上 下
78 / 130
六章 文化祭

74話 打ち合わせ

しおりを挟む
「良い案思いついた! どうせもうすぐ変身して出し物の当番するんだし、今変身しちゃえばいいんだ!」
「それなら服とか関係ないですし、乾くまでの時間を稼げそうですね」

 父さんにメールで伝えてみたが、文化祭関係で安全に使う分なら許可が降りたので、峰山さんは早速ランストを装備してカードをセットする。

[エンジェル レベル1 ready……]

 いつもの天使の鎧を纏い、純白の鎧のおかげで透けた下着を隠すことができる。

「これ生人さんも変身してクラスの出し物を宣伝しながら戻りませんか?」

 さぁ戻ろうとしたが、峰山さんから一つ提案を持ちかけられる。

「そっちの方が良いかもね。よし! じゃあ僕も変身!」

[ラスティー レベル1 ready……]

 僕もいつもの鎧を纏う。安心感のある配信で何十回も映っている鎧だ。
 それから僕達は周りの人達に僕らのクラスの出し物を宣伝しながら、使わせてもらっている展示品が飾られている教室に向かう。
 道中周りの人達から写真を撮られたり、サインを求められたので、僕達はそれらに快く対応して時間ちょうどに出し物がある教室に着く。

「あれ? 生人くんに寧々ちゃんもう変身してるじゃん」

 僕達と交代になる岩永さんが近寄ってきて話しかけてくる。

「ちょっと色々ありまして。それより展示の方はどうですか?」
「いやー大盛況だよ。これも寧々ちゃんと生人くんのネームバリューのおかげかな?」

 確かにかなり多くの人が集まっており、他校の文化祭は見たことないが、僕のような素人目から見てもかなり人が集まっている方だと分かる。

「それじゃあウチは友達と回ってくるから二人ともよろしくね!」

 岩永さんに後を託され、僕達はクラスの出し物の運営に回る。
 教室の中は僕達が作った物がズラリと並んでおり、僕と晴人が作ったエンジェルマンティスアーマーの像もある。
 それだけでなく、峰山さんと岩永さんが作ってくれたラスティーホッパーアーマーの像や、僕が峰山さんと一緒に作ったサタン生態図鑑などがある。

「改めて見てみますと……自分の姿があるって結構恥ずかしいですね……」
「そう? 僕はみんなに認めてもらえているようで嬉しいけどな。それよりお客さんも来てるからファンサービスしとかないと!」

 恥ずかしがってても仕方ないので、来てくれた人達に展示している物への解説や、僕のファンに対してはサインや写真を撮ったりをしてあげて、そうしているうちに気づけば数時間は経過していく。
 
「あっ! 僕そろそろ時間だから離れるね」
「そういえば用事があるとか言ってましたね。結局あれは何の用だったんですか?」
「えーとそれは……きっとそのうち分かると思うよ! それじゃ!」

 椎葉さんからライブの直前打ち合わせの件で呼ばれていたが、そのことはサプライズ登場の都合上言えない。
 僕は嘘をつくのが下手なので、勢いで誤魔化して変身を解除して教室を飛び出し椎葉さんが待っている場所まで向かう。

「あ! 生人くん時間ぴったりだね!」

 誰も使わない、誰も来ない空き教室で椎葉さんが椅子にもたれて待ってくれていた。

「それで直前の打ち合わせって何するの?」
「とりあえずあれを見てくれるかな」

 僕は指差された窓の外を見る。
 ここは五階なのですぐそばの広い運動場がよく見える。

[マシンガンモード]

「今年も花火ショーやるぞぉぉ!! これが自分の新作だぁぁぁ!!」

 田所さんが変身した状態で、空に向け改造された銃を撃つ。
 あれはつい先日自慢げに話していた、美咲さんに作ってもらった元々の武器をベースにした花火専用銃だ。
 基本的なモードチェンジに加え、光弾ではなくランダムな色の花火が射出されるようになっているらしい。

「うぉぉぉ!! 何だあれ!?」
「頭がおかしい人がいるぞ!!」

 彩りのある花火は大盛況だったが、果たしてあれは本当に許可を取っているのだろうか?
 正直言って美咲さんや田所さんは結構悪ふざけをする方だ。何だか少し心配になってきた。

「花火綺麗だね」
「いやごめんそっちじゃなくてあっちのステージの方を見てもらいたかったんだ」

 椎葉さんが田所さんの奇行に苦笑いを浮かべながら、僕の顔を掴みグイッと視線を動かす。
 そっちには今回の文化祭のためだけに設置された特設のライブ用ステージがあり、急遽作ったものだが出来栄えは中々だ。

「この前言った指定のセリフの時にスモークが出ることになってるから、そのタイミングでスモークを突っ切るように出てきて欲しいんだ」
「前の海でのライブみたいな感じで?」
「そうそう! 覚えててくれたんだね嬉しいな」

 沈み始めている太陽の光がちょうど彼女の笑顔を照らし、それがこの空間に僕と彼女しかいないということを意識させる。

「じゃ、最後に君が担当する曲の確認でもしようか。ライブは夜の最後にあるからまだ時間はあるし」

 そうして別に特段何かが起こるわけでもなく、僕が出るライブの確認などをして時間を潰すのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

達也の女体化事件

愛莉
ファンタジー
21歳実家暮らしのf蘭大学生達也は、朝起きると、股間だけが女性化していて、、!子宮まで形成されていた!?

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...