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……一か月が経ち、昼過ぎに部屋で読書をしていると、扉がノックされる。

「ベル。少しいいかな?」

エドワードの声に、私は本を閉じて扉をあける。

「エドワード様。どうかされたのですか?」

「前に言っていた侍女の件だけど……決まったから君に今から紹介したいのだけど……大丈夫だったかい?」

「ええ、もちろんです」

「じゃあ行こう。応接間に待たせてあるんだ」

「はい」

エドワードと共に応接間まで向かう。
道すがら、どんな人が雇われたのだろうと想像を膨らませた。
私はあまり活発な方ではないから、大人しい女性だといいな。
そんなことを想像していると、あっと言う間に応接間についてしまう。
エドワードが扉に手をかけて、ゆっくりと開けた。

そこには紫がかった長い髪の美女がいた。
顔は大人びていて、瞳は大きく美しい。

「初めまして」

彼女はそう言うと、丁寧な所作でカーテシーをした。
見とれてしまうほどに見事だった。

「は、はじめまして……」

よっぽど私よりも貴族の気品を兼ね備えた彼女は、カーテシーを解くと、意味ありげに微笑んだ。
視界の隅でエドワードが彼女の隣へ移動する。

「ベル。彼女が今日から君の侍女となるロゼだ。仲良くするんだぞ」

「は、はい……」

何だか心がざわついた。
上手く説明できないが、このロゼという女性はどこか危険な存在に思える。
そんな私の浅はかな心を見透かすように、ロゼは笑みを作る。

「ベル様。今日からよろしくお願い致します」

彼女はそう言うと、手を私に差し出した。
雪のように白くて綺麗な手だった。
私はおずおずとその手を握った。

「よろしくね」

「はい」

握手が終わり、エドワードがパンと手を叩く。

「ベル。早速で悪いんだけど、明日から二週間遠征にいかなくてはいけない。いい機会だと思ってロゼと親睦を深めてくれ」

「え……そうですか……分かりました。早めに帰ってきてくださいね?」

「ああ、もちろん。愛する妻のためなら何でもするよ」

「……素敵ですね」

ロゼが私たちを見て嬉しそうに笑う。
エドワードが「そうだろ?」と自慢するように言った。

「ロゼ。僕の留守の間、ベルのことを頼んだよ」

「はい、全力を尽くします」

こうしてロゼが私の侍女となった。
これが全ての始まりだった。
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