14 / 89
一章 美少女ヒーロー参上!!
14話 一息ついて
しおりを挟む「はぁ……はぁ……うっ!!」
奴を倒したことで気が抜けてしまい痛みがぶり返してきて、膝を突き激しく息を荒くして心の鼓動が速くなるのを皮膚で感じる。
[配信は……切れてる?]
[戦闘が終わったから切っておいた。それより大丈夫……じゃなさそうだな。すぐに例のアレを持ってく]
テレパシーが切れ、疲労がどっと押し寄せてくる。私は目眩に耐え切れなくなりその場に倒れ伏しそうになってしまう。
「ウォーター!?」
地面に頭をぶつける直前にイリオの手が私を持ち上げてくれてなんとか衝撃は免れる。
「随分と酷い怪我だな。おい波風……いやここはイリオと言っておこう。手当てしたいから人目がないところまで移すぞ」
「宇宙人さん……分かった」
「宇宙人さんじゃない。俺の名前はキュアリンだ。覚えておけ」
私はイリオに連れられて人目のない物陰まで行きそこでお互い変身を解除する。
「っ……!! やっぱり酷い怪我。破片がめり込んでる……」
「間に合ってよかったな……ほら高嶺。例の薬だ飲んでおけ」
「うんありがと……」
私は口元に持ってこられた錠剤を飲み込む。血は止まらないが痛みが引いていき痛覚が失われていく。
「それは?」
「痛み止めだ。俺達の星のな。地球人に副作用がないことは確認済みだから安心しろ」
次にキュアリンは吹きかけるタイプのスプレーを取り出しそれを私の傷口に吹きかけていく。
「ちょっとそんな日焼け止めスプレーみたいなのかけて大丈夫なの!?」
「うるさいないちいち! 怪我の治りを促進させるスプレーだよ。ただまぁあくまでも促進させるだけだからこの怪我だと歩けるほど治るのに数十分いるが、一日もすれば痛みは残ってないだろう」
前使った時は数時間で完治したが、今回の怪我ではそうはいかないだろう。私は痛み止めが切れた後のことを想像して口の中いっぱいに広がる苦い味を噛み締める。
「とりあえず治療は終わったぞ。俺は見られたらまずいからこれで離れる。何かあればテレパシーで……」
「テレパシー……?」
[こういうのだ]
「うわっ!? 頭の中に声が!?」
私と全く同じ反応だ。やはりあの感覚は初見だと奇妙で驚いてしまう。
[こうやってやるの?]
[あぁそうだ。ともかく高嶺のことは任せたぞ]
キュアリンは茂みの中に消えていき、私は息を潜めて治癒を待つ。
「あれ……高嶺に波風……大丈夫だったのか!?」
建物の角から健さんが飛び出してくる。彼に怪我はないようで血の一滴も垂れていない。
「高嶺お前その怪我……早く救急車を……」
「あぁ大丈夫……です。ちょっと転んだだけですから」
まだ傷は治りきっていないがもう少しで歩けるようになる。服はもうダメだが最悪また買えばいい。思い入れがあったり高価なものでもない。
「でも凄いね君達。あんな化け物と戦うなんて……」
「あはは……でも怪我もこれくらいで済んで……え?」
つい正直に喋ってしまったが、そもそも健さんは私達がキュアヒーローであることは知らないはずだ。先程の言動は明らかにおかしい。正体を知らなければ出てこないものだ。
「やっぱり……キュアウォーターが確かに俺と信介の名前を叫んでたから。それに君達の傷に息の切れ具合。逃げた後に配信時の口調も観察していたが……それらは全て君達がキュアヒーローだという一つの結論に導いている」
キュアリンが言っていた変人は番狂わせを起こすという言葉。正にそれがたった今起こってしまった。
「ま、待ってたけ兄このことは誰にも……」
「分かってるって。何かしら事情があることくらい推測できるさ。ただ……一つ俺のお願いを聞いて欲しいんだ」
「お願い……?」
健さんのことだ。私達が嫌がることやいやらしいことは要求してこないはずだ。それでも私と波風ちゃんの間に緊張が走り思わず息を呑む。
「ぜひ君達キュアヒーローの活動を記録させてほしいんだ!」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる