カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

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九章 新たなる脅威

110話 致命傷

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[スキルカード ウィングバースト]

 辺りに鳥の羽が舞い、それら全てが蛇の方を捉える。次々に止めどなく羽が飛んでいきまるで鋼鉄でできているかのように皮膚に突き刺さる。
 サタンと日向先輩の実力差は明白。ボクが加勢する必要もないだろう。彼女も一人でやる気のようだ。
 ボクは二人を視界に入れながらこの場を離れランストを起動させる。

「父さん!! 新しいダンジョンが出現した!! 場所はどこか分かる!?」
「は? 何言ってるんだ? ダンジョンの反応なんてないぞ?」

 父さんに緊急連絡を入れるが返ってくるのは困惑の声。

「機械を再起動して調べてみたが、ダンジョンの反応はない……だがサタンがいたんだな? 昔の奴が逃げて隠れていたのか……? とにかくそっちにみんなを向かわせるから対処を頼む」
「了解! ボクも……」

[必殺 ホークドロップ]

 日向先輩は全身に青白いオーラを纏う。それは鳥の頭部の形に変形し、嘴が奴の体を咥える。
 そこから羽を動かし宙へと一気に急上昇し、そこから急降下して地面に叩きつける。奴は地面に潰れ内臓を撒き散らしながら消滅してカードをドロップする。

「加勢する必要もなかったね……」
「うん。弱いサタンだったから私でもなんとかなった。それより……この子を埋めてあげよう」

 それから数分で簡易的なお墓を作ってあげて、終わるのと同時に峰山さん達がここに到着する。
 日向先輩は先に帰らせてDOで山の周りや中を捜索したが、これ以上サタンが見つかることもダンジョンが見つかることもなかった。


☆☆☆


「日向先輩いますか?」
 
 あれから数日あの事件を詳しく聞かれ忙しい日々が続いていた。そしてやっとできた暇な時間。ボクは日向先輩が最近学校を休みがちになっていると聞き心配になりこうして家まで足を運ばせた。

「ん? 生人君か……どうかしたの?」

 扉から少し出した彼女の顔はほんのり赤くなっていて、そこまで酷くはなさそうだが健康だとは断言できない。

「日向先輩が最近学校来てないって聞いて。心配で見に来ちゃった」
「別に大丈夫だよ。ちょっと熱出しただけ……」
「風邪薬とかヨーグルトとか持ってきたよ!」

 ボクは手に持ったビニール袋を揺らす。先輩はマスクをつけ扉を開き外に出てくる。

「ありがとう……ちょっと家上がってってよ。見せたいものがあるからさ」
「見せたいもの? じゃあ上がります!」

 何を見せられるかは分からないが、先輩が飼っている動物を見たいという気持ちに駆られボクは家に上がらせてもらう。

「……上げておいて言うのもなんだけど、生人君はもうちょっと警戒した方がいいんじゃないかな? 一人暮らしの先輩の家にホイホイついて行くなんて不用心だよ?」
「でも日向先輩なら酷いことはしないでしょ? それに友達の家に上がるのの何が悪いの?」

 友達という言葉に先輩は表情を緩める。照れ隠しのようにマスクを上に顔を隠すようにつけ直し、先輩はボクを自室へと案内する。
 部屋にはたくさんの動物がいて、ハムスターやインコにこの前言っていたうずらもいる。

「ほらこの子。前言ってたうずら。可愛いでしょ?」

 先輩はうずらを取り出しボクの方まで持ってきてくれる。
 美しくモフモフな毛並み。丁寧に世話をしているのが分かる。

「ピピ、ピピピピィ!!」

 そしてあまり可愛らしくない鳴き声を出し、先輩の手から飛び立ちボクの頭の上に乗る。

「珍しいね。初めて会う人には緊張したりすることが多いのに……生人君ってどこか小動物っぽいし波長が合うのかな?」
「小動物っぽいのボク?」
「うんハムスターみたいで可愛いよ」

 褒められているのかからかわれているのか分からないが、先輩がボクに対して悪い感情を抱いてないことだけは分かる。

「まぁこの子達も見せたかったんだけど本当に見てほしいものはこっち」

 先輩は自分の服の中に手を入れ背中に回しゴソゴソと動かす。そうして服の中から青色のブラジャーが引っ張り出されそれを適当な場所に放り投げる。

「日向先輩? 何してるんですか?」

 先輩はボクの制止を無視して上着に手をかける。

「日向先輩!? 何してるんですかまずいですよ!?」

 服を脱ごうとする彼女の手を掴み、おへそくらいまで出させていた上着を下げさせる。

「別に胸を見てほしいとかそういうのじゃないから。見てほしいのはこれ」

 先輩がボクの手を振り払いガバッと上着を上げる。
 胸が露出したなど気にはならなかった。目の前の異様に膿んだ傷を目にしてしまっては。
 左胸の乳輪近くから斜めに脇腹までの切り裂き傷。黄色に膿んでいて痛々しい傷跡だ。
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