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先生、好きです。
第2話
しおりを挟む学校に登校してくると私と莉奈は先に保険室へ寄った。
ここには私の好きな人がいる。
養護教諭の徹先生。
私は毎朝、先生に会うために遅刻をせずに登校している。
徹先生との出会いは高校入学式の頃だ。
緊張で寝不足だった私は式の途中で倒れてしまい、先生がお姫様抱っこして保健室へ運んでくれた。
その時から私はずっと先生に片想いをしている。
今まで学校がある日は必ずここに会いに来ていて、それはもう日課に等しい。
──なのに今日は違った。
_ガッ!
「……ん?」
「どうしたの?」
_ガチャ、ガチャ。
空かない……。
「空いてないの?」
「みたい。 職員室かな?」
「そうかも。
珍しいね、いつもなら日向先生もいるのに」
「……いつもの朝の楽しみが。 ショック」
「先生も受験で忙しいんじゃない?」
「……受験と保健の先生って関係あるの?」
「ストレスとか寝不足とかあるじゃない。
知らないけど」
「……この先も続くのかなぁ」
「私は今の生活変えてほしくないから先生に会える方が嬉しいけどね」
「──??」
変えてほしくないってどう言うことだろう。
「誰のこと?」
「あんたに決まってるでしょ……」
莉奈は溜め息を着くと歩き出した。
私はその後を追いかけて、大人しく一緒に教室へ向かい、階段を上がっていった。
教室に着くとクラスメイトに挨拶しながら席に着く。
因みに莉奈も同じクラスで、私は一番後ろの窓側、莉奈は廊下側2列目の真ん中だ。
「おはよー!」
「柚乃ちゃん、莉奈ちゃん、おはよー!」
みんなに挨拶しながら席に座ると、一人の男子がグループから外れてこっちに来た。
「柚乃!」
「なに? 啓太《けいた》」
仲川《なかがわ》 啓太。
1年生の時に隣りの席になってからずっと仲良くしている男友達だ。
外見はまぁまぁカッコよくて(イケメンだなんて認めたくない)、サッカー部のエースだったこともある啓太は、今でも学年関係なく女子に人気がある。
「知ってるか? さっき職員室に先生いたんだぜ」
「え!? そうなの!?」
だから保険室にいなかったんだ!
いつもなら私が登校して来たあの時間には既に先生は保健室にいて、書類整理をしているのが常だった。
徹先生がいなくても保健室の先生はもう一人いて、女性の日向先生がいてくれて徹先生のことを話してくれる。
なのに二人とも朝礼で遅くなるなんて何かあったのね。
「最近朝礼が長引いて朝は保健室にいないんだと」
「何かあったのかな。 お昼休みに聞いてみよう」
「アイツってちゃんと仕事してたんだなぁ」
「アイツって言わないで」
「ヘイヘイ」
好きな人を“アイツ”呼ばわりした啓太に、私は少し気にくわなくて注意した。
名前を呼ばないだけで怒る私に啓太は呆れた顔で返事をする。
そんな顔されても私は気にしないもんね。
だって、やなものはやだんだもん。
それにしても、朝に保健室に行っても会えなくなるのか……。
「朝の出現ポイントが変更するのね……」
「出現ポイントて。 お前って本当に徹のこととなると諦め悪いよな」
苦笑いでツッコんでくる啓太。
その言葉に私は笑って「もちろん!」と大きく頷いた。
出来れば朝は、一言でいいから会って話しがしたい。
それが叶わないなら遠くから眺めるだけでもいい。
そしたら1日、ずっと笑顔で過ごせるから。
「そういや、小テストの勉強してきたか?」
「それはもう、バッチリ!」
「はぁ!? マジかよ!? てめぇ、裏切ったな!!」
「裏切ったってなによ! 頑張るに決まってるでしょ!」
「くそー!」
「別に啓太は勉強大丈夫でしょ。
大学は推薦だし、落ちても就職でしょ?」
「テストで柚乃に負けるのが気に食わねーんだよ!」
「ふふん! なら今回は諦めることね!」
受験勉強をしだしてから私の成績はさらに上がった。
それでなくても1年生の夏からバカ組だった私は、莉奈の協力をへて全教科30点成績が上がり、普通より上位組にレベルアップしているのだ。
それは今でもキープしていて、並みの生徒じゃ敵う者はいない。
いやまぁ、啓太も上位組なんだけどね……。
だから競い合ってんだし。
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