学生恋愛♡短編集

五菜みやみ

文字の大きさ
上 下
22 / 33
蜂蜜と王子さま

#2

しおりを挟む


 私はさっきまでの恐怖心がすっかりなくなっていて、上機嫌になってたくさん質問をしてしまっていた。

 それは、学校の門に着くまで続き──。


「キャーー!」

「うそでしょ、やだーーッ!」

「いやぁぁッーー!」


 たくさんの悲鳴が聞こえた所で、私はやっと周りの状況に気づいた。

 最初は女の子たちの悲鳴に、どうしてそんなに恨めしい目をして叫んでいるんだろうと考えていたけど、ふと今の自分と玲王の体勢に気づく。


「うわぁぁ! ごめんなさい!!」

「え? どうしたの??」


 突然謝った私に、玲王くんは首を傾げる。

 あれ!?

 気づいてないのかな……?

 いや、気づいてるよね!?


「あ、えっと……。その……。お、重いよね!? 下ろしていいよ!?」

「やだ」


 え、やだ……!?


「教室まで送るよ。だからもう少しこのまでいようよ。──ね?」


 ハッ!

 そっか、ここで下ろしたら紳士じゃなくなっちゃうよね!


「うん、分かった!」

「蜜璃ちゃんは優しいね」

「そ、それは玲王くんの方かと」

「僕はそんなんじゃないよ」


 そう言った玲王くんの言葉の意味を、この時の私は理解出来ず、ただ謙遜しているのかと思っていた。

 校門を通り過ぎて直ぐの昇降口に着くと、下ろすかと思っていたら、下駄箱から上履きを出してしゃが見込んだ。

 膝の上に私を座らせると、靴から上履きに履き替えさせてくれたのだ。


「え!?」

「ふんふーんふふん♪」

「あ、あの……。玲王くん何やってるの?」

「上履きに履き替えないとね!」

「え!?  そんなの自分でや──」

「終わったよ♪」


 ──えッ!?


「あ、ありがとう……」

「いえいえ!」


 な、なな、なんか可笑しくないかな!?

 紳士に思われるのにここまでするもの!?

 そんなことを考えこんでいる間に、玲王くんも上履きに履き替えていて、左手にある階段を上っていた。

 教室は2年生が2階で、1年生より下階にある。

 だから玲王くんの教室が先ではあるんだけど……。


「先に鞄下ろしたいから、僕の教室行くね」


 そう言って2年A組の教室へと向かって歩き出した。

 教室にたどり着き、抱き上げられていた私も一緒に中に入ると、途端に女子の悲鳴がまた上がり。

 キャーと言う叫び声から囁き合う声が教室内に響く。

 そのざわめきは人を呼び、廊下にも2年生たちが集まって各々話しをしていた。

 人だかりに私は気付いて居心地悪さを感じていたけれど、玲王くんは堂々としていて、女子を全く相手にしてない様子で、後ろの方の席に鞄を下ろしていた。

 こ、ここが玲王くんの教室。

 なんでかな、いい匂いがする……。


「──さて、1年C組の教室に行こっか!」

「クラスも知ってるの!?」

「蜜璃ちゃんは有名だからね!」

「そ、そうかな……?」


 中学生の時はたくさんの人たちから告白されたけど、高校に入ってからは入学して一週間の三人しか告白されてないんだよね。

 だからそこまで目立ってないと思ってたけど、どうなっているんだろう? 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ほつれ家族

陸沢宝史
青春
高校二年生の椎橋松貴はアルバイトをしていたその理由は姉の借金返済を手伝うためだった。ある日、松貴は同じ高校に通っている先輩の永松栗之と知り合い仲を深めていく。だが二人は家族関係で問題を抱えており、やがて問題は複雑化していく中自分の家族と向き合っていく。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アレンジ可シチュボ等のフリー台本集77選

上津英
大衆娯楽
シチュエーションボイス等のフリー台本集です。女性向けで書いていますが、男性向けでの使用も可です。 一人用の短い恋愛系中心。 【利用規約】 ・一人称・語尾・方言・男女逆転などのアレンジはご自由に。 ・シチュボ以外にもASMR・ボイスドラマ・朗読・配信・声劇にどうぞお使いください。 ・個人の使用報告は不要ですが、クレジットの表記はお願い致します。

坊主女子:スポーツ女子短編集[短編集]

S.H.L
青春
野球部以外の部活の女の子が坊主にする話をまとめました

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

処理中です...