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九章 新たなる脅威
109話 秘めた想い
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「せいどういつせいしょうがい?」
「生人君は知らないか。簡単に言うと心と体の性別が一致しないってことだよ」
「つまり先輩は自分のことを男だと思ってるってこと?」
「簡単にまとめるとそうなるね」
思い返してみれば日向先輩には彼氏がいるという話を聞いたことがない。それに今着ている私服も女性ものっぽさがあまりなく、男性用とも女性用ともとれるものだ。
「私は昔から女の子と遊ぶよりも男の子と外で遊んだりする方が好きだった。今だって部活の子達と話すよりこうやって君と話す方が楽しい」
「でもそれって一つの個性なんじゃないの? ボクは女の子でも男の子向けのものが好きでも良いと思うし、なによりボクは先輩のこと友達として好きだよ?」
夕日に照らされ強調された水滴が一粒彼女の頬を伝う。
「ありがとう。そう言ってくれたのは君が初めてだよ。
今までこのせいで本当に苦労してきた……女の子なのに男の子の服を着てるってからかわれたり、私はやりたいことをやっていて、誰にも迷惑をかけていないのにいじめられたり……親も助けてくれなくて一人ぼっちだった」
ボクも親に虐待され一人ぼっちで苦しかった時期があった。いや苦しかったのではない。ひたすらに虚無だった。
だから、何もないから自殺しようとしたのだし、彼女には同じ道を辿ってほしくはない。
「でも今は一人ぼっちじゃないよ。少なくともボクがいるからね」
「ふふっ……本当に心強いよ。それで相談の本題なんだけれど、私好きな人がいるんだ」
まだ本題じゃなかったのかと思うのも束の間。
好きな人。この場合は恋愛対象という意味だろう。それについての相談。流石のボクでも何を言われるか大方察しがつく。
「実は私アイが好きなんだ。とっても可愛くて、あのキラキラした笑顔に元気をもらえた。
私の憧れであるのと同時に、心から、本当に好きになっちゃったんだ」
女の子が女の子を好きになる。ボクはそういった人に今まで会ってこなかったので実感は湧かないし上手く飲み込めない。だが彼女が真剣に恋をしているということだけは理解できる。
「ならボクはその恋を応援するよ! 手伝えることがあったら何でも言ってよ!」
「実を言うと、あのバレンタインに味見で渡したあれ、本当はホワイトデーにアイに渡すものの試作品だったの」
「なるほどそういうことだったのか……あれとっても美味しかったよ!」
ならバレンタインにあの試作品をボクに渡したことにも納得だ。
「ボクでよければいつでも試食するよ! 食べるの大好きだし」
「お言葉に甘えてそうさせてもらうね」
先輩は秘密を打ち明けられて満足そうな笑みを浮かべる。
そうして話していると近くの草むらが動き出し小さな生き物が出てくる。緑色の可愛らしい小さなカエルだ。
先輩は目を輝かせ反応を示す。
「あっ……カエルだ。ここら辺にはあんまりいないはずだけど……ほら。こっちおいで」
先輩が優しく声をかけるとカエルは彼女の方に跳ねながら向かい膝の上にちょこんと乗る。
「生き物好きなんですか?」
「子供の頃から生き物と触れ合うのが好きでね。家にはうずらとかいるよ」
「うずらか……」
あの小さくてモフモフしてる鳥だよね……DOの部屋はペット禁止だから飼えないな……残念。
話を聞いてペットが欲しくなってきたが、それができず心を沈ませる。
それを紛らわすように再び草むらが動き出す。
「日向先輩避けて!!」
普段から戦闘慣れしているボクはすぐに飛び出してきた奴に対応できたが、日向先輩は反応が遅れてしまう。
飛び出してきたのは人くらいのサイズの蛇型のサタンだ。本来あるはずのない手足にその巨体。一目でサタンだと分かる。
その蛇の牙が日向先輩の胸を掠る。
「やめろっ!!」
ボクはその蛇の腹に蹴りを入れ先輩から離す。
先輩は皮膚が少し持っていかれただけでそこまで大した傷ではないし本人も大丈夫そうだ。
「どうやら毒もないみたいだね。でも……」
先輩が咄嗟に持ち上げたカエル。体の真ん中に牙を突き立てられ即死してしまっている。
「生人君下がってて。こいつは許せない。私が殺す」
日向先輩はランストを取り出し装着し、デッキケースからカードを二枚取り出す。
[キング レベル1 ready…… アーマーカード ホーク レベル6 start up……]
まず簡易的な鎧が出現し先輩の体を覆う。そこから王冠が空から降ってきて頭に被さる。
首元から首元にかけて赤いマントが生えてきて、そこのマントを突き破るようにして鳥の羽が生え出す。
「生人君は知らないか。簡単に言うと心と体の性別が一致しないってことだよ」
「つまり先輩は自分のことを男だと思ってるってこと?」
「簡単にまとめるとそうなるね」
思い返してみれば日向先輩には彼氏がいるという話を聞いたことがない。それに今着ている私服も女性ものっぽさがあまりなく、男性用とも女性用ともとれるものだ。
「私は昔から女の子と遊ぶよりも男の子と外で遊んだりする方が好きだった。今だって部活の子達と話すよりこうやって君と話す方が楽しい」
「でもそれって一つの個性なんじゃないの? ボクは女の子でも男の子向けのものが好きでも良いと思うし、なによりボクは先輩のこと友達として好きだよ?」
夕日に照らされ強調された水滴が一粒彼女の頬を伝う。
「ありがとう。そう言ってくれたのは君が初めてだよ。
今までこのせいで本当に苦労してきた……女の子なのに男の子の服を着てるってからかわれたり、私はやりたいことをやっていて、誰にも迷惑をかけていないのにいじめられたり……親も助けてくれなくて一人ぼっちだった」
ボクも親に虐待され一人ぼっちで苦しかった時期があった。いや苦しかったのではない。ひたすらに虚無だった。
だから、何もないから自殺しようとしたのだし、彼女には同じ道を辿ってほしくはない。
「でも今は一人ぼっちじゃないよ。少なくともボクがいるからね」
「ふふっ……本当に心強いよ。それで相談の本題なんだけれど、私好きな人がいるんだ」
まだ本題じゃなかったのかと思うのも束の間。
好きな人。この場合は恋愛対象という意味だろう。それについての相談。流石のボクでも何を言われるか大方察しがつく。
「実は私アイが好きなんだ。とっても可愛くて、あのキラキラした笑顔に元気をもらえた。
私の憧れであるのと同時に、心から、本当に好きになっちゃったんだ」
女の子が女の子を好きになる。ボクはそういった人に今まで会ってこなかったので実感は湧かないし上手く飲み込めない。だが彼女が真剣に恋をしているということだけは理解できる。
「ならボクはその恋を応援するよ! 手伝えることがあったら何でも言ってよ!」
「実を言うと、あのバレンタインに味見で渡したあれ、本当はホワイトデーにアイに渡すものの試作品だったの」
「なるほどそういうことだったのか……あれとっても美味しかったよ!」
ならバレンタインにあの試作品をボクに渡したことにも納得だ。
「ボクでよければいつでも試食するよ! 食べるの大好きだし」
「お言葉に甘えてそうさせてもらうね」
先輩は秘密を打ち明けられて満足そうな笑みを浮かべる。
そうして話していると近くの草むらが動き出し小さな生き物が出てくる。緑色の可愛らしい小さなカエルだ。
先輩は目を輝かせ反応を示す。
「あっ……カエルだ。ここら辺にはあんまりいないはずだけど……ほら。こっちおいで」
先輩が優しく声をかけるとカエルは彼女の方に跳ねながら向かい膝の上にちょこんと乗る。
「生き物好きなんですか?」
「子供の頃から生き物と触れ合うのが好きでね。家にはうずらとかいるよ」
「うずらか……」
あの小さくてモフモフしてる鳥だよね……DOの部屋はペット禁止だから飼えないな……残念。
話を聞いてペットが欲しくなってきたが、それができず心を沈ませる。
それを紛らわすように再び草むらが動き出す。
「日向先輩避けて!!」
普段から戦闘慣れしているボクはすぐに飛び出してきた奴に対応できたが、日向先輩は反応が遅れてしまう。
飛び出してきたのは人くらいのサイズの蛇型のサタンだ。本来あるはずのない手足にその巨体。一目でサタンだと分かる。
その蛇の牙が日向先輩の胸を掠る。
「やめろっ!!」
ボクはその蛇の腹に蹴りを入れ先輩から離す。
先輩は皮膚が少し持っていかれただけでそこまで大した傷ではないし本人も大丈夫そうだ。
「どうやら毒もないみたいだね。でも……」
先輩が咄嗟に持ち上げたカエル。体の真ん中に牙を突き立てられ即死してしまっている。
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日向先輩はランストを取り出し装着し、デッキケースからカードを二枚取り出す。
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まず簡易的な鎧が出現し先輩の体を覆う。そこから王冠が空から降ってきて頭に被さる。
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