転生した先で蔑まれ追放された俺の異世界冒険ライフ 〜魔法も使えない無能と言われた俺には、クリスタルを全属性扱える才能があったみたいです!?〜

ニゲル

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一章 出会いとクリスタル

29話 総取り

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「二人とも……クリスタルを全て俺に預けてくれないか?」
「それはだめよ。まだリュージはクリスタルの力に完全には慣れきっていない。そんなに一気にクリスタルを取り込んだら反動に耐えきれないわ」
「取り込みはしない。六つ属性のクリスタルを日本刀に嵌めて、残りを体内に入れてコントロールするんだ」

 自分でも無茶なことを言っている自覚はある。クリスタルの力は強大だがその分反動や疲労は凄まじい。
 だが三人でこのまま攻撃し続けても恐らく奴は倒せない。ならこの方法しかない。

「分かったわ……アキ。クリスタルを取り出せるかしら?」
「はい!」

 アキが三つのクリスタルを取り出しそれを俺に投げ渡してくれる。

「頼んだわよ!」

 ミーアも五個の風のクリスタルを渡してくれて、これで手元に八つクリスタルがあることになる。
 手に持つだけでどっと疲労が溜まる。もしかしたらこの力を扱えきれないかもしれない。

 弱気なっちゃだめだ。ここで俺がやるしかないんだ……!!

 風のクリスタルを体内に取り込み代わりに火のクリスタルをちょうど六つ手に持つ。
 体内にある全てのクリスタルをオンにして、火のクリスタルを日本刀に嵌め込む。

「ぐっ……この熱さは……!?」

 肉を鉄板に押し付けたかのような音が手元でする。
 俺の手が焼けている。刀身から放たれる熱は今までの比にならず持っているだけで手が焼け爛れていく。
 だがそれでもまだ神経まで焼けてはいない。力は入るし振り下ろすこともできる。

「うぉぉぉぉ!! せいやぁぁぁぁぁっ!!」

 風の力で自分を高速で押し出し、その勢いを利用して躱すことすらできるわけもない高速の一閃を放つ。
 俺すらも包み込む炎が巻き上がりそれは俺と魔物を焼き尽くす。
 
「じゃあな」

 しかしまだ俺は死ぬつもりはなく、奴に日本刀を突き刺し突風を発生させ俺だけを炎の外に飛び出させる。
 
「ゴォォォォァァァァァァ!!」

 この一撃は魔物の再生能力を上回るものであり、奴は焼き尽くされ灰となりその上に様々なクリスタルが落ちている。
 そこにはミーアの集める風のクリスタルもある。

「ゴハッ!!」

 俺は吐血とともに体内のクリスタルを全て辺りに散らせてしまう。過剰に力を使ってしまったせいだろう。

「クリスタルか……拾わない……と……」

 焼け爛れたボロボロの体で落としてしまったクリスタルを拾おうとする。

「動かないでください。僕が拾いますから」

 アキが無理に動かそうとする俺の腕を掴み止め、代わりに落ちたクリスタルを拾おうとしてくれる。
 か弱く怯えていた彼女の姿はもうなく、そこには頼りになる一人の人間の背中がある。
 
 俺も過保護すぎたのだと反省して視線を下に落とそうとした時不自然なものが視界に入る。半透明の視認しにくい長い……

「二人とも逃げ……」

 それが何か理解した瞬間声を張り上げようとするが、迫ってきていた触手が俺を突き飛ばす。同時に間近で強大なクリスタルの圧が放たれる。
 そして二人も状況を飲み込む暇もなく触手に跳ね飛ばされ各々地面や木に激突してしまう。
 みんなクリスタルを一つも取り込んでいない。そんな無力な状態の中攻撃をくらってしまった。

「クソ……立てない……!!」

 必死に足に力を込めるが、足は痙攣するばかりでまともに動かせない。二人も同様の症状が出てしまっており今この場に動ける人はいない。

「これでワタシの総取りかな」

 触手が落ちているクリスタルを全て掻き集め、本体であるガラスアの元まで持っていく。

「やっと手に入れた……ワタシのクリスタルだ!!」

 奴はクリスタルを全て取り込み、更に圧が強まる。
 その底のない強さと悪意に当てられ俺は久しぶりに恐怖を思い出させられる。

「いやーあの化物を作って上手く君達が疲弊したところを狙おうと思ったけど、大成功だね。
 じゃあ用も済んだことだし……死のうか」

 こちらはもうボロボロでクリスタルもないというのに、奴は慢心せずに鉤爪とクロスボウを生成し装備し更に追加で触手を展開する。
 
「ミーア……何か策とかってあったりする?」
「ないわね。残念ながら」

 ガラスアは俺とミーア二人がかりでも勝てない強敵だ。それなのに今はこちらにクリスタルはなく、奴には追加で水のクリスタルが一個加わってしまった。
 俺が囮になって二人を逃そうとも考えたが、俺の今の体じゃそれすらできない。
 
「二人とも……逃げるんだ。できる限り遠くに!!」

 だがそれでもやるしかない。ほんの僅かな希望に縋る思いで俺は奴の方へ四つん這いになりながらも進む。
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