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六章 文化祭

63話 ゲームの幕開け

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 中世風の街が燃えている。
 悲鳴が辺りに鳴り響く。
 前から、右から、左から、後ろから。まるでオーケストラの演奏のような音色がボクを包み込み耳に快感を与える。

 やっぱり楽しいな……でもこの星ももう壊しきっちゃった。また新しい星を見つけないと。面倒臭いなぁ……

「水……水をください……」

 小さな女の子が地面を這いずりこちらに近づいてくる。
 服はボロボロで泥で汚れていて、体のあちこちに火傷痕が見られる。痛々しくほんの些細なことで死んでしまいそうだ。

「水が欲しいの?」
「は……い……」

 最後の力を振り絞り、ボクに水を懇願する。懸命に生きようと命の炎を潰えさせないべくボクという希望に縋る。

「分かった! はいどうぞ!」

 ボクは彼女の手を持ち上げそれを彼女の口に無理矢理ねじ込む。そこに持っていた短剣を押し込み多量の出血を起こさせる。

「ほーらいっぱい水分があるよ! 美味しく飲んでよね!」
「ごぼっ!! ごぽぽぼっ!!」

 ボクが貴重な水分を吐き出さないように口を手で塞ぐと、まるで詰まった下水道のような音を立てこれが非常に滑稽で面白い。
 数秒もしないうちに彼女は絶命し、また一つおもちゃが壊れてしまった。

「あーあ。何かここも飽きてきたな」

 確かかなり離れているけど、水分量が異常なまでに多い星があったな。
 水は生命の源っていうし、きっと面白い生き物がいっぱいいるんだろうな……よし! 決めた! そこに行こう!!

 ボクは寄生していたこの体を捨て、本来の、長く白い虫の姿に戻る。
 そして宙に舞い上がりそのまま大気圏を超え、目的の星まで飛んでいくのだった。


☆☆☆


「……さん? 生人さん?」

 肩を揺らされ気持ち良く寝ていた僕は目を覚ます。
 どうやら授業中に寝てしまっていたらしく、今はお昼休みの時間でみんなワイワイしている。

「ふぁぁ……おはよう峰山さん」

 何か楽しい夢を見ていた気がしたが、それはもう頭の中から消え去ってしまっており思い出すことはできない。
 
「全く。寝不足ですか? いくら文化祭の出し物を決めるだけといっても、授業なんですからちゃんと起きてないと」
「ごめん。ちゃんと寝たはずなんだけど……最近どうも頭がボンヤリして」

 ここ数日妙に集中できなくて、まるで頭の中に別の誰かが住んでいるみたいに自分の意思で上手く体が動かせない。
 体調不良というほどではないが、それでもどこかぼんやりとした言葉にできない不安があった。
 
「生人くーん! 寧々ちゃーん! 一緒にお昼食べよー!」

 岩永さんが購買で買ってきたのか、両手にいくつかのパンを持って教室に入ってくる。
 僕達は机を合わせてお昼ご飯を食べ始める。

「そういえばこの学校の文化祭ってDOの人とかも来たりするけど、今年はアイが来るらしいね。二人とも知ってたの?」
「そうなんですね。わたくしは知りませんでした」
「僕もそんな話聞いてなかったけど、そうなんだ……ライブとかするのかな?」

 椎葉さんとはDOの方でよく話したりしているがそのような話は聞かされていない。彼女はプロのアイドル精神を持っているので、そういう情報管理はしっかりやっているのだろう。
 
「今年の文化祭は例年より盛り上がりそうだね。ウチ達も頑張って盛り上げていこうね!」

 そのまま楽しくご飯を楽しんでいると、制服のポケットに入れていたランストが入ったカードから機械音が鳴り響く。
 
「生人! 聞こえるか?」

 ランストからは父さんの焦る声が聞こえてきて、その声色から緊急事態だと察してすぐにランストを取り出す。

「どうしたの!?」
「緊急事態だ! 今すぐ本部まで来るんだ!  寧々もそこにいるか!?」
「はい! います!」
「二人で来てくれ! DOのメンバー全員が必要なんだ!」

 何が起こったのかは分からなかったが、とにかくすぐに向かはなければならないことだけは理解できたので岩永さんに一言入れて僕達は学校から飛び出してDO本部まで戻る。
 本部に着いてからは田所さんに会議室に連れてかれる。そこには父さん含めてDOのメンバー全員がいた。

「一体これは何事なのですか?」

 こんな緊急で全員呼び出される事態だ。よっぽどのことがあったのだろう。
 僕達は息を切らせながらも席に着き父さんの言葉を待つ。

「キュリアの居場所が分かった。今ここにいるメンバー全員で今から奴を捕えに行く」
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