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五章 ヒーローの存在意義

61話 縋ってしまう光(峰山視点)

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[スナイパーモード]

「先手必勝だ!!」

 田所さんは弾倉を回転させ、スナイパーで必殺の一撃を奴の頭部に放つ。
 しかし放たれた光弾は奴の硬い皮膚に弾かれてしまう。弾かれた光弾は木に命中し、跳ね返って威力が下がったとしても木に大きな風穴を開ける。
 つまり奴の皮膚は木を貫通する弾丸をくらっても擦り傷すらつかない程硬いということだ。

[必殺 ジャンプランス]

 生人さんはバネが跳ねるような爆発力を発揮し跳び、一気に距離を詰めて胴体に槍を突き刺す。
 しかし多少の傷はつけれたもののそれは誤差程度の怪我でしかなく、奴は特に痛がりもせず間髪入れずに鎌を振り下ろす。

「生人さん!!」

 わたくしは急加速して横から彼を攫うように掴み飛び上がり、なんとかその凶刃から彼を守り抜く。

[マシンガンモード]

 一旦わたくし達からカマキリを遠ざけるべく、田所さんが奴の顔面に向けて弾を乱射する。
 奴は素早く鎌を振り回し、放たれたうち一部を切り裂き無力化する。残りは額で受け流しこちらに反射してくる。
 急旋回して何とか躱すことができたが、奴にはほとんど傷がついていなかった。

 二人とも必死に戦ってる。なのにわたくしは……

 役に立ちたい。しかしわたくしの攻撃手段じゃ奴に傷すら与えられないことは分かりきっている。
 寧ろこのガトリング砲では跳ね返されて周りに迷惑をかけてしまう。

 でもだからって……何もできないなんて……嫌だ……!!

 姉さんと面を向かって話してしまったせいか、わたくしの無力感はより一層に強くなっていた。
 生人さんのおかげで焦りは小さくなっていた。しかしそれでもわたくしの中には重大な不安があった。
 このまま活躍できなかったら生人さんと引き離されるのではないかという不安が。
 
 胸が苦しい。引き裂けそうだ。彼と離されるのだけは、初めてできた、やっとできた大好きな友達から遠ざけられるのは死にたくなるほど辛かった。

「峰山さん! 助けてくれてありがとう!」

 彼のお礼の一言によりわたくしの意識は現実に戻される。

「よーし! このまま三人であいつを倒そう! みんなの力を合わせればきっといけるよ!」

 あぁ。温かい。
 この光はいつも寒く冷たくなったわたくしの心を温めてくれる。勇気を分けてくれる。
 それは眩しすぎるくらいで、わたくしなんて不釣り合いなのにそれでもずっと側にいてくれる彼のことをわたくしは……

「えぇ。いきましょう!!」

 その光に当てられ、わたくしはやる気づき奴に向かって飛んで突っ込む。
 飛ばしてきた真空刃を躱しながら奴のすぐ側まで接近する。

「僕を投げて!!」
「はい!!」

 真空刃が当たらないタイミングを見計らい、奴に向かって生人さんを投げる。
 
[アックスモード]

 槍が斧になり、その刃の平らな部分で奴を押し出すように殴る。
 皮膚でダメージは防げるが衝撃は完全に防げるわけではなく、奴は後ろに下げられてしまう。そう、水の方へ。

「なるほどそういうわけね。じゃあガンガンやりますか!!」

 生人さんの意図を察し、田所さんはマシンガンでとにかく撃ちまくり更に後退させる。
 わたくしも反射など考えずにとにかく撃ち続ける。
 しかし岩の縁のギリギリのところで奴は落ちないように耐え始めてしまう。

「わたくしに考えがあります! 一瞬だけ攻撃を止めてください!」

 豪雨より速い速度で撃ち続ける中、わたくしは奴の弾の防ぎ方からあることを見抜き作戦を立てる。
 二人ともわたくしのことを信じてくれて、攻撃を止め自分の作戦に託してくれる。

 わたくしは奴の方に駆け出し、攻撃を潜り抜け奴の眼前に飛び上がる。

「顔面に向かった攻撃は全て額で受け、眼球に向かう攻撃は全て鎌で対処している。つまり弱点は……ここですっ!!」

 奴の眼球にゼロ距離のガトリング砲をくらわせる。
 案の定弱点だったようで、眼球は潰れ血が噴き出る。

[必殺 ホッパーハイキック]
[スナイパーモード]

 二人は怯んでいる奴の胴体に向かって必殺の一撃をかます。
 それは決定打となり奴は押し出され水の中へ沈んでいく。そして血を出したことによって大量のピラニアに群がられ食い散らかされる。
 そしてカードが数枚飛んできたのでそれらをわたくしはキャッチする。
 それらはマンティスと書かれたアーマーカードと、ショックウェーブと書かれたスキルカードだ。

[制圧が完了しました。一分後に地上に転送します]

 そうしてわたくし達は今回も無事に制圧を完了することができ、地上へと送還されるのだった。
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