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六章 文化祭

73話 透け透け

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 峰山さんと様々なクラスや部活の出し物を巡り、屋台の料理などを食べているとあっという間にお昼過ぎになり、僕達のクラスの出し物の当番の時間になっていた。

「楽しかったですね。三年生の科学が進んでいる今だからこそ、魔法の神秘を訴える作品はすごかったですね。まさか文化祭の出し物で立体CGの魔法を見るとは思いもしませんでした」
「あれは僕達の必殺技にも劣らないすごい演出だったね」

 三年生の教室に入った途端炎が吹き出して爆発が起こったのだ。もちろんCGだが。限られた予算内で極限まで現実に寄せようとする努力が見れて楽しかった。

「まぁわたくし達が実際に変身してあんなことやったら確実に部屋が壊れるのでできませんけどね……」
「そうだよね……できて重い物を持ち上げたり、高くジャンプしたりとかだよね……」

 ランストの変身機能は革命的な技術ではあるが、万能ではないと知る良い機会だ。

「あ、あそこ飲み物売ってるみたいですよ。みんなのところに戻る前に何か買いましょう。喉乾きましたし」
「いいね! って……何あれ?」

 峰山さんが示した方には三階の教室の窓から管が地面まで伸びており、その下には水が張った洗面所のようなものが作られている。
 ダンボールに書かれた文字を見るに一年生の僕達の隣のクラスの人達の出し物らしい。

 そういえば晴人の友達が飲み物を使った出し物をするとか言ってたけど……これかな?

「あのー飲み物二本もらえますか?」
「あ! 寧々ちゃんじゃんいらっしゃーい!」
「あ、はい……」

 飲み物を売っている当番の子が応対してくれる。向こうは峰山さんのことを知っているようだったが、逆も然りというわけではないようだ。

「あ! ごめんね~寧々ちゃんの方はあたしのこと知らないよね。あたしいつも配信見てるからすぐ分かったんだ」

 恐らく峰山さんがちょっとした有名人だということもあるが、当番の子は最近増えた峰山さんの配信の視聴者の一人で、よく声を聞いているのですぐに彼女だと分かったのだろう。

「ふふっ……それはありがとうございます」

 配信を見てくれるファンを前にして、峰山さんは口角が緩み少し上がる。
 努力が報われて見てくれる人が増えて、彼女も嬉しいのだろう。

「えーっと、二人は炭酸飲料でいい?」

 いくつか商品はあったが、その中で案配なのはその世界的に人気な炭酸飲料だ。
 僕達はそれにすることにして、例の洗面所みたいなところの前まで案内される。

「じゃあこのボタン押してみて!」

 峰山さんは当番の子に手を掴まれ、それを洗面所の本来鏡があるはずの場所に設置されている大きなボタンの前まで持っていかれる。

「じゃあ押してみますね」

 峰山さんがボタンを押すのと同時に、管が出ている三階の窓の方から何やらゴソゴソと物音がし出す。
 ガタガタと管を何かが揺らしたも思えば、すごい勢いで飲み物が管から飛び出してきて洗面所の水面に着水する。

「きゃっ!」

 水飛沫が舞い上がり、そのうち少しが僕と峰山さんを濡らす。

「って、おーい! 上の人! 強く降ろしすぎ! もうちょい加減してよ!」

 当番の子が恐らく上から飲み物を入れたのであろう生徒に叫んで伝える。

「峰山さん大丈夫だっ……」

 僕は絶句してしまう。流石の僕でも彼女の今の姿が人に見せてはいけないものだと分かる。
 ちょうどピンポイントで水が制服の胸の部分に当たってしまい、制服の構造もあって胸の谷間に当たる部分が、ブラジャーが透けてしまっていたのだ。
 薔薇のように真っ赤な色のフリルのブラだ。

「あ……え……」

 峰山さんはブラの色のように顔を紅潮させ固まってしまう。

「ちょっと看板借りるよ!」

 置いてあったここの看板を取って峰山さんに渡しとりあえず胸を隠す。
 
「ご、ごめんね! その看板持ってっていいから」
「はい……」

 峰山さんは赤くした顔を下に向け、小さく返事をしてそれ以上は何も喋れなくなってしまう。
 ここに居させるのはいけないと思い、僕はとりあえず人がいない学校の裏手まで彼女を連れていく。

「その……すみません」
「別に峰山さんが謝ることじゃないよ! だから気にしないで……そ、それにほら! あの下着だって色的にもこの前の水着みたいなものだし気にしなくても……」
「んっ!!」

 峰山さんが左手だけで看板を持ち、空いた右手で僕の首を強く締め上げる。

「それは記憶から消してください……!!」

 込める力とは正反対に上擦らせた声でか細く喋る。

「えっ……でもあれ水着と大差な……」
「いいですから!! とにかく記憶から消してください!!」

 更に締める力を上乗せされ、僕の顔に血管が浮きでる程強く締められ呼吸ができなくなり始める。

「ぐえっ! わ、分かった……記憶から消すから許して……」

 その一言で峰山さんが落ち着いてくれて、とりあえず手を離してくれるのだった。
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