転生した先で蔑まれ追放された俺の異世界冒険ライフ 〜魔法も使えない無能と言われた俺には、クリスタルを全属性扱える才能があったみたいです!?〜

ニゲル

文字の大きさ
上 下
3 / 53
一章 出会いとクリスタル

3話 力を

しおりを挟む

「お前ら! 人間がいるぞ!」

 メイジゴブリンがすぐ近くにいた三匹に聞こえるよう大きな声で叫ぶ。

 無駄にデカい声量……これはあの三匹以外にも少し離れたところに仲間がいるな。数が分からないし危険だ。
 ここは強引に逃げるのがベストだな。

 俺は迷いなく即座に踵を返す。

「リュージ?」

 しかし走り出したすぐその先にミーアが現れ、ぶつかりそうになってしまい俺は足を止める。

「ゴブリンがいた! 詳しく説明している時間はない! 逃げるぞ!」

 俺は強引に彼女の腕を掴み引っ張りこの場から再び逃げ出そうとする。
 だがこの一瞬の遅れが命取りだった。メイジゴブリンから再び一発の火球が既に放たれ眼前まで迫ってきていた。

 もう躱わせない。せめてミーアだけでも!

 俺は彼女を突き飛ばし背中で火球を受ける。

「うぐっ!」

 衝撃が体に走るのと同時に全身が凄まじい熱に包まれる。服に炎が燃え移りそれはどんどんと広がり俺の体を侵食していく。

 地面に転がって……いやダメだ草木が多い。今日は乾燥しているし逆効果になるか。

 身を焼かれつつも冷静に今の状況と向き合って、俺は最善の行動を取ろうとする。
 まず燃えている上着をすぐさま脱いで、少々焦げた手に服を持ちゴブリン達の方へ投げる。

「今のうちに早く逃げよう!」

 先程突き飛ばしてしまったミーアを起き上がらせ、炎によって一瞬怯んだ奴らの隙を突いて駆け出そうとする。
 
 次の瞬間、鈍い痛みが生じたと思えば、いつのまにか俺の体が大きく宙を舞っていた。

「え?」

 いきなりグルンと視界が一回転したかと思ったら、気づけば三メートル程の高さまで打ち上げられていた。
 俺は訳も分からず地面に激突して転がり、勢いそのまま木に激突する。

「あれ……は、ゴブリンロード……!?」

 俺の体を大きく吹き飛ばしたのはゴブリンロードと呼ばれる大柄のゴブリンだった。
 奴は普通のメイジゴブリンのように巧みに魔法を使うことはできないが、圧倒的な巨体と身体能力でメイジと同等の脅威とされている。

 メイジゴブリンと数体のゴブリンだけならまだ逃げ切れた。だが奴の登場により俺達の生還は絶望的なものとなった。

「人の気配がすると思ったら……ほほう。今回は良い女がいるな」

 俺と比べ一回り大きい巨体の奴は、ミーアをいやらしい目で見下ろす。

「これは……まずいわね」

 ミーアは慣れた手付きでナイフを取り出し、ゴブリン達からある程度距離を取る。
 しかしもう既に集まってきたゴブリン複数体に囲まれてしまっており、ここから逃げ切るのはかなり厳しい状況になっていた。

「ミーア……せめて君だけでも逃げるんだ……!!」

 俺は割れて血が滴る頭を抱えながら立ち上がり、意識が朦朧としつつもすぐ近くにあった尖った石を拾って構える。

 俺が時間稼ぎすれば、俺は死んでしまうだろうけど、彼女を助けることはできる。だから戦うしかない。俺が!

「だめよ! そんなこと……できないわ!」

 彼女は優しかった。出会ったばかりの人間を見捨てられない程には。

「だめ……だ。このままじゃ二人と……ゴフッ!」

 地面に激突したときか内臓を損傷してしまっていたようで、俺の口から血がボトボトと垂れる。
 垂れる音を合図にするようにゴブリン達がミーアに襲いかかる。

 彼女のナイフ捌きは中々のものだったが、数の暴力には敵わないらしくジリジリと向こうの方へ後退していく。

「おいガキ。お前はオレと遊ぼうぜ」

 メイジとその他ゴブリン達がミーアに気を取られている一方、手持ち無沙汰となったロードが俺の方に嫌な笑みを浮かべ近づいてくる。

「嫌だって言ったら?」
「お前に拒否権なんてないっ!」

 奴はその巨大な棍棒を大きく振り上げ、容赦なく俺に向かって振る。
 今のダメージを受けた俺の体ではその一撃は躱わせそうにもなく、俺は死を覚悟した。そう、一匹でも多くゴブリンを道連れにする覚悟を。

 俺はその一撃を跳びながら左腕だけで受け吹き飛ばされる。
 飛ばされ向かった先は戦闘しているミーアの方向だ。わざとそっちに飛ばされるように調整した。

 左腕は完全に折れてしまってるけど、利き腕さえ無事なら大丈夫だ。

 俺は魔法でミーアに対して牽制をしているメイジゴブリンの眼前に着地し、無事な右腕を振り上げ脳天に石を突き刺す。
 大量の血飛沫が舞い上がり、血の量と白目になった奴の顔からこの一撃で絶命したことが分かる。

「き、貴様……よくもメイジを……お前らこいつを殺せぇ!!」

 ロードは怒りを露わにし、それに突き動かされるようにミーアを襲っていたゴブリン達が向きを変え俺の方へ迫ってくる。

 流石にもうこれ以上動けない……な。まぁ、俺の命で一人の命を助けられたと考えたら良い方か。逃げ切れよ。ミー……

 俺が諦めその場に倒れてしまいそうになる。
 だが倒れ切る前にミーアが何か小さなものを取り出し、それをとてつもない速さでこちらに向かって投げる。
 その物体が額に直撃する直前、眼前まできたところでやっと俺はそれを視認することができた。

 透き通るような緑色をした、小さな八角形の宝石だった。

 それが俺の額に直撃するのと同時に、全身から信じられないほどの熱が吹き出し、それによって生じた衝撃波が周りのゴブリン達を吹き飛ばす。

「な、何だこの力?」

 俺はこの湧き出る謎の力に疑問と困惑を抱いながらも、一筋の希望を見出すのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...