カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

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十章 罪と償い

124話 冤罪

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「その爆弾はどこに!? 今すぐになんとかしないと!!」
「あぁ。だがそれはかなり難しいね。まずバレたら時刻を早めてでも強行するだろうし、爆弾の数も中々だ」
「そ、そんな……」

 あの商店街には色々と思い入れがある。喫茶店もそうだが、今でもまだ頑張っているお店もあり、そこの人達に良くしてもらっているのでなんとしてでも助けたい。

「そんな顔をしないでくれ。私がいつ不可能だと言った? 難しいがなんとかする方法ならある」

 彼女は話しながらスパイが使ってそうなインカムや、爆破処理で使えそうな工具を取り出す。
 
「私がハッキングして爆破犯の見ているカメラの情報を操作する。その隙に君が爆弾を解除してくれ」
「いやでもボク爆弾解除なんてしたことないよ?」
「奴らの使っている爆弾の種類は特定してある。私の指示に従ってくれればそれでいい」

 あれだけの悪事を働いた美咲さんがこんなにも善行に身を尽くすのには正直違和感を感じるが、かといってここで協力しないのは商店街にいる人達を見捨てることとなりそんな選択肢はボクの中にはない。

「私は今から秘密のラボに戻ってそこから君に指示を飛ばすよ。君に道を知られるわけにはいかないから先に商店街まで向かって行っててくれるかな?」
「……分かったけど、もうこれっきりなんてことしないでよ。美咲さんにはしっかり罪を償ってもらうから」

 ここだけは譲らずボクは敢えて睨みを効かせ牽制する。

「まぁ……選択肢の一つとしては考えておくよ」

 手応えのある返答だ。ボクは倉庫を飛び出しまたマラソンを始めて商店街まで駆け抜ける。

「生人君。今どこにいる? できれば商店街にあるドラッグストアの駐車場で分かりやすくジャンプでもしてもらいたいのだが」

 時刻は九時過ぎ。ボクがここに着いてから数十分したあたりでやっとインカムから声が聞こえてくる。

「分かった。すぐに行くよ」

 どこのことを言っているかはすぐに分かったので、そこまで行き監視カメラに向かってジャンプしながら手を振る。
 周りからは好奇の目で見られるが、今はそんなこと気にしていられない。

「見えたよ。じゃあ今から指示する場所に向かってくれ」

 それからボクは指示通りに動き、次々に仕掛けられた爆弾を撤去して鞄に入れていく。言われた通り動くだけなのでそこまで辛くなく、爆弾もあと一つというところまでくる。

「それが最後だ。今までのと同じ型だから先程と同様の手筈で頼む」
「うん! えーっとまずは……」
「生人君! 伏せろ!」

 突如インカムから轟音が鳴り響く。ずっと指示通りに体を動かしていたので考えるより先に体が動く。
 ボクの頭上を誰かが通り過ぎ、そのまま足をブレーキ代わりにして着地する。

「お前……ここで何をしている?」
「あれ? 喫茶店に居たお姉さん?」

 ボクに飛び蹴りを放ったその人物は先週喫茶店に来ていたあのお姉さんだ。

「君は生人君? 何故ここに……その鞄……そういうことか」

 彼女はボクの解除済みの爆弾がたっぷり入った鞄と、ボクの手元を見て目つきを鋭くさせこちらに殺気を放ってくる。

「君は峰山に騙され悪用されるかもしれない。そう思って忠告したんだが……前提が間違ってた。
 まさか君が峰山の手下だったとはね」
「えっ? あ、いやこれは違っ……」

 ボクは弁明しようとするもののそれよりも先に顔めがけて膝が飛んでくる。
 立膝の姿勢から後方に跳びながら立ち上がり、追加で繰り出される連撃に対応する。その動きは明らかに素人のものではなく、どこかで学びそれを殺人のために改造したものだ。

「はぁっ!!」

 動揺もあったせいか一瞬の隙を突かれ、喉に人差し指と中指がめり込む。

「アガッ!!」

 喉を潰されてしまい、それでも攻撃の手は休まず空を切り裂く音を出す蹴りがボクの頭部を捉える。
 ボクは裏路地の壁に体を、特に頭部を叩きつけられ血が壁にべっとりとつく。

「まだ立つか……殺す気でやったんだがな」

 実際ボクじゃなければ、普通の人間ならあれをくらったら確実に死んでいる。
 流石にこの人の前で傷を再生させるわけにもいかず、ボクはとにかく弁明しようと解除途中だった爆弾を指差す。

「そこ……爆弾……工具……解除……」

 だが喉を潰されてしまっているせいで上手く言葉が出てこない。

「何を考えてるかは分からないが、このままこれを爆破させるわけにもいかない。動くなよ? 動いたら今度は両目を潰す」
「ここは言う通りにしといた方が良さそうだね。解除は彼女に任せて、死角に入ったら音が出ないように傷を治したらいいよ。
 ギリギリのところで急所を外したとか言っておけばバレないさ」

 言葉で返答するわけにもいかず、ボクはお姉さんにバレないようゆっくりと傷を完治させる。

「よし。終わったな。じゃあ次はお前だが……」

 爆弾の件はなんとかなったが、また目の前に問題が立ち塞がる。
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