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九章 新たなる脅威

117話 怪人武者

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「何でここにサタンが!? 早く行かないと!!」

 ボク達は反射的にランストを取り出そうとするが、貴重品入れのロッカーに入れていたことを思い出す。

「くっ……どうしましょう? コースターが終わるまでまだ時間が……」
「峰山さんはここにいて! コースターが終わったら避難誘導をお願い!」

 ボクは寄生虫の力をオンにして安全レバーを一時的に持ち上げてそこから飛び降り、レールを走って下り入口の方まで転がり降りる。

「ちょっと緊急事態だからすみません!」

 ボクはロッカーを殴り穴を開けてそこからランストが入ったカードを取り出す。
 カードを具現化させランストを装着してカードを二枚セットする。

[ラスティー レベル30 ready…… アーマーカード ドラゴンホッパー レベル49 start up……]

 お馴染みの龍とバッタの性質を合わせ持った鎧を纏い、サタンがいる方へ走って向かう。
 サタンは先程見た場所から動いておらずヒーローショーを行う予定だったステージの方に居た。ただどうやらボクは遅れてしまったらしくもう被害者が出てしまっている。

「助けて……ヒーロー……」

 小さな子供がステージの上で倒れており、サタンに頭を踏まれ動けなくなっている。
 奴は灰色の鎧を装備した武者のような見た目で、両手には鋭く光る日本刀を持っている。
 それは一瞬ランストを使用した変身者だと見間違えそうになるほどだが、ランストを装備していないので間違いなくサタンだ。

「その子から離れ……」

 ボクはすぐに壇上まで向かい助けようとするが、ボクがどんな動きをしようと間に合わないほど速く奴は子供の頭を踏み抜く。
 頭の中身が辺りに飛び散る。舞台の上で倒れている数体の死体の一つへとその子も加わる。

「お前っ……!!」

 ボクは手を伸ばしてくれた子を救えなかった無念と怒りを胸に階段から跳び降り舞台にいる奴に蹴りをくらわす。

「硬っ!!」

 しかし奴は少し仰け反っただけでダメージはこちらの方が大きい。
 奴の鎧は想像よりも遥かに硬く、ボクは鋼鉄すらも貫く気でやったのに足が痺れ鎧には傷一つつかない。
 すぐさま奴の反撃が始まり、ボクはギリギリのところで袈裟斬りを躱す。

[ブレイドモード]

 アムバイスを使用して剣を取り出し奴の斬撃に応戦する。
 だが剣の腕は奴の方が数手上手でボクの体は何度も斬りつけられる。胸に鋭い火傷のような痛みが走る。掠っただけでもこのダメージ。まともにくらったら致命傷は避けられない。

[ランスモード]

 ボクは一旦考え直し、剣を消して槍を出現させる。
 剣と槍では相性的に槍の方が圧倒的に有利だと聞いたことがある。それが本当ならやってみる価値はある。

「うぉりゃ!!」

 リーチはこっちの方が圧倒的に上。反射神経などもこちらに分がある。奴はこの状況に対応できず戦況が一転する。

「このステージはお前のものじゃない! こんな凄惨なことをするための場所じゃない!」

 ボクは憤りを露わにして槍で何発も奴の体を貫く。一点集中で同じところを突きまくったおかげで鎧に傷がつき奴も動揺を隠せていない。

「ちが……う。ここは……俺の……ステージ……だぁぁ!!」

 奴が突然人語を発する。大気を震わせるほどの叫び声を出しあまりの騒音にボクは耳を塞ぐ。

「言葉を話せるタイプのサタンか……」

 前にも同じタイプのサタンを見たことがある。確か田所さんと潜ったレースステージのダンジョンでも人語を話すサタンが居た。
 でも情をかけたり手加減をする必要はない。こいつは今ここで倒さないと被害が拡大してしまう。
 
 気を引き締めてこのまま奴を倒そうと意気込んだのはいいが、奴に物理現象を無視した不自然な変化が起こり出す。
 鎧が脱げそれが回転して別の形状へ変わり奴の持っていた日本刀が二本の槍へと形を変える。

「何だそれ……そんなのあり!?」

 ボクは二刀流ならぬ二槍流とでも呼称しようか、そんな急に変える奴の戦い方に対処しようにも上手く動きが合わせられない。
 ボクが持っていた槍は弾かれ、胸に鋭い一撃をもらってしまう。

「生人さん!!」

 上空から峰山さんの声が聞こえてくるのと同時に奴の頭部に数本の矢が突き刺さる。

「近くにもう人はいません! 助けに来ました!」
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