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一章 ようこそ異世界へ!

21話 半分こ

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「はぁはぁ……は、速い!! やっぱりボク達じゃ追いつけない……こうなったら……!!」

 ボクはアイテムボックスから調理済みの鶏肉を取り出して頬張る。全身が熱くなり、意識を集中させると体がふわりと宙に浮く。

「お姉ちゃんは里に戻って助けを呼んで来て! ボクはパティの所まで行くから!」

「う、うん! 気をつけてね!」

 セリシアは翼を出し里へと踵を返す。
 それからこのサイコキネシスで自分の体を浮かせ、パティが飛んで行った方向へ体を投げる様に飛ばす。
 その速度は鳥の速度を超越し、引き上がったこの視力でも気を抜けばパティを見落としてしまうかもしれない。

「あっ、いた!! って、あれ……ルディ!?」

 衝撃音や破裂音が段々と大きくなっていき、やがてその発生源を見つける。そこでは金髪の二人の少女……ルディとパティがフードを深々と被った小柄の誰かと戦っていた。
 恐らくルディが戦っていてその余波がボク達の所まで来て、パティがそこに加わったのだろう。

 凄いあの二人押してる……多分魔族だよねあの人……フードで角が見えないけど。

 フードの人は華麗な足取りで魔法を躱す。ルディのあの風を操り圧力をかける魔法も完璧に見切られている。パティが大岩を落としたり地面から尖った岩を突き上げるがそれも読まれて避けられる。

 あの人凄い強い……でも攻撃する気がない……?

 奴に敵意は感じられず、攻撃に移る気配が全くない。しかし二人の猛攻を防ぎ続けることはできずやがて体のバランスを崩す。

「ちっ……仕方ありませんね」

 どこかで聞いたことある声をフードの奥で出し、奴は懐からある道具を出す。
 鉄製のL字で引き金が付いている……拳銃だ。

「拳銃!? この世界にもあったんだ……ってまずい!!」

 ボクは急降下し加勢しようとするが間に合わない。放たれた青く光る銃弾は二人の胸を正確に捉えてしまう。
 
「きゃっ!」

「うわっ!!」

 しかし銃弾が胸を貫くことはなく二人を弾き飛ばすだけだった。

 魔力が込められた銃弾……? 手加減した……?

「何だ今の道具……げほっ! それにこの衝撃……」

 致命傷ではないとはいえ中々の衝撃に襲われている。ルディが立ちあがろうにも咽せてしまいままならない。
 
「二人とも大丈夫!?」

 ボクは二人とフードの人の間に割って入り射線を塞ぐ。

「メイヤさん……!?」

 しかし驚くことに目の前のフードの人の口からボクの名前が出てくる。

「……誰?」

「私です……リリィですよ」

 目の前の人はフードを取りその素顔を晒す。青空色のショートの髪に幼い顔立ち。トールさんと共に旅をしているリリィだ。

「げほっ……メイヤさん……その人と……魔族と知り合いだったんですか!?」

「やっぱりお前魔族と繋がって……!!」

 二人から明確な殺意と怒りを向けられる。親の仇そのものと見られる。

「ち、違うよ! というよりこの子は魔族じゃなくて人間と魔族のハーフで……」

「ハーフ……? そんな忌々しい奴アタシが殺して……」

「やっぱり理解なんてされませんよね……こちらの事情も聞かずにいきなり攻撃してきましたし」

 やっぱりボクの予想通りリリィはその特徴から勘違いされ襲われてしまったようだ。ボクと同じ様に。
 
「でもリリィは……この子は悪い人じゃない! 少なくとも人を襲ったりなんかしない!」

「えぇその通りです。私はここら辺に魔族が逃げたという情報を掴んだので追って調査していただけです。妖精族の里が襲われたことまでは知りませんでしたが……」

「それにリリィはある人と一緒に旅を……って、トールさんは一緒じゃないの?」

「あの人は恐らく妖精族の里を襲ったと思われる二人の魔族が命令されていただけど知って、その首謀者を調べています。今は別行動中です」

 リリィを一人にするなんて……と思ったが、先程の戦闘を見るにリリィも中々の実力者だ。ボクが戦っても勝てるかどうか分からない。それほどの力を信用しているのだろう。

「首謀者……? アタシ達の里を襲った奴はただ命令されたからって理由でアタシの家族を殺したのか……?」

 ルディは歯をガタガタと鳴らし力ませる。目つきは更に鋭いものとなっており、胸に走る痛みを完全に忘れている。

「私の知っている情報を整理するにそうでしょうね。一度交戦した際に聞きましたが言動から見て知能はあまりなさそうでしたし、きっと安直な理由でしょう」

「ふざけるな……ふざけるなっ!! 絶対殺してやる!!」

 ルディは羽を展開させ、数メートル跳躍した後こちらへの風圧など考えず飛び去っていく。呼び止める暇などない程の素早い動きだった。

「お姉ちゃん……!!」
 
 パティが追いかけようとするもののルディの姿はもう見えず、また二人は離れ離れになってしまうのだった。
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