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九章 新たなる脅威

113話 感染

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「椎葉さんまずいよ!! 日向先輩が昨日の夜から行方不明だって!!」

 ボクはDO待機室で椎葉さんを見つけるなり脱兎の如く駆け寄る。

「アタシ達と別れた後から行方知れずってこと?」
「う、うん。誰も行方を知らなくて……」
「まぁでもそんな心配するようなことじゃないんじゃないかな?」

 焦るボクとは正反対に彼女は冷静に、冷たいとも取れる対応をする。

「昨日はしゃぎすぎて疲れてまだ寝てるとかそういう可能性もあるでしょ?」
「そ、それはそうだけど……とにかく日向先輩の家に……」

 荷物を部屋に投げ入れて先輩の家に走って向かおうとするが、ランストがアラームを鳴らし振動する。
 
「生人大変だ! またサタンが現れた! この前の山付近の街に確かな目撃情報があった!」

 父さんのその連絡を聞き、ボクはある一つの不安が浮かんでくる。
 あの山の近くは日向先輩が住んでいる所だ。もしかしたら彼女は昨日そのサタンに何かされてしまったのかもしれない。

「行こう椎葉さん!!」
「う、うん……そうだね」

 体調が悪いのか元気がない彼女と共に変身して目撃情報があった場所まで向かう。
 そこにはもう既に峰山さんと風斗さんが到着していた。

「そっちの状況は!?」
「わたくしが空から確認した限りでは見当たりませんでした。情報では頭と胴体、足で色が違う不気味な身体の構造をしていたようです」

 色が違う……模様とかが体に入ってるのかな?

「今から俺達がやるべきことは一つ。いち早くサタンを見つけ出すことだ。
 指揮官が出してくれた緊急令で市民はある程度避難している。全員別れて見つけたら連絡して取り囲んで確実に仕留めよう」

 風斗さんの指示のもとボク達はそれぞれ別方向へと散る。
 ボクはホッパーの脚力を用いて高く跳びながら辺りを探索する。そうしているうちにいつのまにか無意識に日向先輩の前に来てしまっていた。

「大丈夫かな……いやきっと大丈夫だ。早くサタンを倒して日向先輩を探さないと」

 また再び跳んで探索を再開する。ただ見えてくるのは人気の少ない道と空を飛ぶ鳥達。
 その鳥の中の一匹がこちらに高速で突っ込んでくる。
 衝突しては鳥が怪我してしまうので身を捩り躱そうとするが、ボクはそいつが近づくにつれただの鳥ではないことに気づき戦慄する。
 
 奴は頭部に羽が生えている奇妙な形状をしており、手にはネコ科類特有の鋭い鉤爪が生えており足はボクと同じバッタと類似しているものだ。

「な、なんだあいつは!?」

 今まで見てきたサタンの中でも群を抜いて不気味な容姿。それに畏怖してしまい反応が遅れてしまう。
 奴は空中でボクのことを啄みどこかへ持ち去ろうと方向転換する。

「クソッ! 離せ!!」

 ボクは隙だらけの奴を何発か殴り離させる。数回転してから地面に着地し奴と対峙する。
 奴は空中をクルクル回りながら再びこちらに向かって急降下してくる。
 ボクはギリギリのところで避け奴を地面に激突させようとする。しかし奴は地面にその屈強な足で着地してそれをバネして回避した方向へと跳んでくる。

[ブレイドモード]

 アムバイスをタッチして剣を出現させ、奴の迫りくる爪を剣で受け止める。

「はぁっ!!」

 剣を強く振り上げ、一切の隙を与えず鳩尾に膝蹴りを決める。その威力、タイミングは完璧で奴は吹き飛んでいく。
 日向先輩の家の二階窓へと。

「しまっ……!!」

 窓は大きな音を立てて割れ、奴は室内へと入り込んでしまう。
 ボクはもしかしたらいるかもしれない日向先輩や、その部屋にいる動物達に危険が及んでしまうことを恐れてすぐに二階のベランダに跳び込む。

「あぁ……うずぅ……らぁ……」

 部屋の中のゲージの一つが突き破られている。そこに居たはずのうずらは奴の手に握られている。

「やめっ……」

 うずらは抵抗するも虚しく握り潰される。血が辺りに飛び散り奴は胴体にその血を塗りたくる。
 完全に狂っている。それに日向先輩が大事にしていたうずらを殺されたことでボクは怒りでどうにかなりそうになる。

「お前よくも……!!」

 奴をここから外へ投げ飛ばして必殺技で消し炭にしてやろうとするが、奴が宙にふんわりと浮かんだかと思えばものすごい推進力を生み出しボクを跳ね飛ばし窓から外へ逃げる。
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