34 / 130
三章 ダンジョンの元凶
32話 炎水
しおりを挟む
「まずはお前からだ天使!」
奴は空中に浮かんでいる峰山さんとの距離をありえない速度で詰め、そのまま誰も反応できていない内に彼女に拳を放つ。
炎を纏ったその拳は彼女の腹部に命中し大きく吹き飛ばす。彼女は背後にある壁に叩きつけられそこにめり込む。
[スキルカード 疾風 ヒート ジャンプ]
[必殺 ホッパーハイキック]
彼女をやられたことに動揺するよりも先に体が勝手に動いていた。コイツの異常性はヤバいと。そして峰山さんを怪我させたコイツを許せないと心が叫んでいる。
その熱く鋭く素早い蹴りは奴に一直線に飛んでいくが、僕の戦闘の過去最速だと思われるその一撃は奴に止められてしまう。当たり前のように手で受け止める。
「ぐっ……流石に真正面から必殺を受け止めるのは少し痛いな」
本来必殺カードは使用して命中すればほとんど相手を仕留めることができるものだ。だから使うタイミングは絶対に命中させる自信がある時だし、今回だって奴が空中で身動きできない時を狙った。
でも奴はその一撃必殺ともいえる一撃を真正面から受け止めたのだ。そのことが指し示す意味をすぐに理解できしまい、僕の全身に恐怖という感情が駆け巡る。
「男の子同士ワイワイやってるとこ悪いけど、犯罪者に遠慮する精神自分持ち合わせていないのよ。じゃ」
僕と奴が落下する最中、田所さんも跳んで奴に張り付くような位置に来る。その銃口は奴の頭をゼロ距離で捉えている。
その引き金を彼は容赦なく即座に引く。マシンガンモードにしていたのだろう。落下するまでに数十発の弾丸が奴の頭部に命中する。その痛さからか僕の足を離し、綺麗に着地する田所さんに対して僕と奴は地面に叩きつけられる。
「いったぁ……よくもやってくれ……」
奴が立ち上がるのと同時に一閃の光が奴に向かって行く。その光の先が、剣先が奴の喉元へと向かう。
「良い攻撃だ。だが無意味だな!」
奴はそれすらも体を少しずらすだけで躱し、風斗さんの腹に一発カウンターの蹴りを入れる。
彼は地面に跡を残しながら大きく後退させられる。その跡から彼がどれほど大きな力で踏ん張ったのか、そして奴がどれくらい強大な力で蹴ったのか分かってしまう。
「こっちの方が良いか」
奴がランストに似た装置の液晶部分をタップする。すると先程の正方形の物体が再び出現する。奴は今度は青色の部分をちょんと触る。
[change……アクアランス]
青色の部分が大きくなり奴の全身を包んだかと思ったら、奴の鎧が変化していた。青色の鎧に更にグローブの代わりに槍を持っている。
「さぁ、近づけるものなら近づいてみな!」
奴はその槍を振り回し僕達を近づけさせないようにする。先程の拳もある。どれ程の威力か計り知れないので僕達は奴にそう簡単に近づく訳にはいかない。
奴の槍捌きはとても上手く、ほとんど入り込む隙がない。
どうしたものかと間合いを取っていると、僕の真横を光の矢が通り抜ける。峰山さんが壁に埋まりながらも援護射撃してくれて、その矢が奴の頭部に直撃する。
「また不意打ちされたよ……やるじゃん。じゃあお返しくれてやるよ!」
奴はその場で彼女のいる方向に槍を突き出す。壁までは二十メートル程あり、槍の長さから考えても確実に届くはずがない。
しかし槍を突き出すと先が吹っ飛んでいったのだ。いや、飛んだのではない。先の金属部分と持ち手がくっついている部分から水が吹き出したのだ。
それは峰山さんに向かっていくが、彼女の頬を掠るだけだった。
奴が手元を狂わせ外したわけではない。田所さんが彼女の元に攻撃が届く前にスナイパーモードにした銃で奴の手を撃ったからだ。
あの威力重視の貫通性の高いスナイパーの一発をもらっても、奴は攻撃先を少しずらしてしまうだけで怪我させることはおろか槍を弾くことすらできなかった。
「おいおい。その硬さはフェアじゃないだろ」
完璧な一発をくらわせてもまともなダメージすら受けない奴に僕達は萎縮してしまう。奴はその間待ってくれるはずはなく、水が出たままの槍を振り回し僕達三人を薙ぎ払う。
田所さんは即座に手をタイヤに変えて衝撃を殺したが、僕と風斗さんは上手く受け身を取れずに壁や柱に激突してしまう。
「おいおい勘弁してくれよ。タイマンは流石にキツいって。これは終わったら上に給料上げろって言ってもバチ当たんないだろ」
田所さんは軽口の割にはかなり苦しい状況だということをしっかり理解しているようで、足もタイヤに変えて一旦奴から距離を取る。
「田所さん……僕……も……ゲホッゲホッ!」
立ち上がろうとしたが、先程槍を当てられた腹部が痛く立ち上がれない。刺されなかったのは幸いだったが、それでも硬い物を素早く当てられたので痛みは凄まじかった。
「立つな立つな! コイツなんて自分一人で大丈夫だからさ……だから三人は休んでていいよ」
彼は僕達三人に休むように促し、たった一人で奴と対峙する。
「タイマンか……じゃあこっちも応えてやるよ」
奴は再び液晶部分をタップして正方形を出現させ、今度は緑色の部分をタップする。
奴は空中に浮かんでいる峰山さんとの距離をありえない速度で詰め、そのまま誰も反応できていない内に彼女に拳を放つ。
炎を纏ったその拳は彼女の腹部に命中し大きく吹き飛ばす。彼女は背後にある壁に叩きつけられそこにめり込む。
[スキルカード 疾風 ヒート ジャンプ]
[必殺 ホッパーハイキック]
彼女をやられたことに動揺するよりも先に体が勝手に動いていた。コイツの異常性はヤバいと。そして峰山さんを怪我させたコイツを許せないと心が叫んでいる。
その熱く鋭く素早い蹴りは奴に一直線に飛んでいくが、僕の戦闘の過去最速だと思われるその一撃は奴に止められてしまう。当たり前のように手で受け止める。
「ぐっ……流石に真正面から必殺を受け止めるのは少し痛いな」
本来必殺カードは使用して命中すればほとんど相手を仕留めることができるものだ。だから使うタイミングは絶対に命中させる自信がある時だし、今回だって奴が空中で身動きできない時を狙った。
でも奴はその一撃必殺ともいえる一撃を真正面から受け止めたのだ。そのことが指し示す意味をすぐに理解できしまい、僕の全身に恐怖という感情が駆け巡る。
「男の子同士ワイワイやってるとこ悪いけど、犯罪者に遠慮する精神自分持ち合わせていないのよ。じゃ」
僕と奴が落下する最中、田所さんも跳んで奴に張り付くような位置に来る。その銃口は奴の頭をゼロ距離で捉えている。
その引き金を彼は容赦なく即座に引く。マシンガンモードにしていたのだろう。落下するまでに数十発の弾丸が奴の頭部に命中する。その痛さからか僕の足を離し、綺麗に着地する田所さんに対して僕と奴は地面に叩きつけられる。
「いったぁ……よくもやってくれ……」
奴が立ち上がるのと同時に一閃の光が奴に向かって行く。その光の先が、剣先が奴の喉元へと向かう。
「良い攻撃だ。だが無意味だな!」
奴はそれすらも体を少しずらすだけで躱し、風斗さんの腹に一発カウンターの蹴りを入れる。
彼は地面に跡を残しながら大きく後退させられる。その跡から彼がどれほど大きな力で踏ん張ったのか、そして奴がどれくらい強大な力で蹴ったのか分かってしまう。
「こっちの方が良いか」
奴がランストに似た装置の液晶部分をタップする。すると先程の正方形の物体が再び出現する。奴は今度は青色の部分をちょんと触る。
[change……アクアランス]
青色の部分が大きくなり奴の全身を包んだかと思ったら、奴の鎧が変化していた。青色の鎧に更にグローブの代わりに槍を持っている。
「さぁ、近づけるものなら近づいてみな!」
奴はその槍を振り回し僕達を近づけさせないようにする。先程の拳もある。どれ程の威力か計り知れないので僕達は奴にそう簡単に近づく訳にはいかない。
奴の槍捌きはとても上手く、ほとんど入り込む隙がない。
どうしたものかと間合いを取っていると、僕の真横を光の矢が通り抜ける。峰山さんが壁に埋まりながらも援護射撃してくれて、その矢が奴の頭部に直撃する。
「また不意打ちされたよ……やるじゃん。じゃあお返しくれてやるよ!」
奴はその場で彼女のいる方向に槍を突き出す。壁までは二十メートル程あり、槍の長さから考えても確実に届くはずがない。
しかし槍を突き出すと先が吹っ飛んでいったのだ。いや、飛んだのではない。先の金属部分と持ち手がくっついている部分から水が吹き出したのだ。
それは峰山さんに向かっていくが、彼女の頬を掠るだけだった。
奴が手元を狂わせ外したわけではない。田所さんが彼女の元に攻撃が届く前にスナイパーモードにした銃で奴の手を撃ったからだ。
あの威力重視の貫通性の高いスナイパーの一発をもらっても、奴は攻撃先を少しずらしてしまうだけで怪我させることはおろか槍を弾くことすらできなかった。
「おいおい。その硬さはフェアじゃないだろ」
完璧な一発をくらわせてもまともなダメージすら受けない奴に僕達は萎縮してしまう。奴はその間待ってくれるはずはなく、水が出たままの槍を振り回し僕達三人を薙ぎ払う。
田所さんは即座に手をタイヤに変えて衝撃を殺したが、僕と風斗さんは上手く受け身を取れずに壁や柱に激突してしまう。
「おいおい勘弁してくれよ。タイマンは流石にキツいって。これは終わったら上に給料上げろって言ってもバチ当たんないだろ」
田所さんは軽口の割にはかなり苦しい状況だということをしっかり理解しているようで、足もタイヤに変えて一旦奴から距離を取る。
「田所さん……僕……も……ゲホッゲホッ!」
立ち上がろうとしたが、先程槍を当てられた腹部が痛く立ち上がれない。刺されなかったのは幸いだったが、それでも硬い物を素早く当てられたので痛みは凄まじかった。
「立つな立つな! コイツなんて自分一人で大丈夫だからさ……だから三人は休んでていいよ」
彼は僕達三人に休むように促し、たった一人で奴と対峙する。
「タイマンか……じゃあこっちも応えてやるよ」
奴は再び液晶部分をタップして正方形を出現させ、今度は緑色の部分をタップする。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました
yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。
二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか!
ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

どーも、反逆のオッサンです
わか
ファンタジー
簡単なあらすじ オッサン異世界転移する。 少し詳しいあらすじ 異世界転移したオッサン...能力はスマホ。森の中に転移したオッサンがスマホを駆使して普通の生活に向けひたむきに行動するお話。 この小説は、小説家になろう様、カクヨム様にて同時投稿しております。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる