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先生、好きです。
第4話
しおりを挟む先生が泣き止むまでしばらく三人で話しをしていると、切りが良いところで私たちは帰ることにした。
「じゃぁ、またね!」
「おう。 ──あ、そうだ。
保険室に徹先生いるからな、これから会いに行くんだろう?」
「もちろん!」
「生徒だった頃は応援出来なかったが、もう卒業したからな。
頑張れよ。勇気だして気持ち全部伝えて来い!」
「──ぁ、ありがとう!」
まさか先生に応援されるとは思ってなくて、私は一瞬言葉を失った。
「頑張るからね!」
最後にそう言って職員室をあとにする。
「莉奈、今の聞いた?」
「聞いたけど?」
嬉しい……。
ずっと我慢して過ごしてた日々が、まさか他の先生から肯定される形で、正しかったんだと証明されるなんて思ってもみなかった。
「莉奈、三年間ありがとう」
「わたしは思ったことを率直に言ってただけよ」
「けど私だけだったら、あぁは言ってもらえなかった……」
きっと先生に絡んでいる問題児として終わってたと思う。
だけど、莉奈の助言があって違ってきた──。
思いを全部伝えずに呑み込んで分だけ変わって来てきた。
振り向いてくれるか不安だったけど、ちゃんと気持ちは伝わってた。
それは周囲にも見えるくらい──。
だからきっと、徹先生にも伝わってるはずだ。
……そう信じたい。
「柚乃はさ、ちゃんと頑張ってたよ」
隣りにいた莉奈がポツリと呟いた。
目を合わせると、微笑みながら私に言う。
「作戦を実行する度に気持ちを伝えて来た。
私はただ見守ってただけ」
「莉奈……」
そうは言っても、やっぱり莉奈が隣りで間違いを叱ってくれたからだと思う。
「柚乃が徹先生を見て来たように、徹先生も柚乃のことしか見てないから安心して告ってきな」
「……うん、してくる。 ──行ってくるね!」
私は大きく頷くと、莉奈に背中を向けて走りだした。
後ろから莉奈の声が聞こえて一度立ち止まる。
「手紙、忘れないでね!」
「うん! ちゃんと渡すよ!」
「行ってらっしゃい!」
私は手を大きく振って莉奈と別れると、長い廊下を走り抜けて保健室へ向かった。
徹先生、早く会いたい。
私のことをどう思っているか教えてほしい。
最後にありったけの思いを伝えるからどうか……。
どうか──!!
階段を掛け降りて保健室の前に着く。
扉の前に立つと、何度も深呼吸をした。
だいぶ息が落ちついてくると、私は手を上げて軽くノックをする。
大丈夫……。
先生だってきっと少なからず私を視界に入れてくれてたんだから。
もし、この想いが報われなかったとしても、ちゃんと答えをくれるなら私はそれを受け入れる。
頑張って諦める。
だから最後にもう一度、想いを伝えさせてね。
何も変わってないから。
ずっとこの気持ちは変わらないから……。
息を吸って扉を開けた。
すると窓が開いていたらしく、風が入って来てカーテンが揺れた。
「徹先生……?」
中に入ると徹先生の姿はなくて、テーブルを見ると飲みかけのコーヒーが置かれていた。
まだ湯気が立っていることから、少し前まで人がいたことを教えてくれる。
なら──。
そう思って室内を見渡すと、カーテンの仕切りの隙間から人影がチラリと見えて、ベットに人がいるのが分かった。
気になってカーテンを捲ると、ベットで寝ていたのは徹先生だった。
思わず勢い良くカーテンを開ける。
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