統計学に俺の勘を係数に入れているからだろうな。
もともとこちらは各国政府と繋がってないので警察とはその情報量に差がある。
だから俺がこの数週間で直接見てきた異生物の傾向を入れ込んでいた。
不一致になってしまうのは当然だ。
それに俺の目的はこの八幡宮町に出現する確率に特化したものであってグローバルのことは二の次・・・・
局所的な精度に限ってはこちらの方が上まるのだろう。
ただそれでも各地の傾向で無視できないことがある。
「俺が調べたかったのは八幡宮に一体でもたどり着いてしまう可能性のある【小転移】の発現分布情報でした。
ですが各国で大きな被害を出している、【大転移】の周期についても・・・・
東京到達日に絞って調べてはいました」
虚層塔は通常数週間に5~10体を日本の各箇所に分散して転移させている。
だが【大転移】というものは数十~数百体に及ぶ異生物が一ヶ所で大量発現するのだ。
幸いにも日本ではまだ起きていない。
金土日曜のどれかに必ず世界のどこかで起きている事からブラックウィークエンドと呼称されている。
その中でも俺の研究対象はやはり近場のポイント、新宿虚層塔だ。
染井警視が続ける。
「我々もそれを最優先事項として情報収集している。
各国で起きた終末大転移の分布傾向をAIの深層学習でも解析した」
「それで急遽観咲家に来たという事はやはり新宿虚層塔での発現日が近いんですね?」
「AIによるパターン解析の結果はここにある。
四週間後の三日間の間に60%台。
次に高いのは五週間後の金土に70%台で大転移が起きる試算だ」
一ヶ月も先だと?
いやまて・・・・
「それ以外の可能性は?特にここ一週間以内の」
「ここしばらくは18%前後が続くよ」
「では警察でその間の対策はどうするんですか?」
「我々の対策はあくまで住民の避難整備だ。
その事態に備えて移動先やルートの整理を進めている」
「出来るだけ急いでください。・・・・なるべく早く!」
「焦るな。こういう事には周到な準備が必要だ。まだ猶予はある」
「その猶予って予測ですよね。
しかも天気予報よりも精度が低いものですよ」
「どうした、やけに急ぐのは理由があるのか?」
俺の推測とあんたらとでズレがあるからだよ。
と素直には言えないな。
「・・・・今日、俺はピンポイントで転移先を的中してきました。この家の人を守るために。
精度が高いのはこの街を起点にして、日本近辺のアジア国に絞ったサンプルで解析をしていたからです」
「我々とは真逆の局所アプローチか」
「はい、グローバル視点では、政府レベルでも情報が届いて来ない中東やアフリカ地域からのサンプル数が足りず誤差が広がると考えています。
そして今日の俺の予測がもし当たった場合に、俺の計算式で辿り着く結論がひとつありました」
俺は観咲姉妹を見つめた。
花凜ちゃんの方は少しボーっとしてる。中学生には難しい話だったかもしれない。
ユナさんは妹がつい先程異生物に襲われていた事実に驚いていた。
けどこれは今日ふたりに伝えるつもりの言葉でもあった。
「警察の解析結果は違います。
ブラックウィークエンドは今週に起こります」
「くだらん!高校生の計算を有識者の集まりが出した結論と比較するまでもないだろう」
松本警視監は耳を傾けてくれないようだ、説得はムリか?
彼女達を郊外へ逃がすだけなら別に気にしないが、
いやこの家や街を守るには・・・・。
俺は小声で呟いた。
(エヴァ出て来い!)
・・・・。
来ない。
いないのか?
自分でなんとかしろってことか?
松本警視監が続けた。
「私は君と討論をしにここに来たワケではない。
君には守るべきものがあるのだろう?
我々は民間の協力を受け入れる態勢がある」
ここで本題か・・・・俺を抱え込もうという勧誘か?
「私達の話したい事を君はすでに察しているようだけど。
今日ここに来たのは他でもない、異粒子適合者である君の協力を得たいんだ」
「俺個人で出来る事は異生物1匹を相手に出来る位です。
組織に属するにはむしろ異端にしかならない筈なのに、なぜですか?」
染井警視は懐から数枚の写真をちゃぶ台の上に広げた。
「これは30日前のロシア・・・・モスクワの写真だ」
おそらく大転移が起きたあとの記録写真・・・・。
そこには無残に散った人間の遺体、蹂躙された街の様子が写し出されていた。
彼女らには見せられないな。
ネットにも出回っていないものだ。
悲惨という言葉しか浮かばない。
「大災害に向けての対策は進める。
不測の事態に向けて異性物の専門家を増やしたいんだ。
特に君にはパイプ役も担ってもらいたくてね」
「虚層塔の破壊計画は実現しないのですか?」
「他国の結果を待っていた。
ちょうど1週間前、米国軍がワシンドンにある虚層塔に実験を行った。
弾道ミサイルでも傷ひとつ付かなかったという報告だ」
は?傷ひとつも?
「現在は米国最強の破壊兵器が準備されている」
まさか・・・・ワシントンで・・・・水爆を?
染井警視が口をはさんだ。
「警視監、それ以上は・・・・」
米国の事だ・・・・実験爆撃をたぶん他国で行うのだろう。
世界情勢が相当おかしくなっていることが予想できる展開だ。
「現状、破壊不能だというのはわかりました。
では東京終末転移の国の具体的対策は?」
「軍が周囲の各ビル群に狙撃隊を配備、各道路に戦車、東京湾には母艦を入れて戦闘機から弾道ミサイル準備も整える。
我々警察は都民への避難誘導を行う」
「警察は戦わないんですね」
「直接の交戦はない。
野生のヒグマであっても我々には発砲に際して手順、規定が必要だ。
その生物が希少種と認定されればワシントン条約により保護する立場にもなる」
「意味がわかりません。異生物ですよ?」
「それが服務規程なんだよ」
「警察は犯罪を犯した者を逮捕して司法に委ねる組織だ。
害獣駆除は管轄ではないというだけだ」
だから民間人でも俺のようなヤツが必要だということか。
「人の命がかかってるんですよね」
「あくまで災害対策だ。
それこそ実際に危機的状況になるまで私たちは人命救助のための交戦準備に動く事はない」
女性のストーカー対策ですら被害を立証しないと巡回くらいしかしてくれないらしいからな。
だんだんムカついてきた。
「なぜ規定を見直さない?あんたらなんのために偉くなったんだよ!」
声を張ってしまい台所にいた花凛ちゃんが驚いていた。
「遥架くん?」
これが日本の旧態依然とした体制か。
これじゃあ誰も守れない。
「雅が討伐した生きたギガントレス・・・・
あれを権力かざして奪おうとしてたんですよね?
研究するつもりはなかったんですか?」
「営利目的の研究所と一緒にするな。
あれは警察が異生物対策に本格的に乗り出すためではない。
害獣を国が管理するのは当然だ。他国からの略奪も可能性があった」
「結果的に引き渡した筈だよ。最機密物として扱ってもらう条件でね」
その実態は国が現代科学から外れた存在を不明生物と定義づけるだけの結果に終わっており、それを見かねた上での強行交渉だったのだ。
「世界が変わったのに、警察は変わらないんですね」
「変われないのではない。
国の行政組織が気安く変わるわけにはいかないのだ。
警察はお前に想像のつかない規模の責任を担っている」
「だからこそ君のように自由に動ける人間が我々には必要なんだよ。
協力を受け入れてくれるならば隊員への周知と、災害発生時における無線情報網を君に明け渡す」
・・・・。
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玄関前で警察ご一行様を送り出す。
「君と話をが出来てよかったよ。
追って使いの者を連絡に寄越す。
詳細についてはそこで」
「区民のための協力に感謝するよ」
俺は半ば諦めながら了承した。
こちらに損がないように見える協力だが、ズブズブと抱え込まれるパターンだろうな。
けど直近の大転移に向けては選り好みする余裕はない。
染井警視が小声で話しかけてくる。
「最後にひとつだけ。
我々も日本の司法の腰の重さには困っているのが正直な所なんだよ」
「松本警視監はそうは見えませんけどね」
「特別異世界災害対策部隊・・・・あれを異例のスピードで編成させたのは松本さんなんだよ」
そう言って彼らは車に乗り込み、観咲家を去っていった。
対策部隊か・・・・あの特殊工作員の如月婦警には助けられたっけな・・・・。
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車内
「あれでいいのですか?」
「トーラス連中や君がやけに勧めるから来たまでだ」
「如月隊員の報告を見ればわかります。
適合者は手駒に持つべきです」
「まあ四週間後の結果を見て結論は出す」
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この二日後の夜、警察庁の予想に反し
終末大転移は突如始まってしまった。
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元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
2回目の人生は異世界で
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ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
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あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
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