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二章 失った者達と生人の秘密
23話 レースの行方
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バッタ人間は僕のバイクに飛び乗ってきて僕の首筋に噛み付いてくる。バリバリ、ギシギシと嫌な音を鎧が立てる。
「うぐっ……うぅぁぁぁ!!」
しかし僕はその痛みを我慢して奴を持ち上げ、アンバランスな体勢になりながらも奴を抱き抱え、ブーメランが帰ってくるタイミングを見計らってそれを奴の体に突き刺す。
「ゴハッ!」
それは奴の胸を貫いており、奴は血を吐き苦しみ出す。しかし流石サタンといったところか、それでもまだ絶命には至っていないようだ。
「やられないか……ならこれならどうだ!」
僕は横転しそうになりながら奴を前方へと放り投げ、不安定に蛇行しながら奴を轢き飛ばす。奴の体は大きく跳ね上がり、二枚のカードが宙を舞う。僕は反射的にそれらに手を伸ばし、速度を落とすことなく二枚ともキャッチする。
ドロップしたカードは珍しくスキルカードとアーマーカードだった。
「お、アーマーカードだ! やった! ゲットするの久しぶりだな……よし、早速試してみるか!」
僕はスキルカードはデッキケースに仕舞い、アーマーカードの方はランストに挿入してみる。
[アーマーカード ホッパー レベル6 start up……]
着ていたウルフのアーマーが剥がれ、僕はバッタを模した鎧を纏う。全身緑色で足は茶色で少し太めになっている。
レベルが1上がった! 今度からはこれを……いやその前に動作確認とかもしないと。じゃあ早速試してみるか!
僕は一旦バイクから足を出し、その足で地面を力強く蹴ってみる。ドンッ! という大きな衝撃が足に伝わると同時に僕は数十メートル前進する。
「おおお! これがバッタの力か!」
その加速を殺さないようにバイクに戻り、上手く着地してそのまま発進する。今度はしっかり前に注意を払いながら、先頭集団に追いつくべく更に加速する。
そうして大した時間も経たず僕は先頭集団に追いつく。三人はそれぞれ武器を取り出し、走りながらもその武器でお互いを攻撃しあっていた。
しかしその中のある一人が、先程僕に槍で攻撃してきた奴が圧倒的に優位だった。
容易に他二人の攻撃を槍で弾き、敢えて攻撃せずに相手を煽っていた。お前らなんていつでも倒せるぞと。
槍を構えこちらを振り返った時奴と僕は目が合う。
「ふふ……メインが来てくれたようだ。お前らとのお遊びは終わりだ!」
奴はいきなりバイクから跳び上がり、近くにいた別のサタンに向かって槍を投げ下ろす。
槍が頭部に突き刺さり即死したサタンを踏み台にして、もう一度跳び上がり残ったサタンに蹴りを放つ。
あまりにも速いその蹴りはまるで先程の槍のようにも思えて、その一撃は腹部を明確に貫く。もちろんそんな状態で存命できるはずもなく、貫かれた奴はすぐに絶命してカードとなる。
数枚のカードが辺りを舞うが、奴からは注意を逸らさない方が良いと思い、後ろの田所さんに回収を任せて僕は奴から視線を一切逸らさずに近くにつく。
「見せてみろ。お前の力を!」
奴は先程回収した槍を僕に放ってくる。その速さは先程よりも断然速く、槍で攻撃してくるだろうと予想していなければ躱わせなかった。
槍が僕の腹ギリギリの所を通り過ぎ、その風圧が僕にプレッシャーを与えてくる。
このレースという状況で、素早くリーチも長い槍か……どう対処したらいいんだ……
「そろそろだな」
「え? 何が?」
奴が前方を見て呟くと、僕から距離を少し取りついでに加速した。僕も負けじと追い縋ろうとするが、僕の視界に開けた天井が入ったことにより一歩踏み留まる。
今まで一筋の透明な管のような道だったのが、急に上方向にも枝分かれする。僕は直感で何かあると感じ取り加速を緩める。
その判断は正解だった。突然枝分かれしている地点の地面が割れ、凄まじい勢いで下から水が吹き出してくる。
「上で待っているぞ!」
奴はその水流に乗っかり上へと昇っていく。
「行くしかないか……」
水流を避けて前に進むこともできるが、奴が上に行ったということはそっちが正解ルートなのだろう。それに前へ進んでもし行き止まりだったらレースは確実に負けだが、上へ行けば行き止まりでも奴と戦うことはできる。
僕には選択肢など残されていなかった。覚悟を決めその水流へ突っ込んで行く。無重力かと錯覚してしまうようなふわりとした感覚が僕を襲い、先程とは全く違う場所に出る。
黒が多い内装に目立つように敷かれたレッドカーペット。壁に飾られた松明がこの室内を明るく照らしている。
また変な場所に出たと思う暇もなく、視界の端から光が飛んでくる。正確には光のように思える速度の槍が飛んできた。
僕はそれをギリギリの所で受け止める。額に少し槍の先が当たり画鋲が刺さったような痛みが走る。
「よく受け止めたな! じゃあこれはどうだ!」
僕が冷や汗をかくよりも早く奴が跳んでこちらに向かってくる。咄嗟に今掴んだ槍を投げ返すが、奴はそれを空中で身を捻ることによって避け、その捻りを活かして回し蹴りを放ってくる。
僕は手と足でガードするも吹き飛ばされてしまい、壁に激突してから更に地面に叩きつけられる。
一呼吸も置かずに立ち上がったはずだが、その時にはもう奴は次の攻撃に移っていた。槍を回収していてこちらに突きを繰り出す。
[スキルカード 疾風]
この位置では普通では確実に躱わせなかった。なので僕は一か八かデッキケースに手を伸ばして、奴の攻撃よりも先にランストにセットできることに賭けた。
その賭けは大勝ちだった。僕は加速して突きを躱し、僅かしかない時間を駆使してこの時間で勝負を決めようとする。
さっき拾ったスキルカード。確かジャンプって名前だったはず……このバッタのアーマーにジャンプ……大体何が起こるか分かったし試してみるか!
[スキルカード ジャンプ]
途端に僕の足に緑色のオーラが纏われる。自然と力が足に入り、もし今ここで垂直飛びをしたら十メートル近くはある天井に突き刺さってしまうのではないかと思ってしまうほどだ。
僕はその力を上方向ではなく前へと利用する。一気に距離を詰め、まだ残っている力で奴の腹に一発蹴りをお見舞いする。
ドンッッ!! などとまるでトラックが激突したような轟音が鳴り響く。
「ゴハッ……見事……だ……」
壁に大きな音を立ててめり込んだ奴は、最後に一言そう呟いてカードとなり消滅する。僕は奴が落とした数枚のアイテムカードを拾い上げデッキケースに仕舞うのだった。
「うぐっ……うぅぁぁぁ!!」
しかし僕はその痛みを我慢して奴を持ち上げ、アンバランスな体勢になりながらも奴を抱き抱え、ブーメランが帰ってくるタイミングを見計らってそれを奴の体に突き刺す。
「ゴハッ!」
それは奴の胸を貫いており、奴は血を吐き苦しみ出す。しかし流石サタンといったところか、それでもまだ絶命には至っていないようだ。
「やられないか……ならこれならどうだ!」
僕は横転しそうになりながら奴を前方へと放り投げ、不安定に蛇行しながら奴を轢き飛ばす。奴の体は大きく跳ね上がり、二枚のカードが宙を舞う。僕は反射的にそれらに手を伸ばし、速度を落とすことなく二枚ともキャッチする。
ドロップしたカードは珍しくスキルカードとアーマーカードだった。
「お、アーマーカードだ! やった! ゲットするの久しぶりだな……よし、早速試してみるか!」
僕はスキルカードはデッキケースに仕舞い、アーマーカードの方はランストに挿入してみる。
[アーマーカード ホッパー レベル6 start up……]
着ていたウルフのアーマーが剥がれ、僕はバッタを模した鎧を纏う。全身緑色で足は茶色で少し太めになっている。
レベルが1上がった! 今度からはこれを……いやその前に動作確認とかもしないと。じゃあ早速試してみるか!
僕は一旦バイクから足を出し、その足で地面を力強く蹴ってみる。ドンッ! という大きな衝撃が足に伝わると同時に僕は数十メートル前進する。
「おおお! これがバッタの力か!」
その加速を殺さないようにバイクに戻り、上手く着地してそのまま発進する。今度はしっかり前に注意を払いながら、先頭集団に追いつくべく更に加速する。
そうして大した時間も経たず僕は先頭集団に追いつく。三人はそれぞれ武器を取り出し、走りながらもその武器でお互いを攻撃しあっていた。
しかしその中のある一人が、先程僕に槍で攻撃してきた奴が圧倒的に優位だった。
容易に他二人の攻撃を槍で弾き、敢えて攻撃せずに相手を煽っていた。お前らなんていつでも倒せるぞと。
槍を構えこちらを振り返った時奴と僕は目が合う。
「ふふ……メインが来てくれたようだ。お前らとのお遊びは終わりだ!」
奴はいきなりバイクから跳び上がり、近くにいた別のサタンに向かって槍を投げ下ろす。
槍が頭部に突き刺さり即死したサタンを踏み台にして、もう一度跳び上がり残ったサタンに蹴りを放つ。
あまりにも速いその蹴りはまるで先程の槍のようにも思えて、その一撃は腹部を明確に貫く。もちろんそんな状態で存命できるはずもなく、貫かれた奴はすぐに絶命してカードとなる。
数枚のカードが辺りを舞うが、奴からは注意を逸らさない方が良いと思い、後ろの田所さんに回収を任せて僕は奴から視線を一切逸らさずに近くにつく。
「見せてみろ。お前の力を!」
奴は先程回収した槍を僕に放ってくる。その速さは先程よりも断然速く、槍で攻撃してくるだろうと予想していなければ躱わせなかった。
槍が僕の腹ギリギリの所を通り過ぎ、その風圧が僕にプレッシャーを与えてくる。
このレースという状況で、素早くリーチも長い槍か……どう対処したらいいんだ……
「そろそろだな」
「え? 何が?」
奴が前方を見て呟くと、僕から距離を少し取りついでに加速した。僕も負けじと追い縋ろうとするが、僕の視界に開けた天井が入ったことにより一歩踏み留まる。
今まで一筋の透明な管のような道だったのが、急に上方向にも枝分かれする。僕は直感で何かあると感じ取り加速を緩める。
その判断は正解だった。突然枝分かれしている地点の地面が割れ、凄まじい勢いで下から水が吹き出してくる。
「上で待っているぞ!」
奴はその水流に乗っかり上へと昇っていく。
「行くしかないか……」
水流を避けて前に進むこともできるが、奴が上に行ったということはそっちが正解ルートなのだろう。それに前へ進んでもし行き止まりだったらレースは確実に負けだが、上へ行けば行き止まりでも奴と戦うことはできる。
僕には選択肢など残されていなかった。覚悟を決めその水流へ突っ込んで行く。無重力かと錯覚してしまうようなふわりとした感覚が僕を襲い、先程とは全く違う場所に出る。
黒が多い内装に目立つように敷かれたレッドカーペット。壁に飾られた松明がこの室内を明るく照らしている。
また変な場所に出たと思う暇もなく、視界の端から光が飛んでくる。正確には光のように思える速度の槍が飛んできた。
僕はそれをギリギリの所で受け止める。額に少し槍の先が当たり画鋲が刺さったような痛みが走る。
「よく受け止めたな! じゃあこれはどうだ!」
僕が冷や汗をかくよりも早く奴が跳んでこちらに向かってくる。咄嗟に今掴んだ槍を投げ返すが、奴はそれを空中で身を捻ることによって避け、その捻りを活かして回し蹴りを放ってくる。
僕は手と足でガードするも吹き飛ばされてしまい、壁に激突してから更に地面に叩きつけられる。
一呼吸も置かずに立ち上がったはずだが、その時にはもう奴は次の攻撃に移っていた。槍を回収していてこちらに突きを繰り出す。
[スキルカード 疾風]
この位置では普通では確実に躱わせなかった。なので僕は一か八かデッキケースに手を伸ばして、奴の攻撃よりも先にランストにセットできることに賭けた。
その賭けは大勝ちだった。僕は加速して突きを躱し、僅かしかない時間を駆使してこの時間で勝負を決めようとする。
さっき拾ったスキルカード。確かジャンプって名前だったはず……このバッタのアーマーにジャンプ……大体何が起こるか分かったし試してみるか!
[スキルカード ジャンプ]
途端に僕の足に緑色のオーラが纏われる。自然と力が足に入り、もし今ここで垂直飛びをしたら十メートル近くはある天井に突き刺さってしまうのではないかと思ってしまうほどだ。
僕はその力を上方向ではなく前へと利用する。一気に距離を詰め、まだ残っている力で奴の腹に一発蹴りをお見舞いする。
ドンッッ!! などとまるでトラックが激突したような轟音が鳴り響く。
「ゴハッ……見事……だ……」
壁に大きな音を立ててめり込んだ奴は、最後に一言そう呟いてカードとなり消滅する。僕は奴が落とした数枚のアイテムカードを拾い上げデッキケースに仕舞うのだった。
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