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十章 罪と償い
123話 汚職
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あの電話の内容。ボクが初めて美咲さんの頬に口付けをした場所。
きっとそれは小学生の時の運動会の時のことを言っているのだろう。
「はぁ……はぁ……ここだよね?」
全力で走り過去に通っていた小学校に着き、肩で息をしながら辺りを見渡し美咲さんを探す。
しかし現在見える範囲には彼女は居ない。それもそのはず。彼女は見つかったら色々とまずい存在。一目で分かる場所には居るはずがない。
「だとしたら物陰とか……倉庫とか?」
ボクはウサギ小屋の後ろや倉庫の中を探す。
「やぁ。来てくれたんだね。嬉しいよ」
美咲さんは暗い倉庫の奥の方に、バスケットボールが入っている籠にもたれかかっていた。
「美咲さん……急に呼び出して何の用?」
「そんなに警戒しなくてもいい。少なくとも今は君達の敵ではないとこの前も言ったろう?」
彼女は今変身道具を身につけていない。こちらに敵意もなくそれを表すようにすぐに動ける体勢ではない。
「ボクはこれから峰山さんとデートに行くはずだったのに、それを無碍にしてまでする用事なの?」
「あぁもちろん……って、え? デート!?」
美咲さんの余裕たっぷりの表情が崩れ、姿勢も崩れてガタンと籠を大きく鳴らす。
「え? き、君達付き合っていたのかい? 確かに仲は良かったけど……そうか。もう生人君もそんな歳になって……」
「いや今はそういう話じゃなくて、何か伝えることがあったからボクを呼んだんだよね?」
動揺し、しみじみと思いに耽る彼女の感情を妨げて話題の軌道修正をする。
「いや君の信用を得るためにいくつか情報提供をしようと思ってね。この前から色々進めていって確定的なことも増えてね」
「情報って……?」
美咲さんの持ってきた情報だ。きっと価値があるものだろう。
「まずはこれを見てほしい」
美咲さんはスマホを取り出しあるメールの画面を見せてくれる。
「これは峰山水希と反社会的勢力の奴らのメッセージだ」
美咲さんの口から意外な人物の名前が出る。ボクに映画のチケットをくれた水希さんの名前だ。それと何やら物騒な用語も出てくる。
そして見せられたメールの内容はより物騒なものだった。
『お金は振り込んでおきました。例の爆破の件は頼みましたよ』
『えぇ。いつも水希さんにはお世話になってますから。おかげで族上がりの俺達も良い飯食えてますし』
『これからも良い関係でいましょう。仕事はきっちり頼みますよ』
美咲さんが何回か写真を変えてそのメールの全貌を見せてくれる。水希さんが裏社会の人間とやりとりして悪どいことをいくつも頼んでいる。
脅しや事故の偽装。それにハニートラップや政治家や警察とズブズブに繋がっていると思われる賄賂関連のメールや、大臣などに自分自身の体を売っていると思われるものもある。
「何これ……?」
「安心してくれ。十中八九寧々君はこういうことには関わっていない。
だが水希君は……彼女はもう完全に裏の人間だ。まぁ私が偉そうに言えることではないがね」
この前会った時、不器用ながら彼女には妹への愛情を感じ取ることができた。彼女はボクに妹を頼むとも言った。
だからこそその時の彼女とこのメール上の彼女との差異に頭が混乱してしまう。
メールの日付を見るにボクが初めて会った時からもう何度も犯罪教唆に手を染めている。
「ちなみにこれは捏造ではないよ。証拠なら時間をくれればいくらでも……」
「いや、美咲さんはこういう嘘はつかない。信じるよ。それで、これを見せてあなたはボクに何を……?」
「話が速くて助かるよ。水希君は君がよく行っていたあの喫茶店がある商店街、あそこを爆破しようと計画している。ほら、メールのここの部分に書いてあるだろう?」
先程サラッと読み飛ばしてしまっていた部分に確かにその旨の内容が書かれている。
「でも何でそんなことを?」
「あそこは建築業も手掛けている企業だ。あそこ一帯の土地を買って利用しようとしてるんだ。だが立ち退きが上手くいっていないみたいでね」
先週喫茶店に行った時、お婆さんが立ち退きに応じないから嫌がらせが酷いと嘆いていた。
点と点が線で繋がり、この話により説得力を持たせる。
きっとそれは小学生の時の運動会の時のことを言っているのだろう。
「はぁ……はぁ……ここだよね?」
全力で走り過去に通っていた小学校に着き、肩で息をしながら辺りを見渡し美咲さんを探す。
しかし現在見える範囲には彼女は居ない。それもそのはず。彼女は見つかったら色々とまずい存在。一目で分かる場所には居るはずがない。
「だとしたら物陰とか……倉庫とか?」
ボクはウサギ小屋の後ろや倉庫の中を探す。
「やぁ。来てくれたんだね。嬉しいよ」
美咲さんは暗い倉庫の奥の方に、バスケットボールが入っている籠にもたれかかっていた。
「美咲さん……急に呼び出して何の用?」
「そんなに警戒しなくてもいい。少なくとも今は君達の敵ではないとこの前も言ったろう?」
彼女は今変身道具を身につけていない。こちらに敵意もなくそれを表すようにすぐに動ける体勢ではない。
「ボクはこれから峰山さんとデートに行くはずだったのに、それを無碍にしてまでする用事なの?」
「あぁもちろん……って、え? デート!?」
美咲さんの余裕たっぷりの表情が崩れ、姿勢も崩れてガタンと籠を大きく鳴らす。
「え? き、君達付き合っていたのかい? 確かに仲は良かったけど……そうか。もう生人君もそんな歳になって……」
「いや今はそういう話じゃなくて、何か伝えることがあったからボクを呼んだんだよね?」
動揺し、しみじみと思いに耽る彼女の感情を妨げて話題の軌道修正をする。
「いや君の信用を得るためにいくつか情報提供をしようと思ってね。この前から色々進めていって確定的なことも増えてね」
「情報って……?」
美咲さんの持ってきた情報だ。きっと価値があるものだろう。
「まずはこれを見てほしい」
美咲さんはスマホを取り出しあるメールの画面を見せてくれる。
「これは峰山水希と反社会的勢力の奴らのメッセージだ」
美咲さんの口から意外な人物の名前が出る。ボクに映画のチケットをくれた水希さんの名前だ。それと何やら物騒な用語も出てくる。
そして見せられたメールの内容はより物騒なものだった。
『お金は振り込んでおきました。例の爆破の件は頼みましたよ』
『えぇ。いつも水希さんにはお世話になってますから。おかげで族上がりの俺達も良い飯食えてますし』
『これからも良い関係でいましょう。仕事はきっちり頼みますよ』
美咲さんが何回か写真を変えてそのメールの全貌を見せてくれる。水希さんが裏社会の人間とやりとりして悪どいことをいくつも頼んでいる。
脅しや事故の偽装。それにハニートラップや政治家や警察とズブズブに繋がっていると思われる賄賂関連のメールや、大臣などに自分自身の体を売っていると思われるものもある。
「何これ……?」
「安心してくれ。十中八九寧々君はこういうことには関わっていない。
だが水希君は……彼女はもう完全に裏の人間だ。まぁ私が偉そうに言えることではないがね」
この前会った時、不器用ながら彼女には妹への愛情を感じ取ることができた。彼女はボクに妹を頼むとも言った。
だからこそその時の彼女とこのメール上の彼女との差異に頭が混乱してしまう。
メールの日付を見るにボクが初めて会った時からもう何度も犯罪教唆に手を染めている。
「ちなみにこれは捏造ではないよ。証拠なら時間をくれればいくらでも……」
「いや、美咲さんはこういう嘘はつかない。信じるよ。それで、これを見せてあなたはボクに何を……?」
「話が速くて助かるよ。水希君は君がよく行っていたあの喫茶店がある商店街、あそこを爆破しようと計画している。ほら、メールのここの部分に書いてあるだろう?」
先程サラッと読み飛ばしてしまっていた部分に確かにその旨の内容が書かれている。
「でも何でそんなことを?」
「あそこは建築業も手掛けている企業だ。あそこ一帯の土地を買って利用しようとしてるんだ。だが立ち退きが上手くいっていないみたいでね」
先週喫茶店に行った時、お婆さんが立ち退きに応じないから嫌がらせが酷いと嘆いていた。
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