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一章 出会いとクリスタル
18話 特訓
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「ミーア? 起きてるか?」
俺はミーアの部屋の扉をノックして起きているかどうか確認を取る。
「はーい。起きてるわよー」
すぐに向こうから返事が返ってきて扉が開かれる。
「朝食かしら?」
「そうだよ。三人で食べにいこうと思って」
「私もすぐに行くから先に食べててちょうだい」
「分かった」
俺とアキは一階に降りて食堂に向かい、料理を受け取りテーブルに運んだ辺りでミーアも降りてきて料理と共にこちらに来る。
料理は硬めのパンにオニオン風味の細かいキャベツと人参が入ったスープである。これだけだと物足りないように聞こえるかもしれないが、スープもパンも中々のボリュームなので大丈夫だろう。
味の方も申し分なく、パンも中身がしっかり詰まっていて食べ応えがあり、スープは野菜の味がしっかりと染み込んでいる。そのパンをスープにつければ一気に別の食べ物へと変貌を遂げ、飽きずにこの食事を進めることができる。
「がつがつ……むしゃむしゃ……」
俺とミーアは普通に食べていたが、アキはその小さな体に見合わずガツガツと食べ進める。いや今までのご飯をろくに食べてこれなかった環境を考えるにしばらくはこうなってしまうのが正常なのだろうか?
「そんなに急がなくても料理は逃げないわよ。それにあなたはまだ小さいんだからそんなに一気に掻き込んだら下手したら喉に詰まらせて死ぬわよ」
「す、すみません……」
今初めて自分が料理に齧り付き荒々しく食べていたことに気づき恥ずかしくなったのか、顔を紅潮させ今度は自重してちびちびと食べ始める。
そのまま愉快な食事の時間は過ぎていき、それから俺達はミーアに連れられて人気の少ない川に向かう。
水は綺麗で透き通っていて、辺りには石や砂利が広がっている。
「ここでクリスタルの使い方を教えるわ。万が一アキが暴走したとしてもここなら上手く立ち回れば殺さずにあなたを止めることもしやすいと思うし」
かなり残酷なことを言うが、実際事実なので仕方ない。
この前は偶然上手くいったが、今度はそういくとは限らない。もしもを考え事前にリスクを減らしておくのは当然だ。
「はい。暴走しないように頑張ります!」
アキも特段気にしてはいないようで、寧ろ迷惑をかけないよう意気込んでやる気を出している。
この調子なら大丈夫だなと思い俺も心を落ち着かせすぐにクリスタルを使えるようにしておく。
「まずは二人とも精神を落ち着かせて、クリスタルを使ってみてくれるかしら? とりあえず手に小さな炎でも出してみて」
俺はこの前アキと戦った時のような感覚で火のクリスタルの力を引き出し、右手の上に小さな炎を出現させる。
それを左右前後に動かしたり、小さくしたり逆に大きくしたり。俺はその炎を自由自在に扱うことができた。
魔法を使うってこんな感覚なのか。万能感というか、バニスがあんな自信過剰になっちゃうのもちょっも分かる気がするな。
「リュージはもう結構扱えているようね。でもアキは……」
アキは手から小さな炎を出すことはできていたが、それを上手く扱えておらず炎があっちこっちに飛び回っている。
彼女はそれを必死にコントロールしようとするが上手くいかないようで、最終的には炎は天へと昇っていき消滅してしまう。
「コントロールはまだまだのようね」
アキはしょんぼりと肩を落としてしまう。
「ま、まぁ俺もまだ慣れてないし、一緒に上達していこうよ」
「はい……」
それからミーアによるクリスタル講座を受けて俺はメキメキと扱い方を上達していくが、アキは一向に上達する気配はない。
「おかしいわね……いくら子供とはいえ慣れれば扱えるはずと思ったのだけれど……」
ミーアもこれには頭を悩ませてしまっている。
確かに魔法を使ったことのない俺でも結構簡単に扱えているのに、この世界の住人である彼女が扱えないのには少し違和感を覚える。
「もしかしてだけど、アキは心に何かロックのようなものがかかっているんじゃないのか?」
その違和感を経験則から考察しある一つの仮説を導き出す。
「ロック? 何それ?」
「記憶障害の影響かどうかは俺も分からないけど、心に何か問題があって無意識のうちに力を制限しているんじゃないかなって」
人の心理状態による身体への影響は大きい。それに魔法は心や精神に密接に関わる技術だ。もしアキがまだ何か悩みを抱えているとしたらそれが影響を及ぼしている可能性が高い。
俺はミーアの部屋の扉をノックして起きているかどうか確認を取る。
「はーい。起きてるわよー」
すぐに向こうから返事が返ってきて扉が開かれる。
「朝食かしら?」
「そうだよ。三人で食べにいこうと思って」
「私もすぐに行くから先に食べててちょうだい」
「分かった」
俺とアキは一階に降りて食堂に向かい、料理を受け取りテーブルに運んだ辺りでミーアも降りてきて料理と共にこちらに来る。
料理は硬めのパンにオニオン風味の細かいキャベツと人参が入ったスープである。これだけだと物足りないように聞こえるかもしれないが、スープもパンも中々のボリュームなので大丈夫だろう。
味の方も申し分なく、パンも中身がしっかり詰まっていて食べ応えがあり、スープは野菜の味がしっかりと染み込んでいる。そのパンをスープにつければ一気に別の食べ物へと変貌を遂げ、飽きずにこの食事を進めることができる。
「がつがつ……むしゃむしゃ……」
俺とミーアは普通に食べていたが、アキはその小さな体に見合わずガツガツと食べ進める。いや今までのご飯をろくに食べてこれなかった環境を考えるにしばらくはこうなってしまうのが正常なのだろうか?
「そんなに急がなくても料理は逃げないわよ。それにあなたはまだ小さいんだからそんなに一気に掻き込んだら下手したら喉に詰まらせて死ぬわよ」
「す、すみません……」
今初めて自分が料理に齧り付き荒々しく食べていたことに気づき恥ずかしくなったのか、顔を紅潮させ今度は自重してちびちびと食べ始める。
そのまま愉快な食事の時間は過ぎていき、それから俺達はミーアに連れられて人気の少ない川に向かう。
水は綺麗で透き通っていて、辺りには石や砂利が広がっている。
「ここでクリスタルの使い方を教えるわ。万が一アキが暴走したとしてもここなら上手く立ち回れば殺さずにあなたを止めることもしやすいと思うし」
かなり残酷なことを言うが、実際事実なので仕方ない。
この前は偶然上手くいったが、今度はそういくとは限らない。もしもを考え事前にリスクを減らしておくのは当然だ。
「はい。暴走しないように頑張ります!」
アキも特段気にしてはいないようで、寧ろ迷惑をかけないよう意気込んでやる気を出している。
この調子なら大丈夫だなと思い俺も心を落ち着かせすぐにクリスタルを使えるようにしておく。
「まずは二人とも精神を落ち着かせて、クリスタルを使ってみてくれるかしら? とりあえず手に小さな炎でも出してみて」
俺はこの前アキと戦った時のような感覚で火のクリスタルの力を引き出し、右手の上に小さな炎を出現させる。
それを左右前後に動かしたり、小さくしたり逆に大きくしたり。俺はその炎を自由自在に扱うことができた。
魔法を使うってこんな感覚なのか。万能感というか、バニスがあんな自信過剰になっちゃうのもちょっも分かる気がするな。
「リュージはもう結構扱えているようね。でもアキは……」
アキは手から小さな炎を出すことはできていたが、それを上手く扱えておらず炎があっちこっちに飛び回っている。
彼女はそれを必死にコントロールしようとするが上手くいかないようで、最終的には炎は天へと昇っていき消滅してしまう。
「コントロールはまだまだのようね」
アキはしょんぼりと肩を落としてしまう。
「ま、まぁ俺もまだ慣れてないし、一緒に上達していこうよ」
「はい……」
それからミーアによるクリスタル講座を受けて俺はメキメキと扱い方を上達していくが、アキは一向に上達する気配はない。
「おかしいわね……いくら子供とはいえ慣れれば扱えるはずと思ったのだけれど……」
ミーアもこれには頭を悩ませてしまっている。
確かに魔法を使ったことのない俺でも結構簡単に扱えているのに、この世界の住人である彼女が扱えないのには少し違和感を覚える。
「もしかしてだけど、アキは心に何かロックのようなものがかかっているんじゃないのか?」
その違和感を経験則から考察しある一つの仮説を導き出す。
「ロック? 何それ?」
「記憶障害の影響かどうかは俺も分からないけど、心に何か問題があって無意識のうちに力を制限しているんじゃないかなって」
人の心理状態による身体への影響は大きい。それに魔法は心や精神に密接に関わる技術だ。もしアキがまだ何か悩みを抱えているとしたらそれが影響を及ぼしている可能性が高い。
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