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蜂蜜と王子さま
#2
しおりを挟む私はさっきまでの恐怖心がすっかりなくなっていて、上機嫌になってたくさん質問をしてしまっていた。
それは、学校の門に着くまで続き──。
「キャーー!」
「うそでしょ、やだーーッ!」
「いやぁぁッーー!」
たくさんの悲鳴が聞こえた所で、私はやっと周りの状況に気づいた。
最初は女の子たちの悲鳴に、どうしてそんなに恨めしい目をして叫んでいるんだろうと考えていたけど、ふと今の自分と玲王の体勢に気づく。
「うわぁぁ! ごめんなさい!!」
「え? どうしたの??」
突然謝った私に、玲王くんは首を傾げる。
あれ!?
気づいてないのかな……?
いや、気づいてるよね!?
「あ、えっと……。その……。お、重いよね!? 下ろしていいよ!?」
「やだ」
え、やだ……!?
「教室まで送るよ。だからもう少しこのまでいようよ。──ね?」
ハッ!
そっか、ここで下ろしたら紳士じゃなくなっちゃうよね!
「うん、分かった!」
「蜜璃ちゃんは優しいね」
「そ、それは玲王くんの方かと」
「僕はそんなんじゃないよ」
そう言った玲王くんの言葉の意味を、この時の私は理解出来ず、ただ謙遜しているのかと思っていた。
校門を通り過ぎて直ぐの昇降口に着くと、下ろすかと思っていたら、下駄箱から上履きを出してしゃが見込んだ。
膝の上に私を座らせると、靴から上履きに履き替えさせてくれたのだ。
「え!?」
「ふんふーんふふん♪」
「あ、あの……。玲王くん何やってるの?」
「上履きに履き替えないとね!」
「え!? そんなの自分でや──」
「終わったよ♪」
──えッ!?
「あ、ありがとう……」
「いえいえ!」
な、なな、なんか可笑しくないかな!?
紳士に思われるのにここまでするもの!?
そんなことを考えこんでいる間に、玲王くんも上履きに履き替えていて、左手にある階段を上っていた。
教室は2年生が2階で、1年生より下階にある。
だから玲王くんの教室が先ではあるんだけど……。
「先に鞄下ろしたいから、僕の教室行くね」
そう言って2年A組の教室へと向かって歩き出した。
教室にたどり着き、抱き上げられていた私も一緒に中に入ると、途端に女子の悲鳴がまた上がり。
キャーと言う叫び声から囁き合う声が教室内に響く。
そのざわめきは人を呼び、廊下にも2年生たちが集まって各々話しをしていた。
人だかりに私は気付いて居心地悪さを感じていたけれど、玲王くんは堂々としていて、女子を全く相手にしてない様子で、後ろの方の席に鞄を下ろしていた。
こ、ここが玲王くんの教室。
なんでかな、いい匂いがする……。
「──さて、1年C組の教室に行こっか!」
「クラスも知ってるの!?」
「蜜璃ちゃんは有名だからね!」
「そ、そうかな……?」
中学生の時はたくさんの人たちから告白されたけど、高校に入ってからは入学して一週間の三人しか告白されてないんだよね。
だからそこまで目立ってないと思ってたけど、どうなっているんだろう?
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