カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

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九章 新たなる脅威

119話 不明

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「なるほど。まとめると、遊園地に突如出現したサタンを生人と寧々の二人がかりで倒したってことだな。
 よくやってくれた。後処理やどこから来たのかはこちらが調べる。じゃあみんな解散してくれ」

 美咲さんが姿を眩ましてから数時間後。お昼に用意されたおにぎりを食べてから緊急会議を始め、たった今終わったところだ。
 美咲さんの件に関してはボクも峰山さんも誰にも話していない。まだどうしていいのか分からなかった。

「生人さん……あの件で少し話が」

 誰にも悟られないよう言葉を濁してボクに話しかけてくる。

「あのことだよね。峰山さんの部屋でいい?」
「はい……」

 みんなには何も告げず、ボク達は後ろめたさを抱えながらも部屋に入りソファーに座る。

「わたくしは美咲さんのことを指揮官に伝えようと思います」

 彼女は開口一番に手短に自分の意思を伝える。迷いなどなく、そしてその意見はボクとは真反対のものだ。

「ボクは伝えない方が良いと思う」
「生人さんは悪に与するのですか?」

 彼女は険しい顔つきでこちらを睨んでくる。だがボクはそれに臆することなく自分を貫く。彼女に嘘は吐きたくない。本当の自分を見ていて欲しいから。

「もちろんあの人が何か悪さするんだったらボクは容赦しないし、何を言われようと完膚なきまでに倒すよ。
 でも、もしあの人が味方について、罪を償わせる代わりにDOの手助けをさせられたらすごく心強いと思うんだ」

 倫理観や善性を疑われる発言だとは自分でも感じている。もしかしたら心の奥底ではまだあの人と一緒に居たいなどと子供らしい考えが眠っているのかもしれない。
 それでもボクの言葉に嘘偽りはない。実際美咲さんの発明力は凄まじい。彼女が作り出した技術がなければ変身すらできていない。

「確かにあの人の力があれば、例の巨悪とやらにも対抗できるかもしれません。ですがそれは彼女が協力してくれるのならです。
 そもそもあの人が言っていた巨悪すらもいるかどうかすら分かってません」
「でも……嘘を言っているようにも見えなかったんだ」

 根拠が弱いのは分かっている。
 それでも十年ずっと一緒に暮らしてきた仲だ。あの時の彼女は嘘を言っているようには思えない。

「ならわたくしはあなたを信じることにします。美咲さんのことは到底信用できませんが、あなたの考えを信用することにします」
「峰山さん……!!」
「でも、もしその判断が間違っていた時は二人で責任を負いましょう。わたくし達はいつでも一緒です」

 とりあえずは美咲さんのことは二人の秘密として黙っておくことにして、彼女が何か悪いことを企んでいると判明し次第父さんに報告するという方針に決まる。
 話し合いの後少しゲームなどで遊んでからボク達は解散して、今日はボクが夕飯の当番なので食材を自分の部屋に取りに行く。

「よっ生人。ちょっといいか?」

 自分の部屋に入る直前に父さんから声をかけられる。

「どうしたの父さん?」
「何かみんなに隠してることないか?」

 ドクンと胸が高く鳴る。どこで勘付かれてしまったのだろうか。思考が頭を駆け巡る。
 
「えっ……な、何でそう思うの?」
「さっきから何か悩んでるようだったからかな。寧々と口喧嘩でもしたのか? 
 まぁ恋愛っていうのはトラブルの種だからな。でもそういうのは大概なんとかなるもんだ。気にするなよ」
「う、うんちょっと喧嘩しちゃって。でももう仲直りしたから大丈夫だよ!」

 父さんに嘘をついたのはのはいつぶりだろうか。ボクは今どんな顔をしているのだろうか。
 そんなこと今の状況では分かりようもなく、ボクはできる限り自然な笑顔を浮かべる。
 
「大体事情は分かったよ。何かオレに言えない悩みがあるんだろ? 無駄に詮索はしないさ。
 でもな、オレは今までもこれからも、何があってもお前の父親だ。だからもし本当に辛くなったらオレに言ってくれよ。
 可愛い息子からの相談ならいくらでも付き合ってやるさ」

 父さんはボクの頭を撫でてくれる。
 やはり父さんには美咲さんのことは伝えられない。もし伝えたら責任感や正義感の強い彼なら職務を全うしようとするだろう。
 その工程で正体不明の巨悪にバレる可能性は極めて高い。

 だからこそこのことはボクと峰山さんの内で留めておくしかない。

 心の中で父さんへの謝罪を繰り返しながら、ボクは自分の部屋に入るのだった。
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