カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

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八章 ボク

89話 邪魔

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 奴の胸部の円が高速で回転し、色が青色と緑色とで半円ずつ共有したものに変化する。
 手に持っていた槍は持ち手が青色の斧に変化する。刃の部分と柄の部分の間は水で繋がっており、この前のウォーターランスのことを考えると恐らく斧で遠距離攻撃ができるようになっているのだろう。

[スキルカード ドールアタック]

 椎葉さんが新しいスキルカードを使用する。虚空から三体のゴスロリ人形が現れ奴に掴みかかっていく。
 
「邪魔だどけ!!」

 予想通り奴は斧の柄の部分の水を噴射させ、リーチを伸ばしたそれで薙ぎ払い人形達を斬り裂く。
 人形達は腹部を裂かれたが、ダメージを受けたのはキュリアの方だ。腹部に人形達同様の切り傷ができており奴はその場に踏み止まる。

 椎葉さんの取り出す人形にはダメージ反射効果があり、人形自体には戦闘能力はないが受けたダメージをそのまま反射することができる。
 相手が強ければ強いほどダメージが増す敵に回したら厄介な能力だ。
 
[必殺 ホーリーカット]

 隙ができた瞬間風斗さんが攻め時と判断し必殺カードを挿入する。
 剣は神々しい光を纏い、それをキュリアに振り下ろす。

[combine……ウィンドソード レベル50]

 奴はその一撃を斧で受け止めつつ違う形態へと変身する。
 また円の色が変わり斧が剣に変形する。刀身には黄緑色のオーラが渦を巻いて纏っていて、それに変わった途端風斗さんの剣が弾かれる。
 
 それから二人は数回お互いの剣をぶつけ合う。剣がぶつかり合う度に、まるでトランポリンを跳ねているかのように風斗さんの剣が弾かれる。
 何回めかのぶつかり合いの果て。弾かれた隙を突かれ風斗さんの腹目掛けて突きが放たれる。彼はそれを後ろに跳んで紙一重のところで躱す。

「真太郎さん。アタシ達四人で連携しましょ。一人じゃとてもじゃないけど敵わないよ」
 
 椎葉さんの言う通り奴の成長は計り知れない。それは鎧を着ていたとしても容易にわたくし達の命を刈り取れるほどに。
 
「雑魚が鬱陶しいな……オレは生人とやりたいのに……次はこれでいくか」

[combine…… グラウンドファイター レベル50]

 キュリアの剣が拳に纏わりつき、黄色のグローブへと変わる。その直後に地面を殴りそこに小さな亀裂を発生させる。
 それはわたくし達へダメージも衝撃も与えるものではない。一体何をしたいのだろうかと不思議に思ったが、それはすぐ分かることになる。
 奴は亀裂に吸い込まれるように消えていき地面に潜る。

 生人さんがすぐに跳び上がり宙に舞う。

「みんな地面から離れて!!」

 わたくし達は伝えたいことを理解して、咄嗟に跳躍や飛翔で地面から離れようとする。
 しかし生人さんはキュリアの射程外に出れていたが、わたくしはまだその中にいてしまい、奴の拳が地面から伸びてきてわたくしのふくらはぎの辺りを捉える。
 ゴリッという鈍い音共にわたくしは打ち上げられるが、逆にそのおかげで上空へと逃げ去ることができる。そのまま翼を展開して宙に留まりながらスキルカードをセットする。

[スキルカード ショックウェーブ]

 鎌に衝撃波を纏い、それを飛ばし殴ってきたその拳にぶつける。
 特にブレなく命中したもののダメージはあまりないようで、奴はまた地面に潜ってしまう。

 仕方ないのでわたくしは地面に落ちていこうとする生人さんを回収してそのまま空中で待機する。風斗さんと椎葉さんは古びた廃屋の屋根の上に登っているので大丈夫だろう。

「奴が地面に潜行するというのなら……わたくしは空間に潜行するまでです」

 わたくしはこのアーマーの能力を使い、自分の右手の周りに円状の紫色のゲートを発生させる。そこに手を突っ込むことでわたくしは不思議な感覚に見舞われる。
 視界がもう一個増え、それが宙を自由自在に動いているのだ。分かりやすく言えば目が三つあるような感覚だ。
 宙にはもう一つ紫色のゲートが浮いており、それと視界を共有している。

 わたくしはそれを地面に潜らせ、そこに潜んでいるキュリアを探し当てる。

「はぁっ!!」

 そしてゲートを通じてキュリアの眼前に手を出現させそのまま殴り抜く。
 奴はたまらず地上に飛び出してきてわたくしの方を見て一瞬で状況を理解する。

「へぇ……お前らみんな中々面白れぇ能力持ってるんだな。これは案外楽しめそうだ。さぁこれから第二ラウンド……」
「キュリア君! 逃げる準備は整った! 退くぞ!」

 また熾烈な戦いが始まろうとしたが、それをプレハブ小屋から出てきた美咲さんが制止する。

「はぁ!? 今いいところなんだぞ!?」
「今はデータを取る準備が整っていない! 本格的にやるならそれからだ!」
「ちっ……」

 キュリアは拳を振るわせ握り締め、わたくし達にも聞こえるくらい大きな舌打ちをする。

「クソがっ!!」

 そして地面を強く殴りつけそこから尖った岩を数個飛び出させる。
 雑な攻撃でそれらは一つもわたくし達に当たることはなかったが、その隙に二人はどこかへ逃げ出してしまう。

「待ちなさい!!」

 飛行能力があるわたくしが生人さんを抱えたまま追いかけるが、二人が裏路地に入った瞬間そこから煙が噴き出してくる。
 幸い有毒なものではなかったが、わたくし達の視界を遮るには十分すぎるもので二人に完璧に逃げられてしまうのだった。
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