85 / 130
七章 最高のクリスマスプレゼント
80話 最期の意地
しおりを挟む
「何ですかこのサタンの数は!?」
モールから飛び出して峰山さんに捕まりサタンがいるという場所まで飛んできた。
そこは十年前の災厄の日に特に被害を受けた場所で、復興もまだできておらず今も人はあまり住んでいない地帯だ。
そこには数十体ものサタンがいる。ダンジョンが出現していないのにこんなことが起こるなんてありえないはずだというのに。
「まさか……」
峰山さんに掴まりながら、僕の中にある一つな説が思い浮かぶ。
風斗さんが書いた報告書にはエックスがサタンを召喚したとの記載があった。
「生人さん? どうしたのですか?」
「えっ、あぁごめん何でもない。被害が出る前にさっさと倒そう!」
エックスは、キュリアは今も捕まっている。そんなことありえるはずがない……
疑問と不安を抱きながらも、目の前の問題をまず何とかするべく拳に力を入れるのだった。
☆☆☆
レベル20の力もあり、風斗さんと椎葉さんもすぐ合流してくれたのでそう時間はかからずサタンを殲滅する。
「ふぅ。何とかなったね! ところで田所さんはどこにいるんだろう? アーマーの能力で素早く走れるはずなのに……」
ただ田所さんの姿は今も見えない上に連絡もない。
「田所先輩ならどこかで何かしらやってくれてはいるだろ。あの人はあぁ見えて有事の時は本当に頼りになるからな」
この中では風斗さんが一番あの人と付き合いが長い。五年くらいになるだろうか、あの人については熟知している。
サタンを取り逃してしまってないか目撃情報を探ろうとランストを操作するが、ちょうどその時父さんから連絡がくる。
「お前ら今すぐ近くにある左坂廃工場に向かってくれ! そこで田所の変身反応が急に途切れたんだ!」
変身を解く。どこかにサタンが潜んでいる可能性がある中自分からそんなことをするなんて考えられない。
田所さんは何者かに変身を解除させられたと考える方が自然だ。つまり今彼の状態は……
[スキルカード 疾風]
真っ先に僕が廃工場に向かい、疾風のスピードには遅れてしまうが他三人も僕の後を追って走り飛ぶ。
「田所さ……ん……!?」
道を曲がり廃工場に辿り着く。そこには脳のキャパシティを遥かに超える情報が、信じたくない光景が広がっている。
田所さんが壁に鉄の杭で磔にされてしまっていた。左手と右肩に打たれており、そこだけで全体重を支えている。
よく見れば氷で止血されているとはいえ右腕を切り落とされている。
田所さんの顔は苦痛に歪んでおりいつものおちゃらけた、それでもって頼りになる彼の面影はない。
「生人君か……」
磔にされた彼の目の前には謎の変身者がおり、その口から放たれる声は……声は、美咲さんのものだ。
「美咲さん……? 何を……?」
僕の質問に返ってきたのは言葉ではなかった。美咲さんは田所さんの腹部を手で貫き、確実に致命傷となるダメージを与える。
赤い鮮血が噴射され、辺りに飛び散り美咲さんの鎧を汚す。
だがそれは雨によってあっという間に洗い流され、地面に赤い道が作られていく。
「田所先輩!? 誰だお前!!」
風斗さん達もここに到着して、この状況に困惑しながらも美咲さんに敵意をぶつけ臨戦体勢を取る。
だが美咲さんは戦おうとすらせず、跳び上がり屋根に乗りそのままどこかに去っていく。
「田所さん!!」
僕は追いかけようなんて一切思わず、すぐさま田所さんに駆け寄る。
風斗さんは変身を解きスマホで救急車を呼ぶ。
DO入るにあたって学んだ応急手当なら今でもしっかり覚えている。それをしっかりすればまだ……
「がはっ……はは……もう助からねぇよ」
まだ辛うじて意識があった田所さんが血を吐きながらも話し始める。
それは消える直前に一層強くなる炎のようだ。
「生人ちゃん……よく聞けよ……」
震える声で、消え入りそうな声で途切れ途切れに話す。僕はそれを必死に聞き逃さないよう全神経を耳に集中させる。
「生人さん! 早く手当てしないと……」
一手遅れてしまったが、峰山さんも手当てしようと駆け寄ってくる。杭を抜きそこをすぐに止血しようとするが、田所さんは彼女の手を振り払い僕の肩を強く掴む。
それは死にゆく人とは思えないほど強く、最期の力を振り絞っているようにも思えてしまう。
「何があっても……生人ちゃんは生人ちゃんだ。例え何者であろうと、自分の可愛い後輩だってことには変わりねぇんだ……だから…………………」
最後に声が出せないほど衰弱しても口をパクパクと動かし、それすらもしなくなると地面にバタリと倒れる。
「田所さん!!!」
彼を抱え揺さぶってみるがもう反応すら返ってこない。もう、彼のあの冗談やからかいをその口から聞けることはない。
「あぁ……ああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
今僕の手の中で、最高の先輩だった、憧れの先輩だった彼はどんどん冷たくなっていき、生命の鼓動が失われていくのだった。
モールから飛び出して峰山さんに捕まりサタンがいるという場所まで飛んできた。
そこは十年前の災厄の日に特に被害を受けた場所で、復興もまだできておらず今も人はあまり住んでいない地帯だ。
そこには数十体ものサタンがいる。ダンジョンが出現していないのにこんなことが起こるなんてありえないはずだというのに。
「まさか……」
峰山さんに掴まりながら、僕の中にある一つな説が思い浮かぶ。
風斗さんが書いた報告書にはエックスがサタンを召喚したとの記載があった。
「生人さん? どうしたのですか?」
「えっ、あぁごめん何でもない。被害が出る前にさっさと倒そう!」
エックスは、キュリアは今も捕まっている。そんなことありえるはずがない……
疑問と不安を抱きながらも、目の前の問題をまず何とかするべく拳に力を入れるのだった。
☆☆☆
レベル20の力もあり、風斗さんと椎葉さんもすぐ合流してくれたのでそう時間はかからずサタンを殲滅する。
「ふぅ。何とかなったね! ところで田所さんはどこにいるんだろう? アーマーの能力で素早く走れるはずなのに……」
ただ田所さんの姿は今も見えない上に連絡もない。
「田所先輩ならどこかで何かしらやってくれてはいるだろ。あの人はあぁ見えて有事の時は本当に頼りになるからな」
この中では風斗さんが一番あの人と付き合いが長い。五年くらいになるだろうか、あの人については熟知している。
サタンを取り逃してしまってないか目撃情報を探ろうとランストを操作するが、ちょうどその時父さんから連絡がくる。
「お前ら今すぐ近くにある左坂廃工場に向かってくれ! そこで田所の変身反応が急に途切れたんだ!」
変身を解く。どこかにサタンが潜んでいる可能性がある中自分からそんなことをするなんて考えられない。
田所さんは何者かに変身を解除させられたと考える方が自然だ。つまり今彼の状態は……
[スキルカード 疾風]
真っ先に僕が廃工場に向かい、疾風のスピードには遅れてしまうが他三人も僕の後を追って走り飛ぶ。
「田所さ……ん……!?」
道を曲がり廃工場に辿り着く。そこには脳のキャパシティを遥かに超える情報が、信じたくない光景が広がっている。
田所さんが壁に鉄の杭で磔にされてしまっていた。左手と右肩に打たれており、そこだけで全体重を支えている。
よく見れば氷で止血されているとはいえ右腕を切り落とされている。
田所さんの顔は苦痛に歪んでおりいつものおちゃらけた、それでもって頼りになる彼の面影はない。
「生人君か……」
磔にされた彼の目の前には謎の変身者がおり、その口から放たれる声は……声は、美咲さんのものだ。
「美咲さん……? 何を……?」
僕の質問に返ってきたのは言葉ではなかった。美咲さんは田所さんの腹部を手で貫き、確実に致命傷となるダメージを与える。
赤い鮮血が噴射され、辺りに飛び散り美咲さんの鎧を汚す。
だがそれは雨によってあっという間に洗い流され、地面に赤い道が作られていく。
「田所先輩!? 誰だお前!!」
風斗さん達もここに到着して、この状況に困惑しながらも美咲さんに敵意をぶつけ臨戦体勢を取る。
だが美咲さんは戦おうとすらせず、跳び上がり屋根に乗りそのままどこかに去っていく。
「田所さん!!」
僕は追いかけようなんて一切思わず、すぐさま田所さんに駆け寄る。
風斗さんは変身を解きスマホで救急車を呼ぶ。
DO入るにあたって学んだ応急手当なら今でもしっかり覚えている。それをしっかりすればまだ……
「がはっ……はは……もう助からねぇよ」
まだ辛うじて意識があった田所さんが血を吐きながらも話し始める。
それは消える直前に一層強くなる炎のようだ。
「生人ちゃん……よく聞けよ……」
震える声で、消え入りそうな声で途切れ途切れに話す。僕はそれを必死に聞き逃さないよう全神経を耳に集中させる。
「生人さん! 早く手当てしないと……」
一手遅れてしまったが、峰山さんも手当てしようと駆け寄ってくる。杭を抜きそこをすぐに止血しようとするが、田所さんは彼女の手を振り払い僕の肩を強く掴む。
それは死にゆく人とは思えないほど強く、最期の力を振り絞っているようにも思えてしまう。
「何があっても……生人ちゃんは生人ちゃんだ。例え何者であろうと、自分の可愛い後輩だってことには変わりねぇんだ……だから…………………」
最後に声が出せないほど衰弱しても口をパクパクと動かし、それすらもしなくなると地面にバタリと倒れる。
「田所さん!!!」
彼を抱え揺さぶってみるがもう反応すら返ってこない。もう、彼のあの冗談やからかいをその口から聞けることはない。
「あぁ……ああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
今僕の手の中で、最高の先輩だった、憧れの先輩だった彼はどんどん冷たくなっていき、生命の鼓動が失われていくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる