暴走族のお姫様、総長のお兄ちゃんに溺愛されてます♡

五菜みやみ

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第二章 6月

体育祭 ⑥

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午後の部 最後の競技は大玉転がしで、道弘が出場した。

大きな玉を運動会で見たことがある瑠輝とは違って、今まで保育園に行ったこともない真依にとって、初めてだったようだ。



「わぁぁ──!!
お、おにぃちゃん。あれ、おっきぃね……!」



頰を赤く染めて興奮を隠せない真依に俺は「そーだな」と頭を軽く撫でた。

高校生用に作られた玉は身長よりも3倍くらいあって、見たことのある瑠輝でもその巨体に興奮しているくらいだ。



「おっきぃー!」


「道弘たちもはしゃいでるねぇ」



確かにテンションが高い気がするな。

まぁ道弘たちに限った話じゃないみたいだが。

クラスのメンバー内で互いに、あーしろこーしろと言う叫び声がテントまで聞こえてくる。



〈プログラムNo.12。大玉転がしを開始します──〉



司会の運営委員の声に男子の図太い雄叫びがあがる。

それは獣の遠吠えのようでもあって、迫力があった。



「最後にこの迫力って、可笑しい」


「最後《・・》だからなんだろ。まぁ近所迷惑な話だと思うがな」


「それは今更でしょ」



凜人と話していると、真依と瑠輝がテントからどんどん離れて前に出て行く。


──おぉ?



〈位置について……、よーい──〉



そんな放送に、真依の姿勢も低くなる。

そしてピストルの音が鳴り響くと、身体が跳ねた。


その後ろ姿に耐えきれず、ブフッと俺と凜人で吹き出してしまう。



「かわいいなぁ」



ホントにな。


クラスメイトの二人が押すように玉を転がしていると、外がにいる奴が上手く連携してコーンを曲がった。

道弘は2番手で、半周先で待ち構えている。

途中、他クラスの奴やボールとぶつかり合いながらも2走者に繋がれると、道弘たちはスムーズに交代していた。

そこで差が付くもので、リードして道弘たちが巨玉を転がして走っていく。

競技に参加している生徒も、楽しそうにテントで応援する生徒も気持ちが一つになって、一体感が生まれているようだった。

そして体育祭の終わりを告げるように、パァンッとピストルの音が鳴り響いた。



〈大玉転がしの結果を発表します。
 ──1位3組。2位……〉〉


結果にクラスメイトの喜声が校庭に響き渡った。

どこからともなく拍手が送られて、閉会式が行われることになった。


閉会式は真依と瑠輝は参加せず、紀子さんと一緒にテントで大人しくしているように言い聞かせた。

来賓で来ていた何かのお偉いさんたちの話し半分聞き流しながら聞いていると、待ちかねた結果発表の時間になり、競技ごとの総合上位3名を先に表彰していた。

200mと1500mの男子で俺は名前を呼ばれて前に出る。

校長先生から賞状を貰って、小さな景品ももらった。

毎年のことだから、景品が図書カード1,500円分なのは分かり切っている話しだ。

個人結果が終わると、クラス対抗の競技の結果が発表されて、3組の委員長と副委員長が何度も前に出る。

3組の呼ばれる回数的に2組と結構競っているように思えた。



〈続いて総合結果になります。1学年3位は──〉



太鼓が効果音を奏でて、ドンッと打つ。

その後告げられた1年生の上位の3クラスが呼ばれると、続いて2年生、3年生の結果発表になり全校生徒が固唾を飲んで放送を聞いていた。


3位は5組。


2位は1組。


そして──。



〈3学年、今年度の優勝は──〉



溜め込んで校庭が静かになっていると、太鼓の音がドンッと打ち鳴らす。



〈3組です!〉



そう呟かれた声に、クラスメイトがワッと盛り上がるなか、俺も思わずガッツポーズをしていた。

忙しなく委員長も副委員が前に出ると、3位のクラスから順に表彰される。

閉会式が終わると、俺は真っ先にテントで待っている紀子さんと、真依と瑠輝の元へと向かった。



「優勝したぞー!」


「わぁぁ! おにぃちゃんすごぉい!」


「かっこいぃ!」


「おめでとう、秋良くん」


「紀子さん、これあげるわ。図書カード。真依と瑠輝の絵本を買う時に使って」


「え!? そんなの大丈夫よ。秋良くんが勝ち取ってきたものなんだから、自分で使えば良いのよ」


「お小遣いあるし良いんだよ。それに、絵本に使った方がよっぽど価値があるしなぁ」


「……なら、大切に使わせてもらうわね。いつも面倒を見てくれてありがとう」


「おう」



真依と瑠輝を両手で抱き上げると、浮かれていた俺はくるくると回る。

はしゃぐ二人に俺も笑っていると、後ろから呆れた声音で突っ込まれた。



「秋良、なにやってんの。バカみたいだからやめてよね。はぁ、前はもっとクールだったのに」


「秋良もはしゃぐ時があるんだなぁ」


「なんだよ。俺の勝手だろうが」


「端くれでも暴走族の総長なんだよ?
校内に敵がいたらどうすんのさ。デレデレしちゃって威厳の“い”の字もないよ」


「実際にいんのか?」


「いない」


「いねぇのかよ!!」



なら良くないか?

別に俺がデレデレしてても。



「いないけどね、『黒薔薇』の全貌がまだ見えないんだよねぇ」


「全貌……? この学校にあいつ等の仲間がいるのか?」


「動物園のことも把握してたくらいだから、いても可笑しくないと思ってるんだけど……」



それは確かに一理あるか。



「しおんくんいるの?」



ふとした真依の質問に俺たちは驚いた。


まさかもう名前を覚えてるのか……?

あの時ジュースを買ってもらってはいたが。

それよりも──。



「真依は紫苑のヤツを気に入ったのか?」


「しおんくん優しかったよ!」



大分懐いているな……。



「はぁ、真依が良いなら本格的に話合わないとな」


「だねぇ。まさかあの一瞬で仲良くなるとは……」


「俺は別に良いぞ?」



道弘も何気に気に入ってたんだな……。

連絡取ってみるか?

真依を守ってくれるなら良い。けど、それと交換条件に何かを突きつけられるのか知っておかないと考えるも何もない。



「凜人、とりあえず話しがしたいとだけ言って会う算段をつけろ」


「はいよー」



真依とミチが気に入ってんならしょうがないよな。



「誰を連れてくかな……」



道弘は倉庫に残すとなると、もう一人下から連れて行っても良いかもしれない。



「壱成で良いでしょ。気が利くし、強いし、愛嬌あるし」


「そうだな」



そんな話しをしていると、真依と瑠輝が俺をじーと見つめていた。



「なんだ?」


「ぼくもいくー!」


「まいも行くっ!」


「駄目だ。二人は留守番。今度会いに来るように言っておくな」


「「えぇぇ!」」


「公園で一緒に遊べたらいいな」


「うん!」



ちょっと拗ねた顔をしたけれど、公園の言葉に真依は素直に頷いた。

瑠輝は楽しそうに「おにごっこがいい!」と足をバタつかせる。

凜人と話混んでいる間に来ていた先生と紀子が話しを終えると、俺たちは一度家に帰ってからファミレスへと移動することになった。



「んじゃ、俺らも一度帰るかな」


「俺もシャワー浴びて来るわ」


「はいはい、適当に来ればいいだろ。 しょうがねぇから、お前たちの分も予約しといてやるよ」



近くの席じゃないとコイツ等うろうろしそうだしなぁ。

あ、そうだ。

壱成が来れるか春良に聞いておかねぇと。



「秋良くん、私たちは校門の所で待ってるわね」


「あぁ。ホームルームあるから長いけど」


「大丈夫よ。ゆっくり来てね」


「あぁ。じゃぁ、真依と瑠輝も後でな。紀子さんと一緒にいるんだぞ」


「はーい!」


「だいじょうぶだよ!」



一時の別れを惜しみながら俺たちは教室へ戻るために校舎への道のりを肩を並べて歩いて行った。



「にしても、勝てて良かったね」



腕を真上に伸ばして身体を解しながら言う凜人に、道弘が揚々と笑う。



「これで先生も問題児なんて呼べねぇな!」


「いや、関係ねぇだろ……」



コイツは本当に──。



「ミチってやっぱりバカだねぇ」


「あぁ? リンは動かなかっただろ」


「別に良いじゃない。体育祭なんて、参加して陽の下にいるだけでも苦行だよ」


「喧嘩が強くなるためには動けよ!」


「俺は参謀タイプだからやですぅー」


「リンのガキ!」


「ミチの脳筋!」


「……子供かよ……」


なんなんだ、この喧嘩は。

これを止める俺の気持ちを考えろよな。 

はぁぁ、早くホームルームが終わるといいな……。


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