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八章 ボク

88話 混ざってレベルアップ!

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 わたくしと生人さんは変身してから指定の場所まで向かい、そこにはもう既に風斗さんと椎葉さんがいた。
 その場所は人気のない二階建てのプレハブ小屋で、二階の扉を開け変身していない美咲さんとキュリアが出てくる。

「いたぞ。美咲とキュリアだ。お前ら準備はいいか」

 風斗さんはわたくし達に、特に生人さんに向けて言い放つ。
 
 風斗さんは生人さんが寄生虫だと判明してから異様な程に彼への風当たりが強い。
 彼は元々愛嬌が良いわけではないが、なんだかんだで後輩への愛情や優しさは所々に感じさせていた。
 それが最近生人さんへ向けたものだけ消え失せている。

「任せてよ! 僕はヒーローだから……美咲さんをここで倒して捕まえるんだ……!!」

 言い淀みや迷いなんて微塵も感じさせず、その敵意の籠った瞳を美咲さんの方へ向ける。

「何でここが……キュリア君。適当に彼らを痛ぶってやってくれ。私はその間に重要な物を運んでおく」
「りょーかい。こんな早くやれる機会がくるなんて最高だぜ」

 キュリアは二階から飛び降り、服の中から例の菱形のランストを取り出し装備する。
 一方美咲さんは実験資料やサンプルなどを隠すためかプレハブ小屋の中へ戻ってしまう。

「お前の力はもう知っている。かかってこい!」

 生人さんは透き通る声でキュリアを挑発する。
 キュリアは口角を上げカードをセットしまたあの四つの正方形が出現する。

「さぁやろうぜ! 今度は絶対負けねぇ……勝負だ!」

 奴は意気揚々に赤色の部分をタップする。
 前まではこれで変身していた。なのに今回はそれだけでなく青色の方もタップする。
 赤と青の正方形が互いに混じり合い回転し円を形作る。

[スキルカード サウンドブラスト]

 剣に衝撃波が纏い、更に風斗さんのホーリーナイトアーマーの力で聖なる光の力も纏われる。
 それを変身しきる前の奴に飛ばす。

[combine……フレイムランス レベル50]

 しかし円が高速で回転し始め、それに弾かれ無力化されてしまう。
 奴の全身が鎧に覆われていき、円が胸にあるポッカリと空いた穴に嵌る。
 
「炎の拳と水の槍。二つ合わさってフレイムランス。これがオレの新しい力だ!!」
 
 槍からは水の代わりに炎が吹き出しており、奴の姿を見てわたくしは身震いしてしまう。
 レベル50という表記はもちろん。それだけでなく肌で目の前にいる存在の脅威を感じ取っていたからだ。

「生人……お前も新しい力を手に入れたんだろ? またとことんやろうぜ!!」

 キュリアは地面に大きな跡を付けるほど強く蹴りつけ、飛ぶように生人さんの方へ一直線に向かっていく。まるでそれ以外など眼中にないように。
 そのまま槍で突くか殴りかかるかでもするのかと思ったが、そうはせず生人さんの目の前で急停止する。そして槍を生人さんの目の前で回転させる。

 果たして何の意味があるのか分からない行動だったが、その意味はわたくしが二人の元に辿り着く前に理解することになる。
 突然回転の中央から炎が噴射される。

「ぐぁぁぁぁ!!」

 ただの炎なら彼はここまで悲鳴を上げることはなかっただろう。問題はその量と熱量だ。
 炎は晴れた空を模したかのように青く、量は限度を知らず無限に噴き出てくる。
 生人さんが燃え尽くされ灰にされてしまうかと思ったが、瞬きする間もなくキュリアが上空から飛んできた緑色の何かに押しつぶされる。

「熱っつ!! 鎧焦げてないよね……?」

 生人さんは既に上空に跳び上がっており、右手には緑色のオーラを纏っており、左手には龍の頭を模ったものを付けている。
 炎を噴射されるのとほぼ同時にホッパーのジャンプ力で跳び上がり、右手の方の龍の頭を飛ばしたのだろう。
 実際キュリアを押し潰しているのは半透明の龍の頭であり、牙を突き立て奴を噛み潰そうとする。

「離せこのトカゲ野郎!!」

 奴は龍の口内で蹴りを放ち、その部分からは青色の炎が噴き出す。龍の姿は消滅し、生人さんの右手に戻る。

「じゃあ次はこれだ!」

 奴は液晶部分に触れわたくし達の反応速度より速く操作し違う形態へと変身する。

[combine……ウォーターアックス レベル50]
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