54 / 130
五章 ヒーローの存在意義
51話 アムバイス
しおりを挟む
「命綱の準備はいいかい?」
僕は朝食を済ませ、アスレチックの前まで来て美咲さんから受け取った命綱を装着する。
「うん! しっかり付けたよ!」
「この前君に渡した武器のために君の身体能力を計ることが主な目的だけど、実を言うと他にも目的があるんだ。
そのために君にはより効率良くここをクリアしてもらいたい」
美咲さんが紙を一枚取り出し僕に見せる。
ここのアスレチックの進むルートが書いてあり、そこそこ長く種類も三十以上ある。
「いいけど……どうして?」
「あの武器は状況に応じて剣、槍、斧を使い分ける必要がある。君には即座に最適解を見つけ行動に移す応用力を身につけて欲しいんだ」
僕は今まで武器というものを扱ってこなかった。大抵素手で格闘術を使い戦ってきた。
そんな武器の素人の僕は、今この武器を使えるようになったとしても上手く扱えないだろう。
「分かった。僕はもっと強くならなくちゃいけないし、やれることなら何でもやってみるよ!」
僕は気合い十分に、早速アスレチックの入り口まで行き軽く準備運動をする。
「一応私がストップウォッチで計るから時間は気にせず常にベストと思える行動をしてくれ」
「分かった! 行ってきます!」
僕はまず順路の最初である木の杭の上を跳んで進むアスレチックから始める。
僕は小さい足場の上をスイスイと進んでいき、ボルダリングエリアに辿り着く。
高さ五メートルくらいはありそうな崖がボルダリングの壁みたいになっており、僕は目で最短ルートを模索する。
「ここかっ!」
両手両足使い、手が届くギリギリまで攻めて空中を飛ぶように上へと登っていく。
「とうっ!!」
崖の上まで着きその次は水ゾーンと呼ばれるところで、大きな湖には様々なアスレチックがある。
網の上を渡ったり動く足場を走って僕はそのエリアも踏破する。
それからいくつものアスレチックをどんどん攻略していき、二十分くらいで僕はスタート地点に帰ってくる。
「良い走りっぷりだったよ。記録は……19分38秒だね」
美咲さんがドローンを自分の手元に戻し、ストップウォッチをこちらに見せてくれる。
「君には日曜までに10分を切ってもらおうか」
「え!? 10分!? 流石に無理なんじゃないかな……」
確かに先程の走りにはまだ改善の余地はたくさんあった。
しかし時間を半分にするというのは流石に無理がある。できて15分くらいが限界だろう。
「いや、私の計算上ではきっとできるはずだよ」
「美咲さんがそう言うなら……」
諦めちゃ……だめだよな。そうだ。あのキュリアを倒すためならどんなことでもやってやるんだ!
それから僕は日が暮れるまでずっとアスレチックを行った。
段々と体が慣れていき、先を読むことでより短時間で踏破できるようになり、この数ヶ月で上昇した身体能力を再確認することができとても有益な数時間だった。
「ふぅ……」
日が沈んできて、そろそろ見えづらくなって危ないので僕はアスレチックを切り上げてコテージに帰ってシャワーを浴びる。
お風呂から出てコーヒー牛乳を飲んでいる時、視界の端にパソコンを凝視して何かを打っている美咲さんが入る。
「何やってるの美咲さん?」
彼女の背後からパソコンの画面を覗き見てみたが、内容は難しく専門的で僕には分からない。
「ドローンで撮影した君の姿を元にその装備の最終調整をしていてね……そういえばそれの名前を決めていなかったな……生人君は何か良い案はあるかい?」
「名前……特には思いつかないなぁ」
いくつか頭の中で候補を挙げ考えてみるが、まさにこれだと思える良い名前は浮かんでこない。
「それじゃあアムバイスっていうのはどうかな? 腕につける機器だからアームデバイスから取って」
「それ良いね! それにしよう!」
☆☆☆
「はぁ……はぁ……美咲さん記録は!?」
次の日の昼過ぎ。僕は朝から練習に練習を重ね、自分なりにかなり良いタイムを出せたと思える走りができた。
「タイムは……9分48秒だね。やったね生人君!」
「やったぁ!!」
僕の心は達成感に満ち溢れ、嬉しさのあまりその場で跳び跳ねる。
「今の生人君ならきっとアムバイスも使いこなせるよ。
こっちもさっき最終調整が終わって完成したから今から持ってくるよ。ここで待ってて」
美咲さんはコテージの方にアムバイスを取りに行く。
「ふんふんふふーん」
僕は鼻歌を歌いながら美咲さんを待つ。今回の経験を通じて僕は視野が広く、対応力が上がったと思える。
それはつまり強くなり、理想のヒーローに近づいたということ。
それがたまらなく嬉しかった。
「うん?」
僕の広くなった視野は少し離れた所の木と木の間で何かが動いたのを見逃さなかった。
「登山しに来た人かな……?」
そう口にはしたものの、それはありえないということに気づく。
ここはDOの所有地。恐らく一般の人は入ってこれないようになっているはずだ。
「よぉ生人。オレの気配に気づくとは流石だな」
先程動きがあった方から、ふらりと自然に、まるでそこにいるのが当然かのようにキュリアが出てくる。
「なっ!? お前……!!」
咄嗟のことで動転しそうになったが、僕はすぐに冷静にポケットに入っているカードからランストを取り出し装着する。
「早速か……まぁオレも早くやりたかったし都合がいいや。やろうぜ! この前の続きをよぉ!!」
キュリアも例の菱形のランストを取り出し装着する。
「変身!!」
僕達の声が森の中に響き木々の葉を揺らす。
[ラスティー レベル1 Ready……アーマーカード ホッパー レベル6 start up……]
[select……フレイムファイター レベル25]
僕達はそれぞれの形態に変身し、互いに向き合うのだった。
僕は朝食を済ませ、アスレチックの前まで来て美咲さんから受け取った命綱を装着する。
「うん! しっかり付けたよ!」
「この前君に渡した武器のために君の身体能力を計ることが主な目的だけど、実を言うと他にも目的があるんだ。
そのために君にはより効率良くここをクリアしてもらいたい」
美咲さんが紙を一枚取り出し僕に見せる。
ここのアスレチックの進むルートが書いてあり、そこそこ長く種類も三十以上ある。
「いいけど……どうして?」
「あの武器は状況に応じて剣、槍、斧を使い分ける必要がある。君には即座に最適解を見つけ行動に移す応用力を身につけて欲しいんだ」
僕は今まで武器というものを扱ってこなかった。大抵素手で格闘術を使い戦ってきた。
そんな武器の素人の僕は、今この武器を使えるようになったとしても上手く扱えないだろう。
「分かった。僕はもっと強くならなくちゃいけないし、やれることなら何でもやってみるよ!」
僕は気合い十分に、早速アスレチックの入り口まで行き軽く準備運動をする。
「一応私がストップウォッチで計るから時間は気にせず常にベストと思える行動をしてくれ」
「分かった! 行ってきます!」
僕はまず順路の最初である木の杭の上を跳んで進むアスレチックから始める。
僕は小さい足場の上をスイスイと進んでいき、ボルダリングエリアに辿り着く。
高さ五メートルくらいはありそうな崖がボルダリングの壁みたいになっており、僕は目で最短ルートを模索する。
「ここかっ!」
両手両足使い、手が届くギリギリまで攻めて空中を飛ぶように上へと登っていく。
「とうっ!!」
崖の上まで着きその次は水ゾーンと呼ばれるところで、大きな湖には様々なアスレチックがある。
網の上を渡ったり動く足場を走って僕はそのエリアも踏破する。
それからいくつものアスレチックをどんどん攻略していき、二十分くらいで僕はスタート地点に帰ってくる。
「良い走りっぷりだったよ。記録は……19分38秒だね」
美咲さんがドローンを自分の手元に戻し、ストップウォッチをこちらに見せてくれる。
「君には日曜までに10分を切ってもらおうか」
「え!? 10分!? 流石に無理なんじゃないかな……」
確かに先程の走りにはまだ改善の余地はたくさんあった。
しかし時間を半分にするというのは流石に無理がある。できて15分くらいが限界だろう。
「いや、私の計算上ではきっとできるはずだよ」
「美咲さんがそう言うなら……」
諦めちゃ……だめだよな。そうだ。あのキュリアを倒すためならどんなことでもやってやるんだ!
それから僕は日が暮れるまでずっとアスレチックを行った。
段々と体が慣れていき、先を読むことでより短時間で踏破できるようになり、この数ヶ月で上昇した身体能力を再確認することができとても有益な数時間だった。
「ふぅ……」
日が沈んできて、そろそろ見えづらくなって危ないので僕はアスレチックを切り上げてコテージに帰ってシャワーを浴びる。
お風呂から出てコーヒー牛乳を飲んでいる時、視界の端にパソコンを凝視して何かを打っている美咲さんが入る。
「何やってるの美咲さん?」
彼女の背後からパソコンの画面を覗き見てみたが、内容は難しく専門的で僕には分からない。
「ドローンで撮影した君の姿を元にその装備の最終調整をしていてね……そういえばそれの名前を決めていなかったな……生人君は何か良い案はあるかい?」
「名前……特には思いつかないなぁ」
いくつか頭の中で候補を挙げ考えてみるが、まさにこれだと思える良い名前は浮かんでこない。
「それじゃあアムバイスっていうのはどうかな? 腕につける機器だからアームデバイスから取って」
「それ良いね! それにしよう!」
☆☆☆
「はぁ……はぁ……美咲さん記録は!?」
次の日の昼過ぎ。僕は朝から練習に練習を重ね、自分なりにかなり良いタイムを出せたと思える走りができた。
「タイムは……9分48秒だね。やったね生人君!」
「やったぁ!!」
僕の心は達成感に満ち溢れ、嬉しさのあまりその場で跳び跳ねる。
「今の生人君ならきっとアムバイスも使いこなせるよ。
こっちもさっき最終調整が終わって完成したから今から持ってくるよ。ここで待ってて」
美咲さんはコテージの方にアムバイスを取りに行く。
「ふんふんふふーん」
僕は鼻歌を歌いながら美咲さんを待つ。今回の経験を通じて僕は視野が広く、対応力が上がったと思える。
それはつまり強くなり、理想のヒーローに近づいたということ。
それがたまらなく嬉しかった。
「うん?」
僕の広くなった視野は少し離れた所の木と木の間で何かが動いたのを見逃さなかった。
「登山しに来た人かな……?」
そう口にはしたものの、それはありえないということに気づく。
ここはDOの所有地。恐らく一般の人は入ってこれないようになっているはずだ。
「よぉ生人。オレの気配に気づくとは流石だな」
先程動きがあった方から、ふらりと自然に、まるでそこにいるのが当然かのようにキュリアが出てくる。
「なっ!? お前……!!」
咄嗟のことで動転しそうになったが、僕はすぐに冷静にポケットに入っているカードからランストを取り出し装着する。
「早速か……まぁオレも早くやりたかったし都合がいいや。やろうぜ! この前の続きをよぉ!!」
キュリアも例の菱形のランストを取り出し装着する。
「変身!!」
僕達の声が森の中に響き木々の葉を揺らす。
[ラスティー レベル1 Ready……アーマーカード ホッパー レベル6 start up……]
[select……フレイムファイター レベル25]
僕達はそれぞれの形態に変身し、互いに向き合うのだった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~
北きつね
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。
ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。
一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。
ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。
おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。
女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる