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どうして僕はこんな所に連れてこられたのか。
王宮の玉座の間で、椅子に座る国王を前に、僕は片膝をついていた。
どうやら国王が僕に話があるというのだ。

「公爵令息アレクシスよ。顔をあげろ」

「はい……」

恐る恐る顔を上げる。
緊張で炎天下にいるように体が熱い。
左右の窓際には数人の兵士と神官がずらりと並んでいて、生きた心地が全然しなかった。

「アレクシスよ。隣国の王女フローラのことは知っているな」

「も、もちろんでございます」

フローラ……僕と不倫関係にある王女だ。
この前イザベルと離婚した僕は、秘かに彼女と結ばれる計画を立てている。

「単刀直入に言う。お前はフローラと繋がり王国の転覆を図っているな?」

「え……」

いや、待て待て!
そんなことあるわけがない!

「違います! そんなことは決してありません! ぼ、僕は……フローラ王女とは無関係です!」

このままではまずいと思った僕は、慌ててそう言った。
フローラとは何の関係もない、そう主張するしかない。
しかし国王はどこか嬉しそうに口角を上げると、「本当だな?」と問う。

「ええ、命に誓って本当です。僕は彼女と会ったことも話したこともありません。赤の他人です」

とその時だった。

「嘘よ!!!」

右の方から女性の声と共に、迫る足音があった。
恐る恐るそちらへ顔を向けると、そこにはフローラが立っていた。
金色の髪が怒ったように踊っている。

「アレクシス! 私たちは愛し合っていたじゃない! どうしてそんな嘘をつくの!?」

「え……な、なんで……どうして……」

「ふん。このたわけ者が」

国王は低い声を出すと、玉座を静かに降りる。
そして僕の前まで来ると、その獣のように鋭い眼光を向けてきた。

「貴様は貴族以前に、人として問題があるようだ。まあ女を見る目は多少あるようだがな……」

「何を言っているのですか?」

全く意味が分からない。
今はどんな状況だ?
フローラと国王に睨みつけられながら、思考だけがぐるぐると回転していく。

「フローラをここに呼んだのは私だ。お前が彼女と関係をもっていると告げられたからな。お前の反応を見るに、それは正しかったようだ」

「だ、誰がそれを……」

「ヴァンサン王国の王女イザベルだ。お前と数日前に離婚した彼女だよ」

「え……」

殴られたような衝撃が全身に走る。

「そんな……嘘ですよね……彼女はただの商人の娘で……」

「嘘ではない。彼女はヴァンサン王国の王女になるためにお前と離婚をして、王国へと帰還した」

そういえばやけに綺麗なバッジを手にしていた。
迎えの馬車も一際豪華だったような……。
顔がどんどん蒼白になっていくのが自分でも分かる。

「アレクシスよ。イザベル王女の代わりに私がお前を断罪してやろう。覚悟しておけよ」

「……あ、あぁ……」

何もかもが終わった。
僕はその場に両膝をついて俯いた。

その後、隣国の王女と接触した罪で僕は地下牢へと入れられた。
国王の計らいでフローラは大人しく自国へ帰った。
しかし僕が地下牢を出た時に彼女はまた来ると言っていた。

悪い予感しかしない。
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