カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

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六章 文化祭

66話 ボク

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「おりゃぁぁぁぁ!!」

 灼熱の連撃が僕の全身を襲う。
 殴られた場所が内出血し鈍い痛みが走り、間を置かずに炎が傷口を覆い鋭い痛みを感じる。
 それを何発も何発も受け、僕の体と心はズタズタにされていく。

 あれ……攻撃が止んだ?

 そう錯覚してしまうのも仕方がない。奴の攻撃が突然ゆっくりになったのだから。
 一発もらってから次のが来るまでの時間が何十秒にも感じられる。これが走馬灯というやつなのだろうか? 僕はここで死んでしまうのだろうか?
 
 炎……燃えてる……熱い……痛い……あれ? この感覚どこかで……

 炎が視界に何回も重なるのと同時に、まるで霧がかかっていた視界が晴れるように謎の景色が脳内にフラッシュバックする。
 
 その景色の中では中世風の街が火の海に包まれていて、ボクはそこで火を点け回っており自分も火に包まれながら多くの人を殺し回っていた。
 今のこの痛みなどどうでもよくなるほど悲惨な光景が脳内に焼きつく。
 
 これが僕……? 違う何だこの映像。今は目の前のことをどうにかしないと。
 あぁ燃えてる……熱い。胸が痛い……全身が……痛い。

「っ!?」

 ドクンと胸が跳ねるのと同時にキュリアが急に跳び下がる。
 僕は度重なるダメージで変身が解けてしまう。

「あ……あぁ……」

 情けない声と共に、僕の視界がおかしくなる。眼球内に多量の寄生虫でもいるのか、透明な虫の蠢きが視界に広がる。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 その虫達がより一層動きを活発にさせれると、全身から力が溢れる感覚に襲われ体中から光が溢れ出す。
 キュリアも他のみんなもその光に耐えられず目を瞑る。僕自身もその光に視界を奪われ、意識が混濁する。

「あは……変身」

 ボクはスーツカードを取り出しランストに入れる。

[ラスティー レベル30 ready……]

 ありえないレベル表記の音声が鳴り、ボクはいつも通りの鎧を纏う。

「面白ぇ……やっと本命の、本来の実力のお前とやりあえる。さぁ! たたか……」

 奴がギャアギャア騒いでいるうちに一気に距離を詰め拳を叩き込んでやる。
 笑いが出てしまうほどに簡単に拳が当たり、吹き飛ぶ前に回し蹴りを頭部にも当て脳へのショックで受け身を取り辛くする。

「生人ちゃん!! 止まれ!!」

 何故か田所さんがボクに向かって焦った様子で騒いでいるが、ボクはそれを無視して木に打ち付けられたキュリアに必殺の一撃を放とうとする。

[必殺 ラスティーパラブ……ブレ……ラス……パパパパパパパパ]

 ランストが壊れたのか、狂った機械音声が鳴り続ける。バグのようにノイズも間に挟まり、まるで不吉な物事を暗示しているかのようだ。

[パラサイトエンド]

 しかし急に音質が変わり同時にボクの足に凄まじい力が溜まり、回し蹴りを再び頭部に命中させる。
 今度の威力は桁違いで、奴は変身が解除され頭から血を流す。

「やった……倒し……うっ!!」

 喜ぶ暇もなく、ボクの脳にロックをかけられたように思考や動くことができなくなってしまう。
 激しい頭痛にも見舞われ、呻き声を上げながらその場に伏す。

「生人くん!!」

 怪我が少しはマシになったのか、椎葉さんがこちらに走って向かいボクを抱きしめる。

「大丈夫……大丈夫だから! 落ち着い……ゴフッ!!」

 何も他から影響されていないのに、椎葉さんが突然吐血する。血がボクの顔を汚し、視界が真っ赤に染められる。

「ごめん……ね。でも今はそれより……落ち着いて。理性を保って!」

 ボクの脳内が浄化されるように、頭痛がゆっくりと引いていく。彼女の温もりの中で、僕の変身は自然と解除され同時に倦怠感が襲ってくる。

「よかった……大丈夫みたいだね。もうキュリアは倒れてるから、大丈夫だよ。君はもう戦わなくていい」

 キュリアは僕の一撃で完全に気を失ってしまっておりしばらく起きそうにない。
 あのキュリアは、エックスは今完全に倒された。

「椎葉さん……僕、何だか眠たく……」

 倦怠感が増し、強い眠気が僕を襲い視界すらも歪み出す。
 
「寝てていいよ……おやすみ」

 彼女の甘い声と共に、一気に増す眠気に飲み込まれ僕は深い深い眠りへと着くのだった。
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