カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

文字の大きさ
上 下
106 / 130
八章 ボク

101話 後悔(風斗視点)

しおりを挟む
「ここに美咲がいるのか……生人と寧々は見えそうか?」
「まだ来ないね」

 俺は寧々に敗れた後愛と合流してからDO本部に戻った。
 そこから富士の樹海に美咲がいるという情報を元にワープ装置で樹海の入り口まで来たのはいいが、指揮官が言うには生人は何とか立ち直ったらしくあいつらも来るはずなのだが一向に姿を現す気配がない。

「やっぱり真太郎さんと会うのが気まずいのかな?」
「そう……かもな」

 あれから俺は愛から説教を受けて多少は頭を冷やすことができた。それでも生人への憎しみは消えていないし、もう一度会えば俺は自分を抑える自信がない。
 だがそれと同時に大事な後輩にあんな残酷なことをしてしまった自分に嫌悪感を覚えている。

 矛盾した感情を抱き俺の心の中は大変乱れている。
 今までこれ以上大事な人を失わないために私情をなるべく捨て仕事に勤しんできた。それなのに俺は憎しみという感情に囚われ大事な人に手をかけようとしてしまった。

「真太郎さん!!」

 どんな顔で二人に会えば、謝ればいいのか分からずにいたところ愛に背中を強く叩かれる。

「うわっ! な、なんだ?」
「もっとシャキッとしてよ! 生人くんと寧々ちゃんに会って、謝って、それから美咲さんを倒してまたいつもの日常を取り戻すんでしょ!?」

 そうだ。俺は決めたんだ。田所さんが亡くなったあの日、あの人の代わりにこの組織を、生人達を守るって。
 なのに俺は生人を、寧々を傷つけて何をやってるんだ。
 
「あぁ取り戻そう。あいつに奪われた日常を、そしてまたみんなで笑い合おう」

 迷いが吹っ切れる。やはり生人は俺にとって大事な後輩だ。もう間違いは犯さない。これ以上犠牲も出させない。

「感動的なシーンで悪いけど、寧々君はもう死んだよ」

 樹海の方から美咲の声が聞こえてくる。その声は信じられない情報を述べていた。樹海から出てきたのは既に変身している美咲。
 その鎧は所々に血が付着しており言葉に説得力を持たせている。

「嘘……寧々ちゃんが……?」

 愛も同じことを感じ取ったようで顔を青ざめさせる。

「変身」

[フェンサー レベル1 ready……アーマーカード ホーリーナイト レベル20 start up スキルカード サウンドブラスト]


 俺は怒りを抑え確実に奴を仕留めるため有無を言わさず変身する。そして即座にスキルカードを使用し衝撃波で奴の近くの木を倒れさせる。
 木は奴を覆い被さるように倒れ、俺は奴の視界が遮られたことを確認し死角から一気に接近する。

[スキルカード オートアタック]

 剣を空に放り自動で動くようにし、木を斬らせ奴に突っ込ませる。その間に俺は木を迂回して横から奴に近づく。
 奴は剣に斬り裂かれ火花が辺りに散る。それの対処でできた一瞬の隙を突き地面を強く蹴り回し蹴りをぶつける。
 奴を後退させその際に剣をキャッチしてそのままの姿勢で振り下ろし顔を斬り裂く。

「流石だね……私のような素人とは違い戦闘のプロだ」

 技術や経験ならこちらの方が圧倒的に上だ。しかし奴の鎧はその差をものともしないほど性能が高い。実際今の攻撃でさえほとんどダメージは通っていなそうだ。

[スキルカード マジック]

 この攻防中に変身した愛が分身して飛び込んできて三人がかりで組み技を用い美咲を抑える。

[必殺 ホーリーカット]

 剣に神々しい光を纏い愛に当たらないよう注意しながら奴を一刀両断しようとする。

[必殺 デスパイアエンド]

 しかし奴のギリギリ動く左手がデッキケースから一枚のカードを取り出してしまい、それをセットしてしまう。

「どけっ!!」

 途端に全身から力を溢れ出させる奴に愛は跳ね飛ばされてしまい、俺の光と奴の氷柱がぶつかり合う。
 その結果俺は競り合いに負けてしまい、氷柱が両肩を軽く刺す。奴は氷柱の縮む勢いを利用してこちらに飛んでくる。

「うぉぉぉぉ!!」

 俺は急いで氷柱を引き抜き無我夢中で横に跳んで躱そうとする。だが回し蹴りが俺の胸に掠ってしまう。変身が解かれるほどではなかったが、それでも胸部に激痛が走り立つのが困難になる。

「次は君の番だ!」
 
 分身能力に時間切れが来た愛を奴は着実に追い詰めていく。愛も戦闘能力や技術自体は高いがやはり明確な鎧のレベル差がありどんどん劣勢になっていく。
 
[スキルカード アシッドスプラッシュ]

 奴の試験管から透明の液体が吹き出す。広範囲に出されたそれを愛は躱すことはできず、液体がかかったところからは焼けるような音がする。

「きゃぁぁぁ!!」

 強酸の液体だ。鎧が溶け始めそこに蹴りが入れられる。奴の足は全く溶けておらず腐食耐性があるのだろう。
 愛は変身が解け地面に伏してしまう。

「愛に手を出すな!!」

 俺は消えかかっている命の炎を消させないため限界を超えて体を動かし奴に飛びかかる。

「それも読んでたよ」

 だが奴は急に旋回し俺の頭部に回し蹴りを放つ。俺も変身を解かれてしまい本当に立ち上がれなくなってしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【マスクドダンジョン】仮面で顔を隠しながらダンジョン配信をしていくと、仮面の少女とヒーローユニットを組む事になり無双する

burazu
ファンタジー
ある日、突如世界中にダンジョンが現れ、そのダンジョンへ配信者達が行き、ダンジョン配信が流行し始めた。 そのダンジョン配信が流行っている中、高校生の暁駿(あかつきしゅん)は偶然迷い込んだダンジョンである仮面を手に入れる。 その仮面はただの仮面ではなく強力な力を得てダンジョン内のモンスターを倒していく。 その力を得たことをきっかけに駿はダンジョンプリズマーを名乗りダンジョン配信者として活動する事になる。そして別の仮面の少女を助ける事でヒーローユニットを組む事になる。 【マスクドダンジョン】というユニット名で活動する事になり少女はホワイトペインターを名乗り配信者コンビとして奮闘していくのだ。 ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも投稿しています。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】王女だった私が逃げ出して神子になった話

あおくん
恋愛
親の顔も知らず、なんの目的で隔離され虐げられているのかわからないまま一生を終えるのかと思われたその時、王妃様が私を助けてくれた。 優しく接してくれた王妃様。そんな王妃様に一生を捧げようと誓った私は、突然王妃様の息子ルーク王子を殺そうとした罪で処刑を言い渡される。 死んだかと思われたその時、二度目の人生を迎えることになった私は、王妃に殺されたこと、そして殺される理由を知った。 助けてくれた筈の王妃様に憎まれていた私。 二度目の人生ではそうはいかない。王妃の手に陥る前に絶対に逃げ出して、そして自由に生き抜いてみせると心に決める。 だけど私は再び王城に戻ることになり、そして王妃と戦うかの決断を迫られた。 恋愛要素低いかもしれませんが、恋愛と言わせてください。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

処理中です...