転生した先で蔑まれ追放された俺の異世界冒険ライフ 〜魔法も使えない無能と言われた俺には、クリスタルを全属性扱える才能があったみたいです!?〜

ニゲル

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一章 出会いとクリスタル

15話 魔王の側近

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「は、はい……」

 こちらが敵意がないことを示したおかげで少しは安心してくれたようで、俺が近づいても後退りしたり怯えることはなくなる。

「とりあえずその子を連れて合流場所まで向かってこれからについてはそこで話し合いましょ」
「そうだな。ほら、背中乗っていいぞ」

 彼女はまだ消耗しているのか顔色が少し悪く、体格も小さいので林道を歩かせるのは酷だと思い、俺はしゃがみ背中を差し出す。

「あ、ありがとうございます……」

 躊躇いながらも俺の背中に捕まり腕と足で力強くしがみついてくる。まだ恐怖心や不信感が残っているのか鼓動が速く、その音はよく聞こえる。
 微妙な空気感が俺達の間に流れつつも数分経てばエルフィー達が見えてくる。

「よかった。無事だったんだな……」

 エルフィーは安堵してくれるが、その表情は俺が背負っている女の子を見て崩れてしまう。

「そ、その子は火を出してた……どうして一緒に!?」
「あの時この子は魔法に振り回されていたんだ。とにかく今は大丈夫だから落ち着いて」

 エルフィーの大きな声に反応して、俺の背中に振動が、小刻みな震えが一定周期で伝えられる。
 
「大丈夫だよ……」

 俺はゆっくりとおんぶしている彼女を揺らし声をかけてあげる。震えは段々と収まるが、しがみつく強さはより大きくなる。
 
 昔親戚の子を世話してあげたことがあったけど、まさかそれがこんなところで活きるなんて……人生何が起こるか分からないな。

「リュージさんの言う通りじゃその子からはもう敵意は感じん」

 岩に腰をかけていた長老がエルフィーを落ち着かせるために一言入れてくれる。

「それよりリュージさん。この度はわしらを助けてくれてありがとうございました」
「いえいえ。それよりもその子達が無事で良かったですよ」
「エルフのこれからはあなたのアドバイスを踏まえ考えていきたいと思います。本当にありがとうございました」

 最初は敵対的だったエルフィーも今は俺に感謝してくれている。エルフもこれからの激動の時代を何とか生き抜いていけるだろう。
 そうしてエルフ達を村まで送った後、とりあえず宿に帰ろうと来た道を戻る。

「それでこの子はどうするつもりなのかしら?」

 歩いている最中ミーアは横目で俺の背中に鋭い視線を送る。
 俺の耳元に小さく弱々しい悲鳴が入ってくる。

「どうもしないよ。この子は恐らくクリスタルのことを理解していない。なら力について色々説明してあげて、クリスタルを取り出して戦いからは身を引かせてあげよう」
「でもおかしいのよねぇ……クリスタル集めの参加者は全員魔王の側近の人に説明を受けているはずなのに」
「え? 説明って魔王直々にしてたんじゃないの?」
「あら? 言ってなかったかしら?」

 俺とミーアの間に認識のずれが生じ、それを埋め合わせるべく色々話し合い互いの考えの破損を補強する。

「つまり魔王の側近のフードを被った男に説明を受けてクリスタルを渡してもらったと?」
「そうね。あ、でも各個人にそれぞれ渡されたから他の参加者の人数や顔は分からないわ」

 大体クリスタル集めについては理解できた。
 
 今更ながらだが何故魔王はこんなゲームを開いたんだ? 魔王にとっても利点はないよな……

 俺が聞いた話では、現魔王は二十年前にそれまでの旧魔王を討ち倒し即位したという。
 そして反対意見を押し除け戦争を終わらせたのだ。

 もしかして自分の興味とかで好きに動くタイプとかなのか……?

 考えを巡らせていると強い風が辺り一帯を揺らし、俺はバランスを崩し女の子を落としそうになる。
 だがなんとか踏ん張り彼女を支えきる。

「ごめん。怪我はない?」
「は、はい……」

 消え入りそうな声だが返事はしてくれる。
 彼女を背負い始めた時から思ってはいたが、背中に骨のような硬い感覚が何回か伝わってくる。ちゃんとご飯を食べているか心配になってしまうほどだ。

「久しぶりだなミーア」

 俺の意識が女の子の方に行ってしまい、前方への注意が散漫となってしまう。
 いつのまにか目の前にはフードを被った男が立っていてこちらを向いていた。

「何であなたがここに……!?」

 ミーアはこの人のことを知っているようだ。
 それに彼女が知っていて、しかもこのフードを顔が見えなくなるほど深々と被っている姿。
 
「まさかこの人がクリスタルの説明をしてくれた?」
「そうよ。私はこの人からクリスタルを貰ったのよ」

 目の前にいる男はその存在を感じさせないほど気配を殺していて、そのせいで不気味なオーラを纏っているように感じてしまう。
 そんな正体不明な男が今こちらに歩み寄ってくるのだった。
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