カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

文字の大きさ
上 下
83 / 130
七章 最高のクリスマスプレゼント

78話 あの日の真実(田所視点)

しおりを挟む
「やぁ田所君。こんなところに私を呼び出して何のつもりだい?」

 とある廃工場のベルトコンベアの上で待っていると、待ち合わせをしていた美咲がやっと来てくれる。
 言葉の節々に不満が込められており、研究中に無理矢理呼び出されてイラついているといったところだろう。

「悪いな。この場所で、それに二人っきりでどーしても話したいことがあってな」

 自分はベルトコンベアから降りゆっくりと美咲に詰め寄る。
 そして明確な敵意を持って彼女を睨みつける。

「なんだいその目は? まるで私が悪人かのような……」
「あぁその通りだ。お前は悪人だ。それもとんでもない極悪人だ」
「確かに私は非合法なことをやってはいるさ。でもそれは……」

 自分は上手な演技で白を切ろうとする彼女に既にカードから出しておいた銃を突き付ける。

「なぁ? もうそういうのやめようぜ? 災厄の日を引き起こした張本人さん?」

 雨が降り始めたのか、このボロい工場の天井に雨粒が当たり音がただひたすらに工場内に響く。

「ふっ……ふふふふ」

 美咲の声質がガラリと変わり、彼女は非常に楽しそうに笑みを溢し笑い声を上げる。
 あぁこれが彼女の本性なのだと。やはりこっちが現実なのだと自分は再認識する。

「よく分かったじゃないか。裏で色々調べたのかい? これでも情報は厳重に管理してたはずなんだけどねぇ……」
「俺は元警察だ。生憎調べるのは得意でね」

 それでも十年かけてやっと美咲の尻尾を掴めた。彼女は狡猾で慎重で、必死に毎日調べてもこれだけ時間がかかってしまった。

「じゃあ私の悪事を突き止めたご褒美としていくつか質問に答えてあげよう」

 銃を突きつけられ不利な状況だというのに、窮地だというのに一向にそのムカつく態度は変わらない。

「いくつかさせてもらうぞ。まず生人ちゃんに対して何をしようとしてる? いくら寄生虫といってもあの子の心は間違いなく人間だ。もうこれ以上あの子に関わるな」
「大丈夫さ。嘘に聞こえるかもしれないが、これでもちゃんとあの子への愛情はあるし、絶対にあの子だけは死なせたりはしない。
 何をしようとしているかは……まぁランスト関連の研究に利用させてもらってるよ。キュリア君のダイアも生人君の生体サンプルから作ったものだ」

 正直信じられなかったが、とりあえずこの話は多分美咲は生人ちゃんのことは大事にしているんだなくらいに思い留めおくことにする。
 本題は次の質問だ。

「次だ。何でお前は災厄の日を起こした?」

 災厄の日。十年前に起きた史上最悪の災害事件。大量のダンジョンが一斉に出現し、自分もその事件の対応をした。
 それは悲惨で残酷な災害であり、当時いた六名のDOのメンバーの内四人は精神を病んで辞めてしまい、そして一人は、自分の親友は死んでしまった。

「もちろんダンジョンの研究を活発にさせるためさ」
「犠牲が出ることは分かってただろ……!!」
「そうだね。それがどうかしたのかい?」

 自分は今の一言で頭に血が昇ってしまい引き金を引きそうになってしまう。しかしこいつにはまだ聞き出したいことがあるのでギリギリのところで踏み止まる。

「犠牲……それはあの君の親友のことかい?」
「最後の質問だ。お前は災厄の日どこで何をしていた?」

 最後の最後に、自分は本命の質問を出す。
 やっと、やっと真実が知れる。親友の死の真相に辿り着くことができる。
 そのことが今自分の胸を奮い立ててくれている。

「君の親友は……非常に感が良かった……そして愚かだった」
「テメェ……!!」
「まさに今の君のように真相に迫ろうとした。だから私が殺したんだよ!!」

 ついに言った。言い切った。
 この世界史上最悪のクズ野郎の口から親友の死の真相を聞き出せた。
 途端に全身が震え出し、殺気が止められなくなる。奴を殺したいという衝動が自分を支配する。

「私を殺すのかい? 君も私と同じになるつもりか?」
「あぁ……どうせお前は司法じゃ裁けない。どうせ手を回しているだろうからな。
 それに智成さんからももし犯人なら迷わず撃ってくれと、娘を止めてくれと言われてるんでな」

 自分が智成さんの、奴の父親の名前を出すなり奴は目を見開きこちらを睨みつけてくる。

「あのゴミ野郎……私の邪魔を……」

 恨めしさを吐き捨てる奴のことなど無視して、自分は引き金を引こうとする。
 しかしその直前に奴がカードを一枚取り出しそこから楕円形の物体を取り出す。
 それは両端に緑色の半円があり、真ん中は透明なクリアパーツのようなものが長方形を型どっている。

[earth]

「怪しい動きをするんじゃねぇ!!」

 自分はこいつがどうにかして逃げようとしていることを察知して引き金を引く。それは奴が楕円形の物を下腹に押し付けたのと同じタイミングだった。
 そしてその一撃は奴に命中することはない。

「何だ……あれ……!?」

 突然奴の背後に巨大な青と緑で構成された球体が出現し、それに弾が吸い込まれてしまう。

「冥土の土産だ。見せてあげよう。私の研究の成果を……集大成を!! そして私の研究の踏み台となり闇の底に落ちていくがいい!!」

 ベルトが奴に巻き付き、デッキケースから一枚のカードを取り出す。
 次に奴は楕円形の左の半円を中心にスライドさせる。透明の部分が上に飛び出し、そこにカードをセットする。

「動くなっつってんだろうがぁ!!!」

[マシンガンモード]

 全身で危機を察知し、謎の装置に光弾を乱射するがそれらも全て球体に吸い込まれてしまう。

「変……身!!」

[open……キュリシティ レベル 35]
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~

北きつね
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。  ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。  一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。  ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。  おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。  女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。 注)作者が楽しむ為に書いています。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。

処理中です...