27 / 53
一章 出会いとクリスタル
27話 罪と力(アキ視点)
しおりを挟む
リュージ様とミーア様が部屋から飛び出していく。僕は待っていろと言われた手前ここでただ何もできずじっとする。
行っても足手纏いになることは十分に理解している。それでも二人の元にすぐにでも向かいたい。力になりたい。
そんな気持ちが心の中を蠢き、ここで待っていなければいけないというのに、僕の足を動かそうとする。
「冒険者の人達が帰ってきたぞー!!」
しばらくして家の外から聞こえてきたその言葉に背中を押され、意識していないのに僕は家の外に飛び出す。
人が集まっている方に走り、その帰ってきたという人達の元に向かう。
「リュージ様……? ミーア様……?」
しかし二人の姿はどこにもない。居るのは四人の大人と背負われた子供だけだ。
その四人はボロボロで、内一人は大柄な男性に背負われている。お腹の部分の鎧が大きくひしゃげており、それ以外にも外傷が目立つ。
そんな彼らを見てしまって、二人も近々このようになってしまうのではと、それどころかもっと酷い目に遭ってしまうのではないかと考えてしまう。
胸が苦しい。ナイフを突き刺されたようだ。
それくらいこの現状が辛く、何もできない無力な自分が本当に情けない。
僕は二人によくしてもらって、優しさや温かさをたくさん分けてもらってきた。それなのに何も返せずにまた一人ぼっちになってしまう。
「僕が…….僕がクリスタルの力を扱えたら……!!」
人混みから少し離れ自分の胸に手を当ててクリスタルの力を引き出そうとする。ミーア様にこの前教えてもらったように精神世界に行こうとする。
「うっ……ぐぅ……!!」
できない。
どれだけ意識を集中させても途中で胸の鼓動が速くなり、頭を重たいもので殴りつけられたような痛みが襲い集中できなくなる。
二人を助けたいのに……何で……どうして僕はこの力を扱えないの!? 僕が何をしたって……
その考えが頭をよぎるのと同時に更に頭痛が酷くなる。まるで僕を誰かが罰するように与えられた痛みの中意識が闇へと落ちていく。
目を覚ませば僕は暗く、空にはドス黒い何かが蠢いている空間にいた。
「何これ……これが僕の精神世界……?」
辺りを見てクリスタルを探そうとしたが、視界が大きく揺れて僕は坂を転げ落ちていってしまう。その坂は妙に角張っていて硬く、転げ終わった後坂の正体が分かり背筋が凍りつく。
僕が先程までいたのは頭蓋骨の山の頂上だった。数百もの頭蓋骨が積み重なっている。
「うっ……うぉぇぇぇぇ!!」
頭蓋骨には血肉が付着しているものもあり、唐突に見せられたその惨状に耐えきれず僕はその場で嘔吐してしまう。
吐く際下を向いた結果僕は更なる惨状を目の当たりにしてしまう。
なんと地面が全て骨で埋め尽くされていたのだ。数多の誰かの屍の上に僕がいる。その事実のせいで胃の中のものが全て出されてしまう。
骨が吐瀉物でまみれて、やっと僕は正気を取り戻し冷静に辺りを視認することができる。相変わらずの景色に吐き気が込み上げてくるがもう吐くものすらない。
「あれは……玉座?」
数十メートル先に暗い赤色の玉座が置いてある。
骨の上に置かれているせいで傾いているそれの前まで来て僕は気づく。暗い赤色で装飾されているのではない。玉座に血がベットリと塗られているのだと。
玉座の上には赤色の宝石が、クリスタルが三つ置かれておりそれらは突然浮遊しこちらに向かってくる。
この景色が何を意味しているのかは分からない。でも、僕がやることは一つだ。僕は……
「二人の力になりたい!!」
迷わず目の前のクリスタルに手を伸ばし掴み取る。
胸の鼓動が速くなりとてつもない程の熱気に包み込まれる。しかしその熱気が僕に与える。自信を。
「この力があれば……!!」
気づけば視界が元に戻っている。
選択肢は一つだけ。僕はクリスタルの圧がする方へ駆け出す。
木々の間を潜り抜け、最短距離で気配がする方へと突き進んでいく。
「待っててください……今行きます!!」
こうして溢れ出す灼熱と自信を胸に仕舞い込み戦場へと向かうのだった。
行っても足手纏いになることは十分に理解している。それでも二人の元にすぐにでも向かいたい。力になりたい。
そんな気持ちが心の中を蠢き、ここで待っていなければいけないというのに、僕の足を動かそうとする。
「冒険者の人達が帰ってきたぞー!!」
しばらくして家の外から聞こえてきたその言葉に背中を押され、意識していないのに僕は家の外に飛び出す。
人が集まっている方に走り、その帰ってきたという人達の元に向かう。
「リュージ様……? ミーア様……?」
しかし二人の姿はどこにもない。居るのは四人の大人と背負われた子供だけだ。
その四人はボロボロで、内一人は大柄な男性に背負われている。お腹の部分の鎧が大きくひしゃげており、それ以外にも外傷が目立つ。
そんな彼らを見てしまって、二人も近々このようになってしまうのではと、それどころかもっと酷い目に遭ってしまうのではないかと考えてしまう。
胸が苦しい。ナイフを突き刺されたようだ。
それくらいこの現状が辛く、何もできない無力な自分が本当に情けない。
僕は二人によくしてもらって、優しさや温かさをたくさん分けてもらってきた。それなのに何も返せずにまた一人ぼっちになってしまう。
「僕が…….僕がクリスタルの力を扱えたら……!!」
人混みから少し離れ自分の胸に手を当ててクリスタルの力を引き出そうとする。ミーア様にこの前教えてもらったように精神世界に行こうとする。
「うっ……ぐぅ……!!」
できない。
どれだけ意識を集中させても途中で胸の鼓動が速くなり、頭を重たいもので殴りつけられたような痛みが襲い集中できなくなる。
二人を助けたいのに……何で……どうして僕はこの力を扱えないの!? 僕が何をしたって……
その考えが頭をよぎるのと同時に更に頭痛が酷くなる。まるで僕を誰かが罰するように与えられた痛みの中意識が闇へと落ちていく。
目を覚ませば僕は暗く、空にはドス黒い何かが蠢いている空間にいた。
「何これ……これが僕の精神世界……?」
辺りを見てクリスタルを探そうとしたが、視界が大きく揺れて僕は坂を転げ落ちていってしまう。その坂は妙に角張っていて硬く、転げ終わった後坂の正体が分かり背筋が凍りつく。
僕が先程までいたのは頭蓋骨の山の頂上だった。数百もの頭蓋骨が積み重なっている。
「うっ……うぉぇぇぇぇ!!」
頭蓋骨には血肉が付着しているものもあり、唐突に見せられたその惨状に耐えきれず僕はその場で嘔吐してしまう。
吐く際下を向いた結果僕は更なる惨状を目の当たりにしてしまう。
なんと地面が全て骨で埋め尽くされていたのだ。数多の誰かの屍の上に僕がいる。その事実のせいで胃の中のものが全て出されてしまう。
骨が吐瀉物でまみれて、やっと僕は正気を取り戻し冷静に辺りを視認することができる。相変わらずの景色に吐き気が込み上げてくるがもう吐くものすらない。
「あれは……玉座?」
数十メートル先に暗い赤色の玉座が置いてある。
骨の上に置かれているせいで傾いているそれの前まで来て僕は気づく。暗い赤色で装飾されているのではない。玉座に血がベットリと塗られているのだと。
玉座の上には赤色の宝石が、クリスタルが三つ置かれておりそれらは突然浮遊しこちらに向かってくる。
この景色が何を意味しているのかは分からない。でも、僕がやることは一つだ。僕は……
「二人の力になりたい!!」
迷わず目の前のクリスタルに手を伸ばし掴み取る。
胸の鼓動が速くなりとてつもない程の熱気に包み込まれる。しかしその熱気が僕に与える。自信を。
「この力があれば……!!」
気づけば視界が元に戻っている。
選択肢は一つだけ。僕はクリスタルの圧がする方へ駆け出す。
木々の間を潜り抜け、最短距離で気配がする方へと突き進んでいく。
「待っててください……今行きます!!」
こうして溢れ出す灼熱と自信を胸に仕舞い込み戦場へと向かうのだった。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる