20 / 53
一章 出会いとクリスタル
20話 ノーマルクリスタル
しおりを挟む
「分かった! とりあえずこれで……」
「ちょっと待って! 持つ所をよく見て! そこに窪みがあるでしょう!?」
昨日渡された時は暗くて気づかなかったが、日本刀の柄には六つの窪みがあり、その形的にクリスタルを埋めれそうな形状をしている。
「なるほど。大体分かった!」
俺は自分の体内に火のクリスタルを一つ残しておき、二つを体から飛び出させ手に取り窪みに嵌める。
「これも使って!!」
ミーアはアイテムボックスから今度は透明なクリスタルを四つ取り出しこちらに放り投げる。
それらをキャッチして嵌めようとするが、手に取った瞬間それらがクリスタルにしてはあまり力が含まれていないことに気がつく。
だがもう動作は止められず、それらを窪みに嵌め終わり同時に刀身から炎が吹き出す。この刀に凄まじい魔力が籠っており、こんな量の魔力はバニス達と一緒にいた時は見たこともないほどだ。
ここまでくれば次に取るべき行動は直感的に分かり、水球を潜り抜け、時にはこのエネルギーが溜まっている刀身で受け流し奴の眼前まで距離を詰める。
「せいやっ!!」
刀を大きく振り上げ、それを奴の角目掛けて振り下ろす。本来かなりの強度のあるはずの角がまるで豆腐みたいに斬れ、そのまま刀は奴を真っ二つに斬り裂く。
その瞬間に青色のクリスタルが奴の体から飛び出してくるので俺はそれを逃さぬようキャッチする。
やはりクリスタルなのでそれはとんでもない力を秘めており、手に持っただけで水中に投げ込まれ溺れてしまうような錯覚に陥りそうになってしまう。
「やっぱりおかしいよな……」
先程投げ渡された透明のクリスタルからはこのような異常なほどの力は感じられなかった。
もう一度よく見てみようとしたところ、透明な四つのクリスタルはパリンッ! と大きな音を立てて割れ散ってしまう。
「え!? ク、クリスタルが!!」
何も変なことはしていないはずなのにクリスタルが四つも割れてしまう。俺はやってしまったと後悔しその場にへたり込む。
「大丈夫よ。砕け散ったのはノーマルクリスタルだから」
ミーアは怒るか焦るかでもするかと思ったが、予想に反して落ち着いている。
「ノーマルクリスタル?」
「えぇ。属性のクリスタルとは違って大量に手に入れられる分すぐ消滅したり壊れたりしてしまうのよ。
こうやって死んだばかりの生命体に力を込めれば生成できるのよ」
ミーアは鹿の真っ二つになった死体に手を伸ばす。瞳が緑色に光りほんの少し力が込められれば死体は数十個のノーマルクリスタルへと変わる。
ミーアはそれらをほとんどアイテムボックスに仕舞い込み、残った十個ほどを俺に渡してくれる。
「ノーマルクリスタルは体内に取り込むだけで消費した魔力を回復できるから持ってて」
魔力を回復するか……一応そういう専門の薬品とかもあるらしいけどあれは高価だしな……こうして楽に手に入るならそれに越したことはないな。
「リュージ様……ミーア様……?」
戦いが終わったのを見計らって、先程投げ込んだ茂みの方からアキが慎重に出てくる。
服には葉っぱや土や枝がついており、俺のせいで服が汚れてしまっている。
「服が……ごめん! 俺が乱雑に投げ込んだから」
さっき撃たれた背中の痛みなど忘れ、俺はアキの服についてる汚れを叩き落とす。
「だ、大丈夫です! それくらい自分でできますから! それより僕こそすみませんでした。クリスタルの力を上手く扱えないことは分かっているのにでしゃばってしまって……」
戦いの中アキは俺が来るなと言ったのにこちらに駆け寄ろうとした。善意や優しさから取った行動なのだろうが、あれは俺だけならともかくアキ自身も危険に晒す行為だ。
「俺の事を心配してくれるのは嬉しいけど、戦いの際はまず自分の安全を確保して」
心が痛むが、言葉を強めて説教するように話す。
「はい……すみませんでした……」
「でも俺を心配してくれたのは嬉しかったよ。ありがとう」
アキがあまりにも落ち込んでしまうので何だか悪い気がしてしまい慰めの言葉をかける。
やはり俺は弱い人間だ。こういう子供が悲しんでいるところを見るとどうも弱くなってしまう。
「とにかく安全になったことだしお昼にしましょ」
お昼を食べ、それからも日が暮れるまでクリスタルを扱う練習をするのだった。
「ちょっと待って! 持つ所をよく見て! そこに窪みがあるでしょう!?」
昨日渡された時は暗くて気づかなかったが、日本刀の柄には六つの窪みがあり、その形的にクリスタルを埋めれそうな形状をしている。
「なるほど。大体分かった!」
俺は自分の体内に火のクリスタルを一つ残しておき、二つを体から飛び出させ手に取り窪みに嵌める。
「これも使って!!」
ミーアはアイテムボックスから今度は透明なクリスタルを四つ取り出しこちらに放り投げる。
それらをキャッチして嵌めようとするが、手に取った瞬間それらがクリスタルにしてはあまり力が含まれていないことに気がつく。
だがもう動作は止められず、それらを窪みに嵌め終わり同時に刀身から炎が吹き出す。この刀に凄まじい魔力が籠っており、こんな量の魔力はバニス達と一緒にいた時は見たこともないほどだ。
ここまでくれば次に取るべき行動は直感的に分かり、水球を潜り抜け、時にはこのエネルギーが溜まっている刀身で受け流し奴の眼前まで距離を詰める。
「せいやっ!!」
刀を大きく振り上げ、それを奴の角目掛けて振り下ろす。本来かなりの強度のあるはずの角がまるで豆腐みたいに斬れ、そのまま刀は奴を真っ二つに斬り裂く。
その瞬間に青色のクリスタルが奴の体から飛び出してくるので俺はそれを逃さぬようキャッチする。
やはりクリスタルなのでそれはとんでもない力を秘めており、手に持っただけで水中に投げ込まれ溺れてしまうような錯覚に陥りそうになってしまう。
「やっぱりおかしいよな……」
先程投げ渡された透明のクリスタルからはこのような異常なほどの力は感じられなかった。
もう一度よく見てみようとしたところ、透明な四つのクリスタルはパリンッ! と大きな音を立てて割れ散ってしまう。
「え!? ク、クリスタルが!!」
何も変なことはしていないはずなのにクリスタルが四つも割れてしまう。俺はやってしまったと後悔しその場にへたり込む。
「大丈夫よ。砕け散ったのはノーマルクリスタルだから」
ミーアは怒るか焦るかでもするかと思ったが、予想に反して落ち着いている。
「ノーマルクリスタル?」
「えぇ。属性のクリスタルとは違って大量に手に入れられる分すぐ消滅したり壊れたりしてしまうのよ。
こうやって死んだばかりの生命体に力を込めれば生成できるのよ」
ミーアは鹿の真っ二つになった死体に手を伸ばす。瞳が緑色に光りほんの少し力が込められれば死体は数十個のノーマルクリスタルへと変わる。
ミーアはそれらをほとんどアイテムボックスに仕舞い込み、残った十個ほどを俺に渡してくれる。
「ノーマルクリスタルは体内に取り込むだけで消費した魔力を回復できるから持ってて」
魔力を回復するか……一応そういう専門の薬品とかもあるらしいけどあれは高価だしな……こうして楽に手に入るならそれに越したことはないな。
「リュージ様……ミーア様……?」
戦いが終わったのを見計らって、先程投げ込んだ茂みの方からアキが慎重に出てくる。
服には葉っぱや土や枝がついており、俺のせいで服が汚れてしまっている。
「服が……ごめん! 俺が乱雑に投げ込んだから」
さっき撃たれた背中の痛みなど忘れ、俺はアキの服についてる汚れを叩き落とす。
「だ、大丈夫です! それくらい自分でできますから! それより僕こそすみませんでした。クリスタルの力を上手く扱えないことは分かっているのにでしゃばってしまって……」
戦いの中アキは俺が来るなと言ったのにこちらに駆け寄ろうとした。善意や優しさから取った行動なのだろうが、あれは俺だけならともかくアキ自身も危険に晒す行為だ。
「俺の事を心配してくれるのは嬉しいけど、戦いの際はまず自分の安全を確保して」
心が痛むが、言葉を強めて説教するように話す。
「はい……すみませんでした……」
「でも俺を心配してくれたのは嬉しかったよ。ありがとう」
アキがあまりにも落ち込んでしまうので何だか悪い気がしてしまい慰めの言葉をかける。
やはり俺は弱い人間だ。こういう子供が悲しんでいるところを見るとどうも弱くなってしまう。
「とにかく安全になったことだしお昼にしましょ」
お昼を食べ、それからも日が暮れるまでクリスタルを扱う練習をするのだった。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
破滅転生〜女神からの加護を受けて異世界に転生する〜
アークマ
ファンタジー
人生が詰んだような生き方をして来た阿村 江はある日金を借りに家に帰ると妹、阿村 加奈の代わりに加奈に恨みがある男に刺され死んでしまう。
次に目が覚めた時、女神と名乗る女性が現れ「あなたを異世界で私のできうる限りの最高の状態で異世界に転生させます」と言われ渋々だが第二の人生を異世界でおくることを決める。新たな世界では前のような人生ではなく最高の人生をおくろうと江は転生した世界で考えていた。
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる