転生した先で蔑まれ追放された俺の異世界冒険ライフ 〜魔法も使えない無能と言われた俺には、クリスタルを全属性扱える才能があったみたいです!?〜

ニゲル

文字の大きさ
上 下
24 / 53
一章 出会いとクリスタル

24話 虚言

しおりを挟む
「何を言ってるんだ? お前は火のクリスタルを使っただろ?」

 ガラスアは現段階では俺が言おうとしている嘘の意味すら分かっていない。
 だが絶対に分からせてみせる。それしかミーアを助ける道はないのだから。

「これがその証拠だ」

 俺は今度は水のクリスタルの力をオンにして、あの時鹿がやったように水球を出現させる。
 その意味は奴も理解してくれたようで、一旦こちらに向けている殺意を下げ話を聞く姿勢を取ってくれる。

「説明してもらおうか。どうしてお前は火と水、二種類のクリスタルの力を使えるんだ?」

 ミーアが初めて会った時に言っていた。本来クリスタルは担当の属性しか扱えないと。
 つまり奴から見れば俺はイレギュラーそのものだ。

「なぜか俺はクリスタル集めに参加しているわけでもないのにクリスタルを使えるんだ。
 それでだけど、本当に俺を攻撃していいのか?」
「そんなの関係ないね。殺してクリスタルを奪うだけさ」
「ダメージを与えたり殺せばクリスタルが出てくる。それが参加者ならな」

 ガラスアはかなり頭が回るようで、この言葉の意味も瞬時に理解して表情を歪める。

「そんなハッタリ……」
「ハッタリじゃなかったら? もし殺してクリスタルが出るんじゃなくて消滅してしまったら? お前にはどうしても叶えたい願いがあるんだろ? それもクリスタルに頼らないと叶えられないような願いが?」

 正直に言えば、この話し合いの末殺される可能性の方が高い。俺はそう踏んでいる。
 だが思ったよりこの言葉はガラスアの心境に変化を与えてくれたようで、奴は氷の鉤爪と触手を解除する。

「お前の言うことも一理ある。今回は退いてあげるよ。面白いことも思いついたしね」
「面白いこと?」
「ふふっ……またね」

 奴はもう一度触手を二本だけ展開して、それらを強く地面に叩きつけその反動で跳び上がりどこかに消えていく。

「うぅ……何とかなったみたいね……助かったわ……」

 ミーアは唯一まともに動く左腕を使い何とか体を起き上がらせる。開いた穴からは血が止めどなく流れ続けており、彼女は苦悶の表情を浮かべながらアイテムボックスの中を探る。

「ミーアは動かないで! ポーションでしょ? なら俺がかけてあげるから」

 俺はやっと少しは動かせるようになった腕でミーアの腰についてあるアイテムボックスの中を探る。
 体が所々悲鳴を上げている。腕は二回も衝撃を加えられ骨が何箇所かヒビが入っているだろう。それにミーアを受け止めた時に体を強くぶつけたせいで痣にもなっているだろう。

 とはいえこの命なんてどうせ一回は死んで失ったものだ。俺のどうでもいい怪我の事情よりミーアの怪我の方が優先事項だ。
 ポーションを探す最中何度も痛みが響くが、俺はそれを堪えポーションを見つけ出し彼女の傷口に振りかけてあげる。

「傷は大丈夫? 他に痛いところはない?」

 俺は彼女が落下の際にどこか怪我してないか気になってしまう。

「私は大丈夫よ。それよりあなたでしょ!」

 ミーアは余ったポーションを俺の腕やぶつけた箇所などにかけてくれて、おかげで多少痛みは残るが大体完治する。

「今回は助けられたし、あなたの優しさには感謝するわ。でもあなたがアキに言ったように自分自身の心配もしなさいよ」
「あはは……気をつけるよ」

 痛い所を突かれたが適当に受け流し、怪我も治ったことなのでアキと合流するべく目的地の村まで向かう。
 
「リュージ様! ミーア様!」

 村が見えてきたところで、遠くの方でうずくまっていたアキがこちらに駆け寄ってくる。

「無事で良かっです……! 僕助けを呼んだらいいのかどうか分からなくて……」

 先程うずくまっていたのはやるべきことが分からず結果的にああなってしまっていたということだろう。

「アキの判断は正解だよ。村の人達に助けを呼んで、もし来てしまったらとんでもないことになっていたかもしれない。
 とてもじゃないけど普通の人にガラスアの相手は無理だからね」

 訓練もしていない普通の人間なら、ガラスアを前にしたら数秒も立っていられないだろう。それに下手に刺激していたらさっきのハッタリ作戦だって失敗していたかもしれない。

「それに俺はアキを置いていって死んだりしないから」

 根拠も自信もないが、涙を浮かべる彼女の心の支えになってあげたく虚言を吐く。

「とにかく今は急いで依頼主のところまで行きましょ。日が暮れる前に宿に戻りたいし」

 そうして俺達は依頼主であるこの村の村長に会いに行くのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...