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先生、好きです。
春空の下 第1話
しおりを挟むそれから1ヶ月後_
私たちは無事に受験を終えた……。
第一志望の大学受験の次の日。
私と莉奈はいつものように学校へ登校すると、一緒に保健室に来ていた。
扉をノックしてから開き、第一声に先生を呼ぶ。
「徹先生ー!」
「失礼します」
中に入るとマグカップでコーヒーを飲んでいた徹先生が立っていて。
窓の外を見ていたらしい徹先生は、私たちの方を振り返った。
「おぉ、昨日はお疲れさん。
大丈夫だったか?」
あの日、抱きしめたられた放課後の次の日は、朝からは会えなくて、お昼休みに莉奈と一緒に保健室に行った。
徹先生はいつも通りに接してきた。
私はと云うと、少し挙動不審になりかかったけど、会話で冗談を言い合っているうちに普段通りに話せるようになれた。
だから、今日もいつも通りだ。
先生と生徒の関係で絆を築いている。
本音を言っちゃえば、あのまま恋人関係に発展出来たら嬉しいかったけど、それは何か違うなと云うのは分かっていて。
受験に集中しなきゃいけない現実と、気持ちもあったから進展させようとは思わなかった。
「あとは神様に任せましたー!」
「私は9割出来てました。
柚乃の方も聞いたら合格ラインギリギリだったので大丈夫だと思います」
そう真面目に莉奈が応えると、付け加えるように続けた。
「それもまぁ。 回答欄を間違えてなければですけど」
「ちょっと莉奈。 怖いこと言わないでよ」
「ほぉ、合格ラインまで解いて来たんなら十分なんじゃねぇの」
「……う、うん。」
や、優しい。
最近、毎日ちょっとずつ優しく接してくれて、ときめいてる時間が増えてる気がする。
これ、次の告白まで持つかな。
いつするかは決めてないんけどさ……。
「梅原が言うなら、あとは本当に神頼みだな。受かってると良いな」
「そうですね」
「先生!
そこは“お前なら大丈夫だ”ってくらいのこと言って下さいよ!」
「柚乃相手に言えるわけないじゃないじゃない」
「無責任なことは言えねぇわな」
「そうだけどぉさー。
はぁ、改めて合格出来るか不安になってきた」
頭を抱えると徹先生は微笑んだ。
すると莉奈が凝視していることに気づいたようで、首を傾げた。
「梅原、なんだ?」
「…………いえ、別に」
──??
先生、さっき変なこと言った?
どうしたんだろう。
私まで首を傾げると、莉奈は手の平を突き出して「本当に何でもないので、気にしないで下さい。」と言った。
言う気のない莉奈の態度に、徹先生はそれ以上何も聞かず、「あぁ、分かった」と言って頷いていた。
変な空気になった時、ふと机の上にあったチョコを見てて私は本題を思い出した。
そうだ、コレを渡したかったんだった!
「徹先生、渡したいものあるの!」
「なんだ?」
「はい!」
私はコンビニ袋の中から、ラッピングされた小さな箱とコーヒー缶を取り出すと、先生に渡した。
それを見て徹先生は驚いた顔を浮かべる。
「わざわざ用意したのか?」
マグカップをテーブルに置いて、小さな箱と缶を受け取る。
「はい!バレンタインで渡せなかったチョコと授業料のコーヒーです!」
「私も見てもらったので少し違うテイストで用意しました。
貰ってくれますか?」
「おぉ、貰うわ。 二人ともありがとうな」
「教えてくれてありがとうございました!」
「──あ、チョコは義理です」
「……梅原、義理とか言わなくていいからな?」
「大事なことだと思ったので」
「そうか……。
少ししか見てなかったのに、本当にありがとな」
徹先生が微笑んだのに私たちも笑い合うと、チャイムが鳴って慌てて保健室をあとにした。
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