学生恋愛♡短編集

五菜みやみ

文字の大きさ
上 下
14 / 33
先生、好きです。

春空の下 第1話

しおりを挟む


それから1ヶ月後_


私たちは無事に受験を終えた……。




第一志望の大学受験の次の日。

私と莉奈はいつものように学校へ登校すると、一緒に保健室に来ていた。

扉をノックしてから開き、第一声に先生を呼ぶ。



「徹先生ー!」


「失礼します」



中に入るとマグカップでコーヒーを飲んでいた徹先生が立っていて。

窓の外を見ていたらしい徹先生は、私たちの方を振り返った。



「おぉ、昨日はお疲れさん。
大丈夫だったか?」



あの日、抱きしめたられた放課後の次の日は、朝からは会えなくて、お昼休みに莉奈と一緒に保健室に行った。

徹先生はいつも通りに接してきた。

私はと云うと、少し挙動不審になりかかったけど、会話で冗談を言い合っているうちに普段通りに話せるようになれた。


だから、今日もいつも通りだ。

先生と生徒の関係で絆を築いている。


本音を言っちゃえば、あのまま恋人関係に発展出来たら嬉しいかったけど、それは何か違うなと云うのは分かっていて。

受験に集中しなきゃいけない現実と、気持ちもあったから進展させようとは思わなかった。



「あとは神様に任せましたー!」


「私は9割出来てました。
柚乃の方も聞いたら合格ラインギリギリだったので大丈夫だと思います」



そう真面目に莉奈が応えると、付け加えるように続けた。



「それもまぁ。 回答欄を間違えてなければですけど」


「ちょっと莉奈。 怖いこと言わないでよ」


「ほぉ、合格ラインまで解いて来たんなら十分なんじゃねぇの」


「……う、うん。」



や、優しい。

最近、毎日ちょっとずつ優しく接してくれて、ときめいてる時間が増えてる気がする。


これ、次の告白まで持つかな。

いつするかは決めてないんけどさ……。



「梅原が言うなら、あとは本当に神頼みだな。受かってると良いな」


「そうですね」


「先生!
そこは“お前なら大丈夫だ”ってくらいのこと言って下さいよ!」


「柚乃相手に言えるわけないじゃないじゃない」


「無責任なことは言えねぇわな」


「そうだけどぉさー。
はぁ、改めて合格出来るか不安になってきた」



頭を抱えると徹先生は微笑んだ。

すると莉奈が凝視していることに気づいたようで、首を傾げた。



「梅原、なんだ?」


「…………いえ、別に」



──??


先生、さっき変なこと言った?

どうしたんだろう。


私まで首を傾げると、莉奈は手の平を突き出して「本当に何でもないので、気にしないで下さい。」と言った。

言う気のない莉奈の態度に、徹先生はそれ以上何も聞かず、「あぁ、分かった」と言って頷いていた。


変な空気になった時、ふと机の上にあったチョコを見てて私は本題を思い出した。


そうだ、コレを渡したかったんだった!



「徹先生、渡したいものあるの!」


「なんだ?」


「はい!」



私はコンビニ袋の中から、ラッピングされた小さな箱とコーヒー缶を取り出すと、先生に渡した。

それを見て徹先生は驚いた顔を浮かべる。



「わざわざ用意したのか?」



マグカップをテーブルに置いて、小さな箱と缶を受け取る。



「はい!バレンタインで渡せなかったチョコと授業料のコーヒーです!」


「私も見てもらったので少し違うテイストで用意しました。
貰ってくれますか?」


「おぉ、貰うわ。 二人ともありがとうな」


「教えてくれてありがとうございました!」


「──あ、チョコは義理です」


「……梅原、義理とか言わなくていいからな?」


「大事なことだと思ったので」


「そうか……。
少ししか見てなかったのに、本当にありがとな」



徹先生が微笑んだのに私たちも笑い合うと、チャイムが鳴って慌てて保健室をあとにした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アレンジ可シチュボ等のフリー台本集77選

上津英
大衆娯楽
シチュエーションボイス等のフリー台本集です。女性向けで書いていますが、男性向けでの使用も可です。 一人用の短い恋愛系中心。 【利用規約】 ・一人称・語尾・方言・男女逆転などのアレンジはご自由に。 ・シチュボ以外にもASMR・ボイスドラマ・朗読・配信・声劇にどうぞお使いください。 ・個人の使用報告は不要ですが、クレジットの表記はお願い致します。

ほつれ家族

陸沢宝史
青春
高校二年生の椎橋松貴はアルバイトをしていたその理由は姉の借金返済を手伝うためだった。ある日、松貴は同じ高校に通っている先輩の永松栗之と知り合い仲を深めていく。だが二人は家族関係で問題を抱えており、やがて問題は複雑化していく中自分の家族と向き合っていく。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

無敵のイエスマン

春海
青春
主人公の赤崎智也は、イエスマンを貫いて人間関係を完璧に築き上げ、他生徒の誰からも敵視されることなく高校生活を送っていた。敵がいない、敵無し、つまり無敵のイエスマンだ。赤崎は小学生の頃に、いじめられていた初恋の女の子をかばったことで、代わりに自分がいじめられ、二度とあんな目に遭いたくないと思い、無敵のイエスマンという人格を作り上げた。しかし、赤崎は自分がかばった女の子と再会し、彼女は赤崎の人格を変えようとする。そして、赤崎と彼女の勝負が始まる。赤崎が無敵のイエスマンを続けられるか、彼女が無敵のイエスマンである赤崎を変えられるか。これは、無敵のイエスマンの悲哀と恋と救いの物語。

処理中です...